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第25話 パソコン屋の女が家に来た!

 博物館に行った!

 少し時間が余ったので、私の家に行って、みんなで小説を書くことになった!

 1日の体験はそれなりに刺激的だったらしく、その勢いのまま作ろうということになったのだ。

 大してエアコンも()かない部屋で、4人ですし()め状態で作業をしていく。

 書き始めてから少しして、私は先に風呂を済ませておこうと風呂へ向かった。 他の2人はここの風呂は遠慮(えんりょ)するらしく、私は一人さびしく風呂に入る。

 いつものように滑らないように慎重に湯船の中を歩いて、湯の中に浸かった。

 風呂に入りながら、私は小説のネタを考える。


「うーん……。 ……あっ! 良いアイデア思いついたっ!」


 と思って立ち上がろうとした瞬間、ぬるっと滑ってドボンとひっくり返る。 もうやだわ、この風呂。


 家に戻ってくると、葉月と銀杏がケンカしてたっ!!


「なんだよXデーってw 次元? 衝突(しょうとつ)? いやー、もっと勉強した方がいいぜ、お嬢ちゃん」

「キーっ!! 先輩、この人ムカつきますよっ!!!」


 葉月は地団太(じだんだ)()んで、なにやら激しくキレ散らかしている。 察するに、ついに銀杏(いちょう)我慢(がまん)できなくなったらしい、葉月のオカルト話にツッコミを入れたようだ。

 (みず)はといえば、2人の会話を完全に無視してノートPCでカタカタやってる。 相変わらず落ち着いてるわねぇ、この人。

 私も2人を無視して小説を書くことにした。 私が相手にしてもしょうがない。 この2人は意外と仲がよさそうだし、放っておこう。


 しかしパソコンで文章を書き始めると、すぐに違和感発生! キーボードが押しにくい……。 なんと、また壊れたらしい。

 最後に買ったのいつだっけ? まったくしょうがないわね。

 面倒になりながらも立ち上がり、まだギャーギャーとケンカしている2人を置いて、家の外に向かった。



 外に出ると、もう日は落ちて暗くなりかけていた。

 レトロPC屋の前に来ると、ちょうど店を閉める時間だったようだ。 店主の若い女が、ガラガラとシャッターを下ろしている最中だった。


「あ、すみませーん! ちょっとキーボード買っていいですか?」


 女は作業をしていた手を止めて振り返った。 めっちゃダルそうな顔でこっちを見てくる。


「……あんた、何やってんの?」

「え?」

「だから、仕事やってんでしょ? 何してんの?」


 女はどうやら、私の仕事に興味を持ったみたいだ。 何度も顔を合わせてるから、気になったんだろう。

 こういう時、私は職業を言うのをためらう。 一応ギリギリ生活できるぐらいには(かせ)げてるんだから、小説家と言ってもいいはずなのだが、なぜか言うのをはばかられるのだ。

 しかし私は意を決した!


「小説家です」

「ぶっはっはあっっ!!!wwww 小説家てww ばっかじゃないのwwwww」


 いきなり大爆笑である。 まったく、またこの人もアレか。 億単位で稼げてないと小説家として認めない奴か。

 女は笑いすぎて、腹を抱えてひーひー言ってる。 あら、笑った顔は案外可愛いじゃない。 笑いを提供できて良かったわ。

 女は一通り笑い終えると、私に向き直った。


「ちょっと、パソコン見せて! そこでしょ? あんたの家」


 女は言うなり、勝手にズカズカとアパートに向かって歩き始めた。 え?! 私の家に来るの?

