第57話 サーフィンとか、カラオケとか、原っぱとか!
引っ越しを終えた!
瑞の体験が加速するっ!
今度は、ドライブに行くことになった。 休みでヒマだというスモモさんも誘って、レッツゴー!
今日は、普通免許を取った私が運転である。 レンタカーでワンボックスカーを借りて、一人きりでの公道デビューだ。
助手席には瑞、後ろには銀杏たちが座っている。
「ほら、運転して!」
瑞はそう言って、助手席から強気に命令してくる。
まったく、ますます瑞が荒々しくなってる気がする。 最初は、あんなに大人しくて、いい子そうだったのに……。
それにドライブっていうけど、私が運転して意味あるんだろうか。 車の中から景色見る体験ってこと?
「よーっし……」
私は気合いを入れて、ハンドルを握る。
えーっと、ここがアクセルで、ここがブレーキだっけ……。 もう忘れたけど。 足を踏み出すと、それにともなってスッと車が動き始めた。 ひぃいいっ!怖いっ!!w
今までもバイクを運転してきたが、今日はわけが違う。 後ろに多くの人を乗せているという責任感である。
しかし、ほどなくして運転に慣れてきた! 私はノリに乗って車を運転して、海沿いの場所を走っていく。
高速道路の高架下を抜けると、景色が開けて横に海が広がる。 助手席に座る瑞が窓を開けると、車の中にぶわっと風が流れ込んできた。
「あ~~~~~気持ちいいいっっ~~~!!」
瑞は窓の外を眺めながら、楽しそうに笑っている。
後ろの席では、葉月が社交性の克服を頑張っているようだった。 隣のスモモさんに向かって、一生懸命に話しかけようとしているみたいだ。
「うわー、気持ちいっ! ……いですね」
「そうだね~!」
「今日のごはんは、バーベキューにす! ……るらしいですよ」
「楽しみだねぇ~!」
スモモさんはニコニコしながら、葉月の話を聞いてあげている。 たどたどしいが、まあ少しずつでも前進してるんじゃないだろうか。
銀杏と未来くんは、相変わらず叫ぶことしか能がないみたいだ。 ワンボックスの最後尾で、2人で景色を見ながら叫びまくって、エネルギーを発散しまくっている。
「フォアァアァッ~~~~~~~!!!!!!!!!wwwww」
「あぁぁあああっぁっっ!!!!!!!」
「ファアアヴァヴァアアアァァッ~~~~~~~~!!!」
「イェエエエェェイっ!!」
「銀杏さん、未来くんっ! うるさいっ!」
「ごめん」
「はい」
道路を進むごとに、横の景色にさらに海が近づいてきた。 海の上にはサーフィンをしている人たちの姿が小さく見える。
それを見て、興味を持ったのか、瑞が私の腕をつかんできた。
「あっ! フミっ! 私、サーフィンやってみたいっ!!」
「ぎゃーっ! 危ないっ!」
本当に危ないからやめて、瑞。
ということで、今度はサーフィン体験っ!
子供の成長を見守る家族のように、私たちは車で出かけていった。
瑞は運動神経がなさすぎるらしく、ひどく苦労しているようだった。 下手すぎて、何度も波の中に真っ逆さまに落ちてるみたいだ。
「ギャああああああああああああああああッっっっっっ!!!!!!!!!!」
「大丈夫ですか、二見さーんっっ!!!ww」
指導者のお兄さんが、必死に波をかいて落ちた瑞のもとに向かっていく。
私はサーフィンには参加せず、ナミ子さんや銀杏たちと一緒に砂浜でシートを敷いて見学していた。
あぐらをかいて、海の方を向いて座っているのだ。
しかし海上の瑞は見ず、……瑞は見ず、近くの親子を見て妄想に浸っていた。
砂浜の上で、中学生ぐらいの子供と一緒に歩いている母親の姿がある。
あぁ、いいなぁ……。 え、ここで授乳するの? まったく、しょうがないわね。 草陰に隠れて、おっぱいボロンと出して……ほら、吸いなさい。 中学生が元気よく歩いてきて、私の乳首にぱくっと吸い付いてくる。 顔を上げたら海があって、あぁ私たちはみんな海からやってきたのよねぇ。 いずれ死んだら、私も魚になって海に帰ろうかしらとか言ってね。ふはっ!w
そんなことを妄想しながらニヤニヤしていると、サーフィン体験を終えて、瑞が戻ってきた。 遠くから走ってくる声が、海の方から聞こえてくる。
「フミッ! 今度はカラオケ行きたいっーーーーっっっ!!!」
「え、カラオケ?」
私は我に返り、前方へ目をやる。
瑞がサーフィン用のウェットスーツを着たまま、全速力で走ってきていた。
一直線に私たちのシートへ向かってくると、息を切らしながら、びしょびしょに濡れたまま、頭から私に突っ込んでくる。 ちょっと、瑞、水に濡れてるうううぅぅ!瑞だけにいいぃっフゥゥウゥウツッ!!wwww
「私、カラオケしたことないのおおぉぉうっっ!!!!」
「ギャーッ!! 瑞ぬれてるーーっ!! 冷たいぃぃいっ!!」
というわけで、次はカラオケっ!
