第48話 山のたかりカラス
山登りの最中っ!
そんなこんなをしていると、上の方から下山してくる人がやって来た!
「こんにちはー」
私はすれ違い際に挨拶をしていく。
葉月は黙ってうつむいたまま、目も合わさずに通り過ぎている。 少し離れたナミ子さんを見ると、今度は挨拶されても返しもしない。
ちょっと! 挨拶ぐらいしなさいよ、しつけがなってないと思われたくないんだから。
「葉月っ! ナミ子さんっ」
私は2人を呼んで、集合させる。 2人の前で、私は華麗に常識のティーチングをした。
「山の中では、挨拶するのがマナーなんですよ」
「知ってる」
「知ってます」
「知ってるんかいっ!!!」
私はキレて、手に持っていた枝を地面に叩きつける。 まったく、この2人はしょうがない。
私たちは再び歩き出すと、少ししてまた人が来た。
「こんにちはー」
私たちは挨拶をしながら、通り過ぎていく。
葉月は一応会釈して、淡々と「こんにちは」と言っている。 よしよし、それでいいのよ。
しかしナミ子さんは……?
「こんにちはー」
「………………」
おい、挨拶しなさいよっ!!w
まったく、この人もちょっとした社交障害である。
ナミ子さんは私から見ると、じつは社会性が高い人に見えるんだけどなぁ。 ……気のせいなんだろうか?
そんなこんなで頂上に着いたっ!
低い山といっても、350mといえばそこらの高層ビルよりはるかに高い。 建物や田んぼなども小さく見えていて、まるでミニチュアのようだ。
銀杏と未来くんは、先に頂上についていて、交互に叫びまくっていた。
「やっほおおぉぉぉおぉっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「やっっっっほぉおおぉぉつっっ~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
「やっほぉぉぉぉおおぉっ!!!!!!!!!!!フゥゥウゥッツッ!!!!wwww」
「やっっっほおおぉぉぉおぉっっ~~~~~~~~!!!!!!!!!!イェエエエイっっ!!!!ww」
2人は交互に変なポーズを決めながら、次々に叫びまくっている。
おぉ、いい感じにエネルギーを発散してるわねぇ。 周りにちょうど人がいないからいいものの、テンション上がり過ぎじゃない?
それに妙な男の友情が芽生えかけているのを感じる。 銀杏が叫ぶと、それに続くようにして未来くんが叫んでいるのだ。
2人が叫んでいるのを見て、葉月が冷たい目を向けた。
「何やってるんですか、銀杏さん。 未来くんも、馬鹿みたいですよ」
「葉月もやってみろ! めっちゃ楽しいぞ」
銀杏はそういって、楽しそうに誘っている。
葉月は顔をしかめて、2人を冷たい目で見ながらも、しずしずと歩いていって景色の開けている方に出ていった。 やるんかいっ!w
「やほー……。 やっほーー! ヤッホォオオオォオオオオオオオウッッッ!!!wwww」
すぐにノリに乗って、葉月もハマったようだ。 今度は3人で叫びまくっている。
「やっほおおぉおぉおぅうぅぅうっっっ!!!!!wwwwイェエエェイッッ!! 先輩っ! 楽しいですよっ!!キャーっ!!ww」
そんなことをしていると、私たちの集団とは違う人が頂上に来た! 私は慌てて、3人に呼びかける。
「人が来たよっ!! 静かにして!」
「ごは”ん””ーーっぅっっ!!!!!!!」
今度は後ろのほうから、別の叫び声が聞こえた。
振り返ると、ナミ子さんが地面に仰向けになって、ジタバタして何かを主張している。 あぁ、お腹がすいたのね。
「はいはい、ご飯にしよう!」
「やっほおおおぉぉっっ!!!!」
「ちょっと、聞いてぇぇぇーーーっっ!!!!!」
「ヤッホオホオオオッォォオオオゥッッ!!!!!!!!!!wwwwwww」
お待ちかねのごはんタイムであるっ!