 私の心がまごついているうちに、女はアパートの階段を上がっていく。 ぎゃー!w 何が起こってんのっ??!! 私は(あわ)てて、一緒に部屋へと向かった。

 部屋に入ると、ギャーギャーと(さわ)いでいた葉月が途端に静かになった。 さすがの人見知りを発動して、人形のように一言も発さなくなる。

 女は何も気にしないように部屋を横切り、パソコンのそばに来た。


「うわ、PCダッサ」


 え、なにいきなり。 別に、私のパソコンはいたってごく普通である。

 私がそう思っていると、早速パソコンをチェックしていた女はさらに言う。


「それにOSサポート切れるよ、これ」


 あぁ、それはそうかも。 家族が使ってたのを、引き()いでもらったものなのだ。

 買ったのは結構前だから、もう寿命なのかも。 特に不具合も無く使えているから、別にいいんだけど。

 しかし改めて考えると、この状況は何だろう。 パソコンショップの店主が、直々に私の機材を見てくれているのだ。

 これってもしかして、なんかサービスしてくれる流れなのでは?!

 私はちょっとドキドキしつつ、思わず思考が口走った。


「これってもしかして、オリジナルPC作ってくれる流れ?」

「ハア?! 馬鹿じゃないの、夢見すぎ。 小説家脳?」


 しゃがんでパソコンを見ていた女は、顔をしかめて(ののし)ってくる。

 いや、そこまで言わなくても……。 私は何も言えなくなりうつむいていると、女は「ちょっと待ってて!」と言いつつ家を出ていった。

 女はすぐに戻ってきた。 手には古いパソコンを抱えている。 気づけば、一つ、二つ、三つ……。 え、いくつ運び込むの?!

 女は何を考えているのか、ゴツゴツした機械を大量に私の部屋に運び込み始めたのだ。

 ぎゃー!やばいっ!!w ノリで適当なことを言ってしまった。 もしかして、オリジナルパソコンを作っていいと解釈したんだろうか?

 その横で葉月たちは、家に帰ることにしたみたいだ。 変な目でその様子を見ながら、荷物をまとめている。


「じゃあ先輩、私たちこれで……」


 葉月と瑞の2人は、不審な目でパソコンをセットしていく女を見ながら、家を出て去っていった。

 残ったのは、私と銀杏と、女である。 女は何も言わず、持ってきた巨大な機械をくみ上げていく。

 それを見ながら、私は一人で頭を抱えた。

 やばい……どうしよう。 これ、一体いくらになるんだろう。 ローンとか組むんだろうか。 高いパソコンって、数十万とかするんじゃなかったっけ。

 まぁ、高かったらどうせ今すぐには払えないし。 いざとなれば、無理やりローンでもなんでも組みましょう。ははっ!!ww……オエエェエェ”ェ”ェエエッッ!!!!!!ゴババッバババババ


 銀杏はまだ、なんとなく家に残っていた。 床に散らばっていた、生物の参考書を眺めている。

 高校の内容だけど、いまさら興味あるんだろうか? しかし銀杏は割と真面目な様子だ。

 銀杏は、自分のしたいことや方向性が分からないと言っていた。 もしかして、いったん目を引いて、1から考え直そうとしているんだろうか。


 私は何もできなくなり、(かべ)に背をつけてぼんやりしていると、そろそろ両隣の家がうるさくなってきた。

 背中の壁からはガンガンと音楽の音が鳴り響き、反対側からは男女のイチャイチャする声が聞こえてくる。

 私は嫌になって、思わず顔をしかめる。 しかし、女や銀杏たちは何も言わず、黙々(もくもく)と自分たちのことに集中している。 うるさそうな素振りも見せず、本当に気にしていないように見える。

