表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/66

第33話 立ちションはダメ!

 瑞と2人で、髪の毛を切った!

 ここ数日は雨が続いていて、今日は久しぶりの晴れだ。 気温が落ちて、(すず)しく感じられるようになった中を、私たちは勢いよく歩いていく。

 雨上がりの街は、なかなか気持ち良かった。

 雨上がりって、緑が生き生きしてるように感じるわよね。 植物の横を通るだけで、その色合いと光が、(にお)いが、ドクドクと、ギラギラと生命を感じさせてくる。


 少し歩いて、私たちは空港の近くに来た。

 この(まち)は、空港が近くにある。 歩いていると20分もしないうちに、空港の敷地(しきち)の近くを通りがかっていく。 道路には多くの車が行きかっていて、民家なども見えていて、意外と普通の町中である。

 空港の敷地のそばには、誰の土地か分からないたくさんの空き地のような場所があり、木や草が伸び放題になっている。

 空港の土地ってすっきりしているから、ごちゃごちゃしておらず遠くまで見通せて、景色が良い。

 私はあまりこの地域には来たことがなかったが、近くに住むようになってからここは結構気に入っているのだ。


 空港の敷地の横を、3人で元気に歩いていった。

 先頭を歩く葉月は、機嫌(きげん)が良いらしく手足を振って歩いている。 私の横を歩く瑞もさっぱりした気分で、景色を(なが)めながら空気を味わっているみたいだ。

 歩いていると、私はふと尿意(にょうい)をもよおした。 どうしよう、この辺、トイレなんて探してもないけど。

 立ちどまると、周囲を見渡して、誰もいないことを確認した。 ここは植物が伸び放題になっているし、道からは(かく)れている。

 私はすぐに判断して、ズボンとパンツを一気に下ろしてしゃがんだ。


「ちょっと、フミッ?! 何やってんのっ!!」


 瑞はびっくりして、(あわ)てて言ってくる。

 しかし私が無視してしゃがんだままでいると、瑞は何を思ったのか、同じようにズボンとパンツを脱ぎ始めたっ!


「え? 瑞ちゃん?」


 止める間もなく、瑞はしゃがんで(となり)に並んでくる。

 状況を考える(ひま)もなく、私の尿が出始めた。 じょぼじょぼと、草とアスファルトの中に液体が流れていく。

 同時に頭上数十メートルの超至近距離を、飛行機が通過した。 耳をつんざくような音が、鼓膜(こまく)を突き破ってくる。 ゴ”ア”アアアアアアアアァッッッ!!キイイイイイイッッッンンンンッッ!ふぉぁあああああああああああああああああっッ!!!!!!!!!!!wwwwwwwwww気持ちいいわああああああああああああああああぁぁぁあっっ!!wwwwwwwwwwwww

 尿が出ていく気持ち良さと、飛行機の音がまじりあって、最高の快感が脳内を突き抜ける。 あぁ、ヤバいわね。 ロケット発射を見ながらうんこしたらどれだけ気持ちいいのかしら。