各自の家で用意してきたから、食べるものはバラバラである。 葉月や未来くんなどは、ちゃんと整った弁当を作って持ってきていた。 ……登る過程で、ぐちゃぐちゃになってたみたいだけど。
私はというと、面倒だからおにぎりとゼリーを持ってきただけである。 携行食として、チョコとかのお菓子も持ってきてるけど。
ちなみに、銀杏とナミ子さんの分も私が作ったから同じだ。
おにぎりは簡素だが、中身は少し工夫してある。 鶏肉を甘辛く炒めたものや、ツナサラダを作って入れてみたりしたのだ。
……え、それ普通じゃんって? いや、私にとっては滅茶苦茶頑張ったんだけど。 慣れないのもあって1時間もかけて作ったし。 なんか文句あるの。
見た目は変わらないから、どれが誰に回ってくるかは運である。
敷物をしいて、遠足みたいにごはんを食べていく。 こういう風にして食べるのも久しぶりで、なんかワクワクする。
私たちは話しながら食べていると、近くにカラスが立っているのに気づいた。 数m離れたところに、地面にちょこんと立ってこっちを見ているのである。
瑞や葉月も気づいたようで、場の話題はカラスになった。
「……ねえ、あのカラスこっち見てない?」
「もしかして、ごはんもらえるかもって思ってるのかも」
「なんでもらえるって分かるの?」
「そりゃ、エサをやった人がいるからでしょ」
会話を聞きながら、私もカラスを見つめる。
ここは300mを超えた地点である。 こんな山の頂上にもカラスっているんだ。 街の中でしか見たことないから、意外である。
私たちは気にしないで食事を進めていると、カラスは少しずつ近づいてきた。
気が付けば1mぐらいの至近距離まで来ていて、地面に立ったままじっとこっちを見ている。
何人かが振り返り、またカラスが話題に上がる。
「……なんか近づいてきてない?」
「どんだけ食いてえんだよwwwハッハアゥ!!!」
銀杏が爆笑するのをよそに、葉月が無表情で立ち上がった。
静かにカラスの方へ歩いていくと、カラスはトトっと逃げるように向こうへと歩いていく。 葉月は一仕事終えた顔で、ふーと爽やかに息をつきながら戻ってきた。
しかし30秒後、またカラスはこっちに近づいてきた! 地面にバウンドした球がはね返ってくるかのごとく、当然のように戻ってくる。
カラスに応じて、また葉月が立ち上がって追い払う。
それを何度か繰り返し、ついに5回目っ!
「あ”あ”あああぁぁああっっぁつ!!! 先輩っ!! このカラス、ムカつきますよっ!!!」
葉月は赤ちゃんのように喚いて、カラスを追い払おうとしていた。 しかしカラスも負けじと、翼を広げてぎゃあぎゃあとキレ散らかしている。
カラスは何としてでもごはんをもらいたいみたいだ。
私は不思議に思って言う。
「なんでそこまで人間にたかるんだろう? 山の中だし、エサなんていくらでもあるでしょ」
「キーっ!!! このカラスは、甘えてるんですよっ! ナミ子さんと同じですよ、たかればもらえると思ってる子供なんですよおおおぉおぉっつっ!!!!!」
そんなことを言って、カンカンになって騒いでいる。
ちなみにナミ子さんはと言うと、もうご飯を食べ終わってその辺で寝ころんでいた。 葉月の言葉が聞こえているのかいないのか、気持ちよさそうに土の上に仰向けになって寝ている。
しかし葉月とカラスの激闘が続いたのも、少しの間だった。 私たち全員がごはんを食べ終えると、カラスはすぐに撤退していったのである。
シートなどの後片づけは済んでいないのに、別のターゲットを探してか、違う方へ向かっている。
「もしかして、私たちが食べ終わったのが分かってるの?」
「カラスは賢いぞ」
カラスすげぇ……。 私は心から感心した。
後で調べると、カラスの寿命はかなり長く、場合によっては10年以上生きたりするらしい。
彼は何年間、あぁやって人にたかりながら生きてきたのだろう。
ちなみに私は、今年の春にカラスに3回頭を蹴られた。 わずか5分間のうちに、連続でである。
だからカラスが嫌いになったが、あの知性は見習うべきものが無いこともないかもしれない。
バイバイ、カラス。 達者でな。
カラス~なぜ鳴くの~……つってなあああぁあつっ!!フォアアアアァアッッ!!!!(銀杏)