瑞は、ただ楽しみたいだけなんじゃないか? もはや自分探しとは関係なくなっているような気がする。
瑞は、カラオケを一度もしたことがないらしい。
でも考えたら、私もほとんどしたことがない。 小学生の時に親戚と集まった時に一緒に行ったぐらいで、他には友達と行ったことなどは一度もない。
私の社交性がないだけかな。 普通の高校生は、友達とカラオケとか行ってんの。
そんなわけで、私たちはカラオケ屋へ行くことになった! 今回はなんと、アキさんも参戦である。
「あ”ぁぁあああーっ! 腰が痛いんだけどおおぉ”ーーっっ!!」
カラオケ屋の建物の前に到着すると、着いて早々アキさんが腰を押さえてぼやいている。
30歳って、そんなに肉体がボロボロになるのかしら。 別にアキさんを見てても、普通に若いお兄さんって感じだけど。 ただ気持ちが老いてるだけなんじゃないのぉ?Wwwぶははw
横に立っている葉月は、建物を異質なものを見る目で見上げている。
「先輩! 私もカラオケやったことないんですよ。 行きましょう!」
葉月はそう言って、威勢よく足を踏み出す。
ていうか、葉月もやったことないの? カラオケって、もっとメジャーなはずだったんじゃないの。
同じことを思ったのか、歩きながらアキさんが思わず言葉をこぼす。
「え、一回もないの?」
雑な言い方で、恐れを知らないみたいな口ぶりだ。
葉月は爆速で振り返ると、アキさんに向かって突進していった。
「友達いな”いか”ら”ですよおおおぉっっ!!」
「ぎゃー! ごめんなさい”ぃぃっ!」
そういえば葉月は、アキさんと全く話せないんじゃなかったの。 ほんのちょっとずつだけど、慣れてきてるのかも。
私たちはカラオケ屋に入ると、さっそく歌い始めた。 順番も決めずに、適当に曲を入れていく。
私たちは酒飲みのような浮かれ具合で、下手くそな歌を歌いながら、注文したご飯を食い漁った。
ガチャンと扉が開いて、店員が入ってきた。
「失礼しまーす、唐揚げお持ちしましたー」
入ってきた店員も気にせず、銀杏がはしゃいで歌いまくっている。 横では未来くんもマイクを握っていて、2人で踊っている。
「つきの果てまでぇ~~♪」
「イェイ、ィエイっ!」
「俺は行くぜ~~っ♪♪」
「フウゥ!フゥッ!w」
「おぉおおぉ~~♪」
「おぁおああ~~♪」
「フォアアァアアッッ!!!!www」
「フゥウゥウゥウウッツ!!!www」
2人は興奮して無意味に叫び始めた。 店員さんは顔をしかめて、逃げるように部屋を出ていく。
相変わらず元気がいいなぁ、この2人は。 私は唐揚げをほおばりながら、リズムに乗って小さく身を揺らした。
隣に座っていた瑞が、ふいに私の腕をポンポンと触ってきた。
顔を近づけてきて、どうやら何か話したいことがあるようだ。 うるさい中でだからか、かなり大声で言ってきた。
「フミイイィッ! ワタシジンジャメグリシタイイィツ!!!」
「え、なんて?」
私はうまく聞き取れず、聞き返す。
話を聞くと、瑞は、今度は神社めぐりがしたいらしい。 ……なに、神社めぐりって。
私の耳をメガホンだと思ってるのか、瑞は遠慮なく声を飛ばしてくる。
「私、神社の雰囲気って、落ち着いて好きなのおおおおぉおぉぉぉっ! 一緒に行ってええぇぇぇっ!!!! 聞こえるーーー??!! あ”ーーA”ーー」
「うるさいいっ! 分かったあああぁぁぁっ!! a”ーーア"ーー」
というわけで、次は神社めぐりっ!
瑞が行きたいのは特に指定はなく、別に大きな神社や、立派な神社でなくてもいいらしい。
私たちの町にも、探せば意外とたくさんの神社があった。
私たちは休日を使って、町中の神社をめぐることになった!
いま私は、太陽の照る青空の下で、必死に自転車をこいでいる。
「なんで自転車ーっ??!!」
「先輩、遅いですよぉぉっ!! イェエエェェイっ!w」
葉月はシャカシャカと勢いよく自転車をこいで、秋の日差しの中を走っていく。
銀杏と未来くんは相変わらず体力があって先頭を奇声を上げながら行っているし、ナミ子さんすら自転車を楽しそうにこいでいて、最後尾に私が置いて行かれる。
なぜか私が一番『自転車体力』がないらしく、すぐにへとへとになった。
「みんな、待ってぇえ~~!」
私は筋肉に鞭打って、必死にこいでいく。
おかしいなぁ、別に運動不足なわけでもないのに。 むしろみんなの方が元気すぎるのか?
