第37話 イベントからの帰り道っ!
メッセージの差出人と会った! でも、何も話さなかった……。
昼休みが終わると、私は一人、午後の部の仕事にとりかかった!
葉月たちは午前の部だけで終わりだが、私は調子乗ってどちらも予定していたのだ。
正直、午前中だけでかなりクタクタになったが、私は一人でひーこら走り回る。
あぁ、午後の部までやるんじゃなかった。 調子に乗ったのが間違いだった。 私はすぐ調子に乗る質なのである。
イベントも終了の時間になり、片づけの時間を終えたころには、足が棒になっていた。
あぁ、もういいかも。 今度からは、イベントの手伝いはもう遠慮しようかな。 ボランティアだから金も出ないし、やる意味は大してないのである。
とはいえ、イベントは大成功だったようだ。 片づけをしながら、係員の人たちまで本当に楽しそうな笑顔になっていて、最後までいい雰囲気だった。
帰る時間になって、約束していた集合場所に行くと、葉月や瑞以外にも、見覚えのある人たちが一緒にいた。
午前中にロボ大好きっ子さんを一緒に探してくれた楓ちゃんや、担架で一緒に病人を運んでくれた優しそうな女の人もいる。
午後の部があってる間にヒマを持て余していたら、話すようになったそうだ。
さらには、もう一人見慣れぬ人が混じっていた。 同じ会場内で、別の区画でボランティアをやっていた人が、瑞と同じ学校の人だったらしい。
瑞は恥ずかしいのか、もじもじしながら、その男子生徒を紹介してくれた。
「……えーと、こっち、早川スバルくんっていうの。 私の学校の、1年だって」
「ちっす。 早川って言います、先輩」
その男子生徒は、低い掠れたような声で挨拶してくる。
スバルくんは結構チャラい感じだ。 今の時代にしてはゴテゴテのファッションで、ドレッドヘアみたいな髪型も一部に見える。 服もやたら材質が硬くて、色もカラフルだ。
瑞は横目でスバルくんを見ながら、説明を加える。
「私と同じで、ネット小説部に入ってるみたいで」
「へぇ、そうなんだ」
スバルくんは鋭い目をしながら、しかし謙虚に、うっすって感じで頷いている。
なるほど、そういう縁なのか。 この会場から学校までさほど場所も離れてないし、こういうこともあるんだろう。
私たちは駅まで一緒に歩いて帰りだした。 会場に背を向けて、話しながらのんびり歩いていく。
「ちょっと待ってーっ!!!!」
突然、誰かの声が聞こえた。 ん? 何だこの声、私たちに呼びかけてる?
振り返ると、若い男が追いかけてきていた。 見覚えがあり、午前中に床に倒れてもがきまくってた人だ。 足をつったとか、腰が痛いとか、首が痛いとか喚いていた人である。
その人は私の前に来ると、息を切らしながら聞いてきた。
「あ”ぁ”ぁ~疲れた。 ねえ君、俺も一緒に歩いていい?」
「……あぁ、どうぞ」
え、どういうこと? さっきも休憩室でやたらと話しかけてきたし、ちょっと興味があるってことなんだろうか。
私たちは男も含めて、再び歩き始めた。 男はやはり興味があるのか、私たちに根掘り葉掘り聞いてきた。
「ねえ、君どこから来たって言った?」
「隣町の4-1-3です」
「あぁ、そう! ……で、普段、何してた?」
「集まって、一緒に小説書くだけ……ですかね」
「ふーん、そう」
男は相変わらず適当な話しぶりだ。 それに話していることがさっきと同じだ。 気づいてるんだろうか?
名前を聞くと、アキさんというらしい。 漫画を描いて生活しているプロだという。
私たちが『部活』の話していると、一緒に人探しをしてくれた楓ちゃんが会話に入ってきた。
「いいなー! わたし羨ましいよ。 学校の外で、気の合う人と一緒に活動するなんて」
さっき片付けの最中にも少し話したが、楓ちゃんは今まで一人で小説を書いてきたのだという。 瑞や葉月と境遇が似ていて、学校の部活に肌が合わなかったらしい。
場所が私たちの住んでる場所からは少し離れていて、一緒に活動できそうにないというのを、すごく悔しがってたのだ。
「そういえば、楓ちゃんは高校生なの?」
「うん。 高校3年ですっ! 受験生ですっ!w」
楓ちゃんはそう言って、ウインクして変なポーズを決めてくる。 元気な人だなぁ。
というか私と同い年なんだ。 いつから小説を書いているかは知らないが、部活にも行かずに高校3年になるまで家の中で一人で書いてきたんだろう。 あぁ、この人も可哀そうだなぁ。ブハハッ!w
話していると、チャラい感じのドレッドヘア早川スバルくんが、疑問を投げかけてきた。
「黒縁って小説家?」
いきなり呼び捨てかよっ! まあいいか。 私は頷いた。
「うん。 早川くんは、何か創作やってるの?」
「いや、俺は何もやってないっす」
「え? ネット小説部に所属してるんじゃないの?」
「そうなんすけど、自分で書いてはないです。 小説とか漫画とかに、興味はあるんですけど」
なるほど、そういう感じなのか。 スバルくんは前を向いて話し続けてる。
「でも、なんとなく興味はあるんですけど、何やったらいいか分かんないんすよねー……。 先輩、俺何したらいいんすか?」
いやぁ、会ったばかりの私に聞かれても。
一緒に担架で運んでくれた優しい女の人は、働きながら一人でコツコツと小説を書いてる社会人らしい。
こういうイベントごとには積極的に参加して、今回のようにボランティアをやったりしているそうだ。
へぇ、色んな人がいるんだなぁ。 一気に世界が広がった感じだ。
今まで、狭い世界に生きてた気がする。 引きこもっていたからだろうが、それだけではない。
情報世界って、結構歪んでいる気がする。
ネット上にある情報の多くは、自分で能動的にアクセスしなければ得ることはできない。 自分で調べないことは、知らないままで終わることもよくある。
フィルターバブルとかエコーチェンバーみたいな言葉もあるし、何もしなければどんどん認識が歪むのが自然に思える。
他にも、実際の形も分かりにくいというのもある。
コメントしない人は、そこに存在しているかすら分からない。 小説サイトでも、一覧で小説を並べて見ることはできるけど、実際にそれを書いている人がいるのだという実感が得にくい。
引きこもってネットばかり見ていると、自分の部屋と、文章と、映像みたいな乏しい世界に感じられてくるのだ。
でもこうやって、実際に書いている人が目の前にいると、本当にいるんだということを実感できる。
人がいて世界があって、物に見て触れて感じている。 世界の形が分かりやすくて、むしろ単純にも感じられてくる。
やっぱり引きこもるのって、限度があるのかもしれないと思うのである。 なんじゃそりゃっ!w
私は引・き・こ・も・り~イェイっ!w(黒縁)