 え、これ気にならないの? こういうの気になるの、私だけ? 私が神経質すぎるんだろうか。


 私は座ったまま壁にもたれて、ぼうっと天井を見つめる。

 はぁ……。 あ、気づけばお腹が空いている。 そういえば、今日は昼に弁当を食べたきり、何も口にしてないんだった。

 私は銀杏に向かって聞く。


「そうめん食べる?」

「あぁ」

「私も」


 女がそう言って、友達みたいな感じで続いてくる。 うん、まあいいけどさ。

 私は部屋の(すみ)に積んであるそうめんの袋を一つ手に取った。 カセットコンロに火をつけて、(なべ)を置く。

 パソコンを作る作業をしている女のそばに行って、換気(かんき)をするために、小さな窓を開けようとする。

 すると、それに気づいた女が声を上げた。


「ハア?! 何やってんの?」

「いや、火を使うから……」

「いいだろ別に。 暑いだろ、分かんねぇのかよクソが」


 えらく口の悪いことだ。 女はそう言って私をギロッとにらむと、自分の作業に戻っていく。

 しょうがないなぁ、じゃあここでは調理できない。 私はカセットコンロの火を消すと、調理道具をまとめて玄関の外へと持って行った。


 玄関の外に出ると、私はアパートの廊下で、一人でそうめんを湯がく。

 あっつい……。 昼間も暑かったが、最近は夜すらも暑い。

 前に、過去の気温を100年分ぐらい調べたことがあったが、やはり少しずつ温暖化しているようだ。

 私が小さい時も暑かったが、ここまでじゃなかったと感じる。 でも、せいぜい10年では気温は大して変わらない。 そういうのって、思い込みなんだろうか。


 そうめんを調理し終えて、私は家の中に戻った。 そうめんの入った少し大きめの紙コップを、2人にそれぞれ渡していく。

 3人で一緒に食べ始めた。 ズゾッ!といい感じの音が、部屋の中に響いていく。

 食事をしていると、女がいきなり立ち上がって、うろうろと部屋の中を歩き回り始めた。 四方の壁を見まわして、何か探しているようだ。


「……どうかしました?」

「トイレどこ?」

「ないですよ」

「ねぇのかよ、ありえねぇだろ」


 女は()き捨てるように言うと、ふと部屋の(はし)っこにあったものを指さした。


「……あれは?」


 見ると、そこには船のような形をした容器があった。 先端にキャラ物のフィギュアみたいな造形が(かざ)られている。

 これは、おまるだ。 夜になったらトイレに行けないのが不便だと感じた私は、結局おまるを買ったのだ。

 さすがにアパートの横に毎回ひっかけていては下品だし、掃除の義務や、下手したら修理の義務が出てくるような気がする。

 その点おまるなら、いつでも気兼(きが)ねなく用を足せる。 目の前にあるから、トイレより短く済ませられる。

 安い消臭剤を同時に大量に買ったので、(にお)いはなんとかなるはずである。 まだ試したことはないけど。


「あぁ、それはおまるで……」


 私が説明し終えないうちに、女は部屋を横切っていくと、おまるを(つか)んで引っ張り出していった。

 え、今やるの?! 私が声を出せないでいるうちに、女は目の前で()いていた半ズボンとパンツを豪快に同時にジャッと下ろした。 何のためらいもなく、おまるにまたがってシャーっ!とやりだす。

 そうめんを食っていた銀杏は、嫌な顔をして思わず顔をそらした。

 気持ちよさそうなシャアシャアという音が、部屋中に響く。

 女は小便を終えると、何事もなかったかのようにズボンを引き上げて、元の作業へと戻っていった。


 この人、ヤバいな。 おまるを買ったのは私だけど、さすがに人がいる中でやるのは気が引ける。

 私は近づいて、中をそっと見ると、透明な黄色い液体がゆらゆらと()れていた。 あぁ、元気な感じの尿ね。 いいでしょう。

 私はそばにあった凝固剤(ぎょうこざい)と、消臭剤を適当におまるの中に放り込み、近くのアルミシートをかぶせた。


 そんなことをしていると、突然ピンポーン!と玄関のチャイムが鳴った。

 え、誰? 宅配でも予定してたかしら。

 私は誰が来たのか予想もつかず、玄関に出ていくと、なんと瑞がいた。


「あれ、瑞、どうしたの?」

「うん、ちょっと……」


 瑞はなにか言いづらそうにして、もじもじしている。

 瑞もトイレする?(黒縁)

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