表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/66

第24話 潰れかけの科学館を楽しもう!

 博物館を見て回った!

 一通り博物館を見終えて、昼食を食べ終えた頃には、私たちはくたくたに疲れていた。

 しかし、まだ予定はある! 博物館に行くついでに、近くの科学館にも行こうという計画だったのだ。

 科学館はちょうど(つぶ)れかけで、閉店セールみたいなことをやっているらしい。 入場料が安くなっているから、せっかくなら行ってみようということになったのだ。


 私たちは博物館の外に出て、再びガンガンに照り付けてくる太陽の下を歩いていく。


「ぜん”ば”あぁああい、まだ行くんですかあぁぁ?」


 葉月が疲れ果てた声で、(わめ)いて(うった)えてくる。 葉月はもう(こし)が曲がって、90歳のおばあちゃんみたいになっている。

 他の人たちも疲れているみたいだ。

 (みず)は汗をダラダラと流しながら、黙ってうつむいている。 その横で歩く銀杏(いちょう)も、少しぼうっとして風景を眺めている。

 博物館の中を回るのも、意外と体力を使った。 荷物置きのロッカーがあるのを知らずに歩き回っていたから、余計に体力を消耗(しょうもう)してしまったのだ。


 先頭を歩いていた私は、振り返って立ち止まった。


「じゃあ、もう帰ろうか。 えーっと電車がいつ来るんだっけ」


 私はリュックからスマホを取り出して、電車の時刻を調べ始める。

 ここの駅は、かつて隆盛(りゅうせい)(ほこ)った時には、快速も止まっていたから本数は多かった。 しかし今はさびれすぎてて、電車の本数もド田舎(いなか)のそれになっているのだ。

 どうでもいいけど、太陽の下だとスマホがめっちゃ見にくいよね。

 私はしかめっ面で、腕を(かか)げて影を作ってみたり、逆にスマホを上に掲げて下から(のぞ)き込んだりと死に物狂いで画面を凝視(ぎょうし)していると、気づけば横には誰もいなくなっていた。

 見れば、葉月たちは足を引きずりながらも科学館へと向かっている。


「あれ、行くの?」

「先輩、何やってるんですか?! ほら、行きますよっ!」


 どっちなのよっ!!w 私はスマホを急いでしまうと、3人の後を追った。



 科学館に入ると、疲れていた3人も元気になってきた! 予想以上に展示物が面白くて、すぐに夢中になってしまったのだ。

 科学館は潰れかけというだけあって、壁や天井がボロボロだった。 建物は古いが、今まで数十年子供たちを楽しませてきたと思うと感慨(かんがい)深い。

 館内には色んなアトラクションがあったが、一番刺激的だったのは地震マシンである。 地震の揺れの大きさを、段階を経て体験できるというものだ。

 (たたみ)一つ分ぐらいのスペースに乗って、ぐわんぐわんと揺れるマシンに私たちは絶叫していた。


「フオォォォオォッ!!!!wwwww」

「あぁあぁあ~~揺れるぅぅつ!!!イェイっ!!ww」

「ギャーっ!!!!!!wwwww」

「楽しーっ!!!!wwww」


 順番待ちをしている小学生たちが見上げてきて、奇異(きい)の目を向けてくるが気にしないっ!w

 ……とはいえ、楽しいと叫んじゃうのは大丈夫なの、私。


 その後も色んな展示物を体験していった私たちは、数時間も遊び倒したのち、()めくくりとしてプラネタリウムに行くことにした。

 しかし、思わぬところでイベント発生! プラネタリウムへ向かう途中で、不意に係員の人に声をかけられたのだ。

 先頭でウキウキで歩き回っていた私に、スタッフの女の人が声をかけてくる。


「こんにちはー。暑いですねー!」

「★f!#うぇ@¥。………………そうですね」


 私は突然のことにびっくりして、不審者みたいに挙動不審になって返事をする。

 それを聞いた途端(とたん)、後ろの3人がふき出すようにして笑い始めた。


「先っ輩wwwwwwwww 『そうですね』って何ですかwwwwwwwwwwwwww」

「フミ、社交性無いの?」


 瑞ちゃんが、真面目な顔になって聞いてくる。 いやぁ、そんなに真面目に考えなくてもいいんだけど。


「んー、そうじゃないはずだったんだけど」


 私は口ごもりながら言葉を濁す。

 もう……こういう時に、うまい言い方が出てこなくて嫌になる。

 嘘くさい(さわ)やかな笑顔で『暑いですねー!』って言うぐらいならできるはずだけど……。 最近はそれすらも嫌になって放棄しだしたぐらいだから、困ったものである。

 係員の人は、ずいぶん年上で70代ぐらいだった。 こういうのは年齢によっても違う気がする。

 さっきの人のは、なんか余裕がある気がした。 私は嘘くさいとか本音がどうとか言ってるけど、そういうのも感じない。 利己(りこ)ではなく、ちゃんと相手のことを思っている感じがするのだ。

 うーん、どうしたらそうなれるんだろう? 人生経験を積めば、勝手にそうなっていくものなんだろうか?



