第35話 創作系のイベントへ行ってみよう!
社会への歩み寄りとして、ボランティアに参加することになった!
ということで、イベント当日っ!
イベントは第1回にも関わらず、かなり規模が大きかった。
最初は会場は小さいものを予定していたらしいが、関心のある人が多いと分かって大きくしていったらしい。
ここは臨海地区で海がそばに見える、イベントがよく行われている地域である。
私たちは早朝に会場に着くと、仕事やイベントの説明を受けた。 会場内のステージがある場所に集まって、たくさん集まったボランティアの人たちの中に混じって話を聞く。
周りを見れば、『漫画上等!』みたいなTシャツを着た人などもおり、創作系のイベントを感じさせる。
今日ここに来たのは、私と葉月と瑞の3人である。 ナミ子さんは誘ったが断わられたし、銀杏も興味がないようだったのだ。
私は真面目に話を聞いていると、ポケットに入れていたスマホが振動した。 え、何。 私はスマホを取り出して操作する。
小説サイトの中でメッセージが来ていたらしい。 前回URLメッセージを送ってきた、SF読み専くんからだった。
「どうしたんですか、先輩?」
葉月が横からスマホを覗き込んでくる。 私はひそひそ声で答えた。
「URLのメッセージの人が、また送ってきて……」
反対側からは、瑞もスマホを覗き込んでくる。
メッセージを開いてみると、またURLが貼られていた。 今いる会場の地図が、同じものが20個ぐらい連続で貼られている。 うん、知ってるわよ。 いまそこにいるしね。
私は小さく鼻息を出しながら、呟く。
「この人、何がしたいんだろう?」
「だから、会いたいってことでしょう」
葉月が即座に言ってくる。
「まぁともかく、仕事しよう。 こんなの相手にしてても仕方ないし」
そう言って、スマホの画面を消してポケットにしまう。 今の所、考えても仕方がない。 私は気持ちを切り替えて、仕事の説明に集中した。
そんなこんなで、イベントが始まった!
辺りを見回すと、色んな装いの人たちが集まっている。 ひーっ! こんなところで接客みたいなことをするのか。 本当に大丈夫だろうか……などと考えているヒマはない! 私は腕章をつけて、会場内を走り回るっ!
私がやるのは、案内と雑用だ。 人に場所を聞かれて案内して、ゴミを拾ってごみ箱に捨てて、トラブルがあれば解決するのだ!
「お姉ちゃん、この作品どこ?」
「あっちです!」
「お姉さん、あそこにゴミあるよ」
「OK!」
「こいつが押したからよぉ!」
「まあまあ」
あれ、なんか普通に行動出来てる。 話す言葉も、割とスルスルと出てくる。
もともと社交性が低すぎるわけではない。 立場があれば、私は普通に行動できるのだ。
ここでの私は7割ぐらいはただの係員で、黒縁文という個人ではない。
私は自分の感性をもって、自分の考えを持った個人として、社会に対面するのが怖いのだ。
ダサいなぁ、私。 立場がないと行動できないのか。 社会がなんだと人のことを言っておきながら、結局私だって、色んなものに守られている子供じゃないか。
私がひーこら言いながら走り回っていると、ポケットから音が鳴った! 私は立ち止まりながらスマホを取り出し、画面を確認する。
また例のSF君だった。 あぁ、また来たのね。 メッセージの中身を確認すると、今度は会場の区画を表しているらしく、『F12』という単語が50個ぐらい並べられている。
区画ってことは、その区画に今いるから来いってことだろう。 ……て、F12って、ここじゃん! 偶然にも、私の担当区画を指定したらしい。
まったく、しょうがないわね。 本当に会うことになるかもしれない。
私はやれやれと思いながら、スマホをしまった。 顔を上げて、再び仕事に戻る。
……ん? 見ると向こうの方で、妙な人だかりができている。 騒ぎが起こっているみたいだ。
この場所でやる見世物なんて、別にないはずだけど。 また変なことが起こったの? 私は急ぎ足で、騒ぎへと向かった。
人だかりの中心では、ギャーギャーと一人で騒いでいる人がいるようだった。 周りにいる人がどよめいて、心配そうに見つめている。
「あ”ああぁああっっ足つったああぁぁっっ!!!!! 痛い痛いっっ!!!!」
え、足をつった? 私は近づきながら、人ごみをかき分けて中心へと向かっていく。
中心には床に倒れている男がいた。 全身をよじるように動かしながら、バタバタと手足を動かしている。 若い男で、手には変な形の扇子を持っていて、ブンブンと振り回している。
周りの人は、大丈夫ですかと声をかけているが、まったく聞こえていないようだ。
私は係員としての義務を感じて、駆け寄りながら声をかけていく。
「大丈夫ですか!」
「痛いいいぃぃっっ!! 腰いたいいいっっっ!!!」
「え?! 足じゃないんですか?」
「足も腰も痛い! 首も痛い! ほっといでええぇぇぇっっ!!!」
何?ww どういうこと?
よく見ると、男は係員の腕章をつけていた。 あんた係員なのかよっ!w そういえば、さっきの説明の時にいたような……。
男は叫びながら、体をばたつかせ続けている。 差し伸べようとする私の手も、持っていた扇子でペシンと叩いてくる。
あ”ーっもうっ! 私はイライラして、無理やり男の体をひっつかんで抱きかかえていった。
とりあえず休憩室はある。 病人が出た時などの緊急時には使えとのことだった。 そこに連れて行こう。
私は肩を組もうと腕を引っ張っていると、すぐ横で男が叫んだ。
「ギャー手が痛いっ!」
ぎゃーっ!私は耳が痛いっ!
