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図書室の文通相手は…  作者: しゅり
彼女Side
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第8章 前編 「静かな時間」

冬休みが始まって数日。


街はにぎわいの名残がまだ残っていたけれど、家の中はいつもより静かだった。


私は朝食の後、窓の外に広がる冷たく澄んだ冬の空気を眺めていた。


気づけば、初詣の日の記憶が静かに蘇っている。


初詣の日――年が明けてすぐ。


家族に誘われて神社へ向かう道で、心のどこかに

〔もしかしたら会えるかもしれない〕

という淡い期待を抱いていた。


境内のざわめきの中。


見覚えのある背中を見つけた瞬間、心臓が跳ねた。


思わず声をかける。


偶然にも彼と並んでお参りすることができた。


母にこう伝える。


「友達とお参りだけしてくる」


すると母はにっこり笑って言った。


「じゃあ終わったら甘酒飲んで待ってるから、ゆっくりでいいよ」


その言葉も、今思い返すと温かく胸に残る。


短い時間だったけれど、隣に彼がいるというだけで、なぜか胸が満たされていった。


彼に貰ったお守りは、志望校との縁を願うものだった。


私はそのとき、もう一つの願いを心の中でそっと込めていた。


〔自分と彼の関係が、このまま続きますように〕


その日から冬休みの間、私たちは学校に行かないため、直接会うことはなかった。


図書室での手紙のやり取りも途絶え、少しだけぽっかりと穴が空いたような寂しさを感じる日もあった。


それでも、心が落ち着かない時や退屈な時間に、私はこれまでの手紙をそっと取り出して読み返した。


ページをめくるたび、彼の文字や言葉が目に入る。


丁寧に書かれた一文一文に、自然と笑みがこぼれる。


あの笑った顔を思い出すと、冬の寒さも少し和らぐような気がした。


あのときの、さりげない気遣いの言葉も。


秋の終わりに文通相手が分かってから、授業中に彼の方をよく気にしていた。


横顔の優しさ。


どれもこれも、手紙を通して今も手に触れるように感じられた。


ある日の午後。


暖かな日差しが窓から差し込む中、私はお気に入りの缶にこれまでの手紙をしまっていた。


冬休み前に交わした会話や、笑った顔を思い出す。


ほんの短い時間だったけれど、彼と並んで歩いた瞬間のあたたかさは、今も胸の奥で静かに輝いている。


あの書棚の前に立っている自分を思い浮かべるたび、手紙のことが自然とよみがえり、心の中に小さな温もりが広がっていく。


冬休みで会えない日々は、少し寂しい。


それでも同時に、手紙や思い出を通して彼の存在を強く意識させてくれた。


机の隅に置いた缶を手に取り、これまでのやり取りをそっと確かめる。


文字を追ううちに、自然と笑みが浮かぶ。


あの時の彼の声。


微笑み。


手紙の端に書かれた、ちょっとした落書きのような文字。


どれも、冬休みの静かな時間を優しく包み込んでくれる。


私は窓の外に広がる冬の景色を見ながら、気づけば考えていた。


このまま進学してしまったら、彼とはまた会えなくなるのかもしれない。


でも、手紙でつながったこの気持ちを、ただの思い出にしてしまうのは嫌だ。


だからこそ、いつか必ず、勇気を出して伝えよう。


冬休みの静けさと寒さの中で、私はそっと心の中で決意する。


〔これからも、ずっと一緒にいられたら――〕


まだ直接言葉にできるわけではないけれど。


この気持ちを大切に、次に会える日まで温めておこう。


窓から差し込む柔らかな光に照らされながら、私はこれまでの手紙や初詣の記憶を思い返す。


会えた嬉しさ。


並んで歩いた時の心地よさ。


手にしたお守りの温かさ。


それらすべてが、いつの間にかかけがえのないものになっていた。

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