 私は恍惚(こうこつ)の表情を浮かべていると、横で別の音がしだしたのが聞こえた。 振り向くと、瑞もやっちゃったみたいだ、尿がじょぼじょぼと流れ出していた。

 はははと笑いながら、なんとも(さわ)やかな笑いを浮かべている。


「ギャーッ!!!! 先輩何やってるんですかっ!!!! 汚いですよっ」


 前を行っていた葉月が、ようやく私たちに気づいたみたいだ。 後ろを振り返って、(あわ)てた様子でこっちに走ってくる。

 ちなみに立ちションは、山奥のような僻地(へきち)でない限り、違法らしい。 もう嫌になるわぁ、あぁ、知れば知るほど息苦しさは増していく。

 ……でも、考えたらそうかも。

 街の中なんて、誰かが所有してる土地しかないしね。 自分の土地にうんことかしょんべんされたら、嫌だしね。 衛生(えいせい)も考えなきゃいけないし。

 この時は知らなかったから、許してw ごめん。



 散歩を終えて、私たちは銀杏の家に戻ってきた。 部屋に入ってくるなり、ナミ子さんの声が飛んでくる。


「ねぇごはーん!」


 ありとあらゆる人間としての義務を放棄(ほうき)したような声である。

 部屋の中は、さらに汚くなっていた。 買ってきていたお菓子は食い散らかされ、(ふくろ)や箱がその辺に散乱(さんらん)している。

 あああっ、もうっ! この人は本当に、今まで一体どんな生活をしてきたんだろう。

 ……と思っていると、瑞が突然大声を上げた。


「いい加減にしてくださいっ!!!!! 30歳にもなって恥ずかしくないんですかっ!!」


 びっくりするほど大きい声である。 こんな小さな体にどこにその声を仕舞(しま)っていたのかというほど大きく、そして圧がある声だ。

 瑞の表情は真面目だった。 さすがのナミ子さんも(おどろ)いたのか、お菓子を床にポロリと落として振り返っている。

 しかしその直後、ナミ子さんはわーんと声を上げて赤ちゃんのように泣き始めた。 力なく(くず)れ落ちて、涙をこぼし、体をひくひくと痙攣(けいれん)させ始める。

 まったく、この人は何なんだろう。 口汚(くちぎたな)い、強気(つよき)の姿勢はどこへ行ったんだろう。 本当に赤ちゃんのようになってきている。

 瑞は言い過ぎたと思ったのか、慌ててそばに近寄った。 泣き崩れるナミ子さんを支えて、よしよしとさすっている。


「少しずつ勉強していきましょう」

「うん」


 そんな会話をしていて、どっちが大人なのやらさっぱりである。


 というわけで、ナミ子さんの特訓(とっくん)が始まった!


「まずは買い物っ!」


 瑞が指揮(しき)()り、ビシッと玄関を指す。 ナミ子さんは緩慢(かんまん)な動作で立ち上がると、老人のような足取りでよろよろと外に出ていった。

 そういえばナミ子さんは、10年間同じような生活を続けてきたのだと言った。 毎日、寝っ転がってスマホばかりいじってたんだろうか。

 だとしたら、全身の筋肉がすでに(おとろ)えていてもおかしくはない。

 親のレトロPC屋にいるときも、動きがお(ばあ)さんみたいだった。

 人間、動かなかったらそうなるのかぁ。 私も気をつけなきゃダメだな。ハハッ!w


 ところで部屋の中には、色んな楽器が散らばっていた。

 ギターやベースをはじめ、ドラムやキーボード、さらにはよく分からない東洋っぽい楽器なども置いている。 銀杏が用意したんだろう。

 楽器を見つめていた瑞が、聞いてきた。


「ここって、お隣さんっているの?」

「いや、いないと思うけど」


 このマンションに残っているのはあとわずかで、階が(はな)れた住人が数人ほどだそうだ。

 瑞はそれを聞くと、ギターを手に取って、突然じゃらじゃらとかき鳴らし始めた。


「あぁあ~~~あぁあああぁっああ~~~~~♪♪」


 めちゃくちゃ下手くそだが、楽しそうである。 ギターの(げん)も押さえることなく、適当だ。

 一体瑞は、どうしたんだろう。 さっきもそうだが、なんか最近変になってきてないか? 私の悪い影響を受けてなきゃいいけど。

 とはいえ、音楽は楽しいっ! 私も弦楽器のベースを手に取ると、瑞ちゃんの音頭(おんど)に合わせて歌い始めた。


「ああああああぁああぁ~~♪ ジャラジャラジャーン♪♪」


 そうしていると、部屋の奥から音を聞きつけて、銀杏もやって来たっ! (うれ)しそうに走ってきて、テンション高く、銀杏も一緒に音楽に乗り始める。


「フゥゥウゥッ!!ww イェエエエエェィッッ!! ドカドカドーンッ」


 とか言いながら、ドラムのまねごとをしている。

 トイレに行っていた葉月が戻ってくると、私たちを()めた目で見てきた。


「先輩がた、何やってるんですか。 馬鹿みたいですよ」


 冷めた目で見る葉月だが、よく見ればウズウズしていて仲間になりたそうである。 ほらほら、我慢(がまん)しないでやってみなさいよ。 意外と気持ちいいかもよ?


 私たちが即興(そっきょう)の音楽ライブを開催(かいさい)していると、玄関が開いてナミ子さんが戻ってきた。

 私は楽器を(かな)でる手を止めて、振り返る。 ナミ子さんは買い物に行ったはずだが、手ぶらで立っていた。 ……手ぶら?


「どうしたんですか?」


 私が聞くと、ナミ子さんは(つぶや)くように答えた。


「……分からん」

「え?」

「レジが変なことになってた」


 どういうことだろう? レジが変? 私と瑞は顔を見合わせる。

 話が見えないので、私たちは一緒に買い物に行ってみることにした。

 ついでにめんつゆ買おう。(黒縁)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