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第51話 みんなで走ろうっ!

 3人で走った!

 でも、葉月たちも参加したかったらしい。

 そんなわけで、次の日の朝!

 ピピピと鳴り響くスマホのアラームで、私は目を覚ます。 タオルケットを勢いよく吹っ飛ばして、さあ朝活(あさかつ)開始っ!

 なんやかんやあって、今日はさらに別の人たちも朝ジョギングに参加することになった。 小説サイトで(かえで)ちゃんと話していると、興味を示してきて、さらにはスモモさんまで入ってきて話が盛り上がったのだ。

 ちなみにアキさんも誘ったが、今回は指が痛いから遠慮(えんりょ)するそうだ。 ……もういいや、何も言うまい。


 バタバタと(あわ)ただしく準備をしていると、ソファの上で寝ていたナミ子さんが起きてきた。 眠い目をこすりながら、聞いてくる。


「……黒縁、何してんの?」

「ナミ子さん、朝活やるよっ!」

「ぎゃーっ!!」


 興味を示してきたナミ子さんも巻き込んで、外に出ていく。

 マンションを降りていくと、葉月と瑞がジャージを着て待っていた。

 他の人とは、走りながら途中で合流する予定である。


 今日は走るコースを変更して、かなり長いコースにしてみた。

 スモモさんの住んでいる地域は近いが、楓ちゃんの場所は離れている。 正直ギリギリだが、一緒に走る区間ができるように工夫してみた結果、長いコースにせざるを得なかったのだ。

 疲れたら交通機関を使って帰ればいい。 電子カードは人数分用意してある。


 6人で走っていると、まずはスモモさんが参戦してきた!


「おはよー! おぉ、良いねぇっ! みんなで一緒に走ろうっ!」


 スモモさんは笑顔で合流して、一緒に走り出す。

 そういえば、スモモさんは普段から朝に走っているという話だった。 足取りがなめらかで、走り慣れているのが分かる。

 走っていると、すぐにナミ子さんが()を上げ始めた。


「あぁあ~~! もう無理ぃ~~!!」

「ナミ子さん、頑張ってくださいっ!」

「ナミ子ちゃん、頑張れ~!」

「フォアアアアァアッ!!wwwwww」


 各人の応援を受けて、ナミ子さんはヘロヘロになりながらも走り続ける。

 あれ、意外と我慢(がまん)強いな。 正直、すぐに放り出して帰るかと思っていたのに。


 しばらくすると、今度は楓ちゃんが加入してきた!

 道端でジャージを着て待っていた楓ちゃんが、笑顔をたたえて合流してくる。


「おっはよーぅ! いやぁー、ごめんねぇ! こんな寂れたド田舎まで来てもらって。ははっ!w」


 とかなんとか言ってるが、周りを見たらビルしかない。

 平常運転の楓ちゃんの卑下(ひげ)調子を聞きながら、私たちは全員そろって一緒に走り始めた!


 私たちはそれからも走り続けた。

 私は正直、走るのは全く得意ではないが、途中棄権(きけん)はしなかった。 息が苦しくなってきて、目の前の景色がぼやけてくるけど、根性だけで走った。

 言い出しっぺのリーダーみたいなもんだし、ここでやめたら負けな気がするのだ。


 やがて、空港の近くにやってきた。 空港の敷地(しきち)は広くて、ここはいつも歩いている場所の反対側である。

 空港の横に差し掛かっていくと、今までも苦しそうだったナミ子さんが大きく遅れてきた。 ぜーはーと息を切らして走りながら、顔を真っ赤にして、よろよろの足取りでなんとか追いつこうとしている。

 しかしついに限界に達したのか、大声で叫んで呼びかけてきた。


「黒縁いいいいぃぃっ!!!!! 待ってええぇぇっっっ!!!」


 少し前にいた私は、走りながら振り返った。 向こうの方で、ナミ子さんは立ち止まっていた。 (ひざ)に手を当てて、大きく体を上下させて呼吸しているのが見える。

 私は足を止めていき、一人で引き返していった。

 風が私の顔にかかってきて、汗を飛ばしてくる。 はぁはぁと息が口から()れていて、めっちゃ苦しい。 たぶん顔も真っ赤で、汗もダラダラと流れている。 ここに来るまで10kmぐらい走っているから当然だろう。