 私たちはプラネタリウムに入ると、座るための席を探し始めた。

 会場は思いのほか人が多かったが、(なん)なく席は見つかった。 座席が連なっている端っこの方に、4人で並んで座る。

 私は最後に入っていき、端っこの席に座った。

 頻尿(ひんにょう)だから、トイレに行くために真っ先に出ていけるようにしてるのかって? いやぁ、そういうわけじゃないけど。


 一番奥に座った銀杏の向こうには、一席だけ空いているが、それ以外はこの辺りは()まっていた。 会場はもう満杯(まんぱい)になってきていて、とても潰れかけの科学館とは思えない。

 私は優雅(ゆうが)に手足を落ち着けると、目を(つむ)って空気を吸う。


 スゥゥゥー……

 ハァァァー……。


 あぁ、いいわねこの感じ。 このプラネタリウムも、もうじき消えてなくなるのである。 はかない最後の一瞬を、私たちで見届けようじゃないの。フハっ!w

 私が一人で哀愁(あいしゅう)(ひた)っていると、そばに人が来た。 振り向くと、座席の外側に、中学生ぐらいと思しき女の子がいた。

 奥の一席だけ空いた席に行きたいんだろう、私に向かって真正面(ましょうめん)から聞いてくる。


「すみません、前を失礼してよろしいですか」

「え? ……あぁ、ぇ●&#どうぞ」


 ビビり散らかした私は、またもや動揺した。 偉そうにふんぞり返っていた足を引っ込めて、(あわ)てて女の子に道をゆずる。

 女の子はめちゃくちゃ丁寧(ていねい)所作(しょさ)で一礼すると、まるで貴族令嬢のように、優雅(ゆうが)に私の前を通っていった。


「先っ輩っ!! 今の見ましたか」


 (となり)の葉月が反応して、腕をガシンと(つか)んで激しく揺らしてくる。 あなた、もうちょっと小さな声で言いなさいよ。 絶対聞こえてるわよ。

 瑞や銀杏たちも、まるで庶民(しょみん)のように、頭をペコペコさせて道をゆずっていっている。

 葉月は身を乗り出して、珍獣(ちんじゅう)でも観察するように、向こうに行った女の子をガン見し始めた。 だからやめなさいって、変な人たちと思われたくないんだから。


 それにしても、えらく礼儀(れいぎ)のいい子だった。 小学生高学年から中学生ぐらいだと思うが、驚くほど所作(しょさ)綺麗(きれい)なのだ。

 たぶん裕福(ゆうふく)な家庭か何かで、育ちが良いんだろう。

 安いアパートの横にしょんべん引っかけてる18歳がいるかと思えば、あんな(ひん)の良い中学生もいるなんて。 うーん、世界は広いなぁ。


 私が神妙(しんみょう)な顔で社会の広さを感じていると、ふと誰かの目線を感じた。 振り向いて横の方を見ると、向こうの席から瑞ちゃんがこっちを見ている。 じっと私を見て、まるで危ない動物を観察するかのようだ。

 ギャーッ! 完全に私を変人を見る目で見てるぅぅっつっ!!ww 私と目が合うと、瑞ちゃんはふいっと前を向いていった。

 私がヤバい人だってそろそろ気づいたのかしら。 ずいぶん遅かったわね。ははっ!!w



 その後、プラネタリウムを見終えると、私たちは潰れかけの科学館から出てきた。

 施設(しせつ)を後にしながら、歩きながらもう一度振り返って、ボロボロの建物を見る。

 人々を楽しませて、最後の(かがや)きを放った。 これで潰れかけの科学館も、悠久(ゆうきゅう)の眠りにつくのである。 あぁ、いいわね。 博物館を見た後だから、ポエマーになっちゃうわ。


 私たちはそのまま電車に乗って、風船も何もないクソさびれた駅からおさらばした。 電車の中には夕日が差し込んできている。

 帰りの電車の中でも、瑞ちゃんは私のことをちらちらと見てきた。 私が振り向いたら、ふいっと目をよけて……。

 ……え?! もしかして、恋にでも落ちたのかしら。 私のことが気になってるとか???!! フゥゥツッ!!!wwww

 帰ってうどん食べよう。(黒縁)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