しかし大の大人を一人で支えるのは困難である。 私が四苦八苦していると、別の係員の人が走ってきた。
「大丈夫ですかー? これに乗せて連れて行きましょう!」
優しそうな若い女の人が、担架を持って走ってきていた。 あぁ、助かった!
今度は2人がかりで担架に乗せていく。 その間も、男は痛い痛いと騒ぎ続けていた。
私と女の人はえっさほいさと担架で運んでいくと、休憩室に入って男をベッドに休ませた。
男は横になると、「あ”あぁあ~~」と濁ったため息をつく。
「ごめんねぇ、もう俺も年でさあーっ!」
男は目をつむったまま天井を向いて、大きい声で話しかけてくる。 そんなに年だろうか? 結構若いように見えるけど。
でもナミ子さんの例もあるし、最近は分からない。 この人も2,30代に見えるが、実は60歳かもしれない。
男は落ち着いて、静かに横になっている。 足をつっただけなら、しばらく休めば大丈夫だろう。
私たちはそばを離れかけると、追いかけるように男が声をかけてきた。
「ごめん、水ない?」
休憩室を見回すと、ここには水はないようだった。 えーと、水はどこに置いてるんだっけ。
私は地図を出そうとしたが、ポケットから地図がなくなっていることに気づいた。
私が慌てていると、横で見ていた係員の女の人が助けてくれる。
「水はこっちだよ!」
私は女の人についていき、部屋を出た。 会場の人が多い中を、2人で歩いていく。
女の人の足取りは軽く、ズンズンと歩いていく。 私は意識して、足を速く動かしてついていく。
この女の人は、確かこの区域担当じゃなかった気がする。 近くにいたら騒ぎに気づいて、駆けつけたってとこだろうか。
歩いていると、またスマホがなった。 素早く確認すると、今度は『黄色い帽子に白い服』と1000回ぐらい書かれたメッセージが来ていた。 さっきから同じメッセージが何通も来ていたらしい。
はいはい、黄色い帽子ね。
私は適当に考えながらスマホをポケットにしまうと、さらにピロピロとメッセージが何度も来る。 うるっさいっ!w
前を歩いていた女の人が、振り返って聞いてきた。
「どうかした?」
「いや、何でもないです」
私は鳴りまくる通知音を無視して答えた。
水を確保したのち、女の人と別れて、私は一人で休憩室に戻った。 男にペットボトルの水を渡すと、すぐに引き返して扉を出ていこうとする。
しかし男は水に手もつけずに、部屋を出ていこうとする私を呼びとめた。
「ねぇきみ、どこから来たの?」
私は振り返った。 どこから来た? このイベントの規模は大きいし、県外から来たかと聞いてるんだろうか。
私はそのままを答えた。
「隣町ですけど……」
「ふーん。 ……ところで、どこから来たの?」
……え? どういうこと?
『ところで』の接続詞の意味分かってるんだろうか。 さらに細かくってこと? それとも比喩的な話なんだろうか。
私が考えている間にも、また例の人がメッセージを送ってきているみたいで、スマホがピロピロと鳴りだす。 あぁ、もううるっさい!
私は意味が分からず、そのまま住所を答えた。
「4-1-3です」
「ふーん」
男はそれだけ言うと、納得したように頷いた。 ……終わり? 意味わかんないんだけど。
しかし私は部屋を出ていこうとすると、また男は引きとめるように話しかけてくるっ!
「さっき説明受けてるときに、一緒にいた人たちいるじゃん。 あれ、友達?」
今朝、大きな会場に集まって、このイベントの仕事の説明を受けた時のことだろうか。 葉月や瑞たちと一緒にいたから、そのことを言っているんだろう。
私は頷いて答えた。
「そうです」
「ふーん。 どういう友達?」
どういう友達って……。 結構突っ込んで聞いてくるなぁ。 もしかして、ただ人と話すのが好きなだけなんだろうか。
まだ仕事の時間なんだけど、この人は分かってるんだろうか。 あなたもイベントの係員なのでは。
私はそう思いつつも、一応答えた。
「なんとなく集まってる、学校外の部活? ……みたいなものですかね」
「ふーん」
男はまた納得したような様子だ。 さっきから、ふーんしか言わない。
私は自然に気になって、今度は逆に質問してみた。
「普段、マンガ書いてるんですか?」
「なんで?」
男はペットボトルを手に持って、水を飲みながら聞き返してくる。 私は男が下に着ていた、『漫画上等!!』のTシャツを指さした。
「あぁこれ! いや、これは全然関係ないよ。 でも、漫画は描いてるよ。うん」
「そうですか」
「でも、最近のはもう分かんないよ! このイベントもわけ分かんないよね。 楽しいけど」
わけ分かんない? さっきからこの人の言ってるのが、何一つとして分からない。 わけ分かんないのになんで来たんだろう。
私は言っていることの意味を考え始めていると、男に「もう行っていいよ」と言われて解放された。 私は釈然としないながらも、追い払われるようにその場を立ち去った。
部屋を出て、再び仕事に戻っていく。 さあ!仕事に戻ろう。
小説上等!(黒縁)