 ナミ子さんは膝に手をついて、うつむいていた。 近づくたびに息を吐く音が、風の音みたいにひゅうひゅうと聞こえてくる。

 私はそばに行って、声をかけた。


「大丈夫ですか?」

「おんぶううううぅぅうぅ…………っっ!!! おんぶしてええぇぇぇっ…………っ!!」


 ナミ子さんは幼児化が発動したらしく、私の体にすがりついてきた。 体をベタベタとさわってきて、勝手に背中によじ登ろうとしている。 もう、しょうがないなぁ。

 気づけば他の人たちも立ち止まって、こっちに戻ってきていた。 先頭の未来くんまでも、振り返って戻ってこようとしている。

 私は(こし)を下ろしてしゃがむと、ナミ子さんの体を受け入れていった。 全身に力を入れて、グッと持ち上げていく。 ……うぅーわっ……!


「重っ」


 思ったことをそのまま言うと、ナミ子さんが私の体を()ってくる。 いったw

 ちなみにナミ子さんと私は、身長がほぼ変わらない。 たくさん食べてるからか、体重はナミ子さんの方が重いようだけど。

 私はナミ子さんを背中に抱えて歩いていると、ふと思い出したことがあった。 隣に来ていた銀杏に、私は振り向いて聞く。


「銀杏。 そういえば、未来くんとは話したの?」

「あぁ、昨日話したぞ。 大学の勉強の話題振ってみてたら、興味持ったみたいでさ。 教科書見せながら話してみたら、あいつ楽しそうにペラペラ話し始めたんだよ。 話の感覚も合うし、意外と普通だったな」


 なるほどねぇ。 思うが未来くんは、学校で話す相手がいるんだろうか。

 前に悩みを一人で抱え込んでいた時のことを考えれば、あまり話す相手はいないのかもしれない。

 年齢も環境も違うけど、性格が合ったならよかった。 未来くんは、やっぱり銀杏と話したかったのかも。

 話を終えると、銀杏は勢いよく飛び出して走っていった。

 こっちに戻りかけていた未来くんを追い抜き、全速力で()け抜けながら叫び声をあげていく。


「ふぉあああぁあぁああっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!wwwwwwwwwww」


 未来くんは笑顔になって、再び前へと向き直っていった。 勢いよく走りだして、2人で交互に叫び声を上げていく。


「あぁああああぁあぁあぁっっっ!!!wwwwwwwwww」

「フゥウゥウッゥゥウツッッwwwwwwwwwwwww」

「お”あ”あ”あぁっぁっっっ!!!!!!!!!!wwwwwwwwwww」

「イェエエエェェエエエエエエエエエィッッ!!!!!!!wwww」


 ちょっと元気すぎないか?w 相変わらずこの2人は、エネルギーが有り余ってるみたいだ。

 遠ざかっていく2人と入れ違いになるように、葉月が後ろに来た。 私のそばに来て、話しかけてくる。


「先輩! 今度の体育祭、来てくれますか?」


 山登りの後の温泉に行ったときに、体育祭の話をしたっけ。 私に応援に来てくれとか言ってた気がする。

 親を呼ばないとも言ってたが、あれはどうなったんだろう。

 私は思い出しながら、聞き返した。


「親はどうなった?」

「来ませんよ。 あの人たち、仕事の方が大事みたいです」


 葉月は(いきどお)るように腕を組んで、鼻息を鳴らしている。

 本当か? (うそ)じゃないだろうね。

 同じように感じたのか、隣で歩いていた瑞が会話に入ってきた。


「本当に? 葉月、ちゃんと話した?」

「話したよ。 いいの、あの人たちは。 どうせ私のことなんて、変な目で見るし……」


 葉月がまた暗い顔でブツブツと言い始める。

 私たちが会話をしていると、楓ちゃんも近くに来て会話に加わってきた。 いつも通りの笑顔で、葉月に話しかけていく。


「おっ! 葉月っち、体育祭があるのっ? いいなー! 私も受験勉強でたまったストレスを、ババッと発散したいよねぇ! もう、私が住民票を移して代わりに出たいぐらいだよー。ははっ!w」


 とか言いながら、楓ちゃんは腕を伸ばしてストレッチみたいな恰好をして遠くを眺めている。

 葉月はまだ楓ちゃんには慣れてないようで、すぐに黙り込んでうつむき加減になった。 会食の時にはいくらか話したが、まだ慣れないらしい。

 もう、家の中のことは聞くまい。 ともかく葉月が来てほしいというなら、そうしてみるかな。

 私も弁当作るよっ!(黒縁)

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