一つ一つの神社に着いても、最初は特にすることはなかった。 ただ境内の中で座ったりして、水分補給して過ごしていたのだが……。
よく分からないうちに、他の人はカラオケ大会みたいなことをやりだした!
「夏の日差しに~♪」
「イェイっ!w」
「溶けていくうぅぅ~♪」
「フゥウフウゥ!!!ww」
神社の境内で、ナミ子さんがノリノリで手足を振って踊っている。 瑞や葉月たちが合いの手を入れて、ここでもカラオケの延長をしているようだ。
ナミ子さんも、ずいぶん元気になった。 寝そべってだらけてただけだったのに、家の中でも歩いている姿をよく見かける。
銀杏と未来くんは、境内の中に生えている木を眺めているみたいだ。 銀杏が植物に詳しいから、解説しているみたいだ。 未来くんはそれを聞きながら、熱心に頷いている。
興味の方向も一部共通するところがあるらしい。 結構いいコンビなのかも。
一方で私はというと、境内の中を一人で回ってあちこち眺めまわしていた。
足元にあった由来書きを、しゃがんで読んでいく。 えーと、なになに? 当神社は……神がどうのこうの……。
どうでもいいけど、こういうのって日本語なのにえらく読みにくいよね。 古文を読んでる気分になるっていうか。
私がまじめに文字を読んでいると、歌っていたナミ子さんが飛びついてきた。 衝動で、私の体が揺れる。
「黒縁いいっぅっ!ww 私の歌、どお~~っ?!」
「あぁはい、よかったですよ」
「うぶぼぼあああああ”あ”あぁっ! にゃんにゃん♪」
ナミ子さんは意味不明な歌を混ぜつつ、崩れた姿勢の私の膝の上を勝手に這いずり回る。
そこへ、今度は瑞が突撃してきた。
「フミィィイツ!!! 私、今度は原っぱに行きたいーっ!! きゃーっ!!wwwwwwww」
「ぎゃあああーーーーーっ!!!」
原っぱに行きたいって? 瑞、適当すぎない?
私たちが境内の地面の上でぐちゃぐちゃになっていると、別の方から銀杏がやってきた。
「黒縁ー。 俺、郊外に安い土地を買ったんだけどさぁ。 原っぱがすぐ近くにあって……」
「銀杏さんっ!!! そこ、連れて行ってくださいっ!」
瑞はギラりと目を光らせると振り返り、今度は銀杏に突撃していきながら叫んだ。 銀杏は呼応するように雄たけびを上げる。
「よおおおぉっしっ!!! 任せとけええっ!!」
「銀杏さああぁぁああぁんっっ!!!!!!!!!!!!!」
「ギャーッ!!!!!」
そして郊外の自然の多い土地へ来た!
今回は、都合の合った楓ちゃんも一緒である。
「いやー、誘ってもらってありがとーっ! 私も、ちょうど自然に……」
「御託はいい! さあ行くよおおっっ!!!!」
「ぎゃーっ!!!」
楓ちゃんを引っつかんでいき、車に乗せてゴー!
銀杏が買ったというその土地は、本当に原っぱが広がっていて、近くには森があった。 交通の便は最悪だが、家付きの土地を格安で買ったらしい。
古い家に着くと、私たちはさっそく遊び始めた。
青空の広がる原っぱに、銀杏が裸足のままで出ていっている。 手には植物の本を持っていて、ここでも植物を調べるらしい。
一方で、古臭い家の中では、私たちも外に出る準備をしていた。
瑞は靴下を脱いで、すでに裸足になっている。 その隣で、なぜか私も靴下を脱いで裸足にさせられていた。
「ほら早く脱いでっ!」
「ぎゃーっ! 地面が痛いっ!!」
「先輩っ! 私も色々脱ぎますよっ! きゃーっ!ww」
親父ギャグを言ってる葉月を置いて、私は瑞と一緒に裸足で原っぱへと出ていく。
瑞は私の前へと勢いよく走っていくと、風を勢いよく受けながら叫び声をあげた。
「ああぁああぁっっっああっ!!!!!!!!!!wwwwwwwwwwwww」
服はもうボロボロで、完全に野生児である。
私は森の中で、楓ちゃんと一緒にノートパソコンを使って小説を書いてみたりもした。
周りには木がたくさん生えていて、地面には水が流れていて涼しげだ。 様々な緑の色が、私たちの目を刺激してくる。
季節もちょうどいいし、風が気持ちいいっ!
古い家の横では、銀杏が今度は畑を作ろうとしている。 まったく何もないところを耕して、畑を自作しようとしているらしい。
家の軒下では、未来くんが鼻歌を歌いながら勉強しているのが見える。
森の近くの川で、瑞と一緒に散策する。
瑞は座り込んで、川の中の生き物を眺めていた。 じぃーっと興味がありそうな目で、泳ぐ魚たちを見つめている。
瑞は色々やっているが、変化していってるんだろうか。
私は連れまわされてだけだけど、別に構わない。 だって、私も楽しいのだっ!
原っぱで、焼きそば食べようっ!(黒縁)




