第24話 潰れかけの科学館を楽しもう!
博物館を見て回った!
一通り博物館を見終えて、昼食を食べ終えた頃には、私たちはくたくたに疲れていた。
しかし、まだ予定はある! 博物館に行くついでに、近くの科学館にも行こうという計画だったのだ。
科学館はちょうど潰れかけで、閉店セールみたいなことをやっているらしい。 入場料が安くなっているから、せっかくなら行ってみようということになったのだ。
私たちは博物館の外に出て、再びガンガンに照り付けてくる太陽の下を歩いていく。
「ぜん”ば”あぁああい、まだ行くんですかあぁぁ?」
葉月が疲れ果てた声で、喚いて訴えてくる。 葉月はもう腰が曲がって、90歳のおばあちゃんみたいになっている。
他の人たちも疲れているみたいだ。
瑞は汗をダラダラと流しながら、黙ってうつむいている。 その横で歩く銀杏も、少しぼうっとして風景を眺めている。
博物館の中を回るのも、意外と体力を使った。 荷物置きのロッカーがあるのを知らずに歩き回っていたから、余計に体力を消耗してしまったのだ。
先頭を歩いていた私は、振り返って立ち止まった。
「じゃあ、もう帰ろうか。 えーっと電車がいつ来るんだっけ」
私はリュックからスマホを取り出して、電車の時刻を調べ始める。
ここの駅は、かつて隆盛を誇った時には、快速も止まっていたから本数は多かった。 しかし今はさびれすぎてて、電車の本数もド田舎のそれになっているのだ。
どうでもいいけど、太陽の下だとスマホがめっちゃ見にくいよね。
私はしかめっ面で、腕を掲げて影を作ってみたり、逆にスマホを上に掲げて下から覗き込んだりと死に物狂いで画面を凝視していると、気づけば横には誰もいなくなっていた。
見れば、葉月たちは足を引きずりながらも科学館へと向かっている。
「あれ、行くの?」
「先輩、何やってるんですか?! ほら、行きますよっ!」
どっちなのよっ!!w 私はスマホを急いでしまうと、3人の後を追った。
科学館に入ると、疲れていた3人も元気になってきた! 予想以上に展示物が面白くて、すぐに夢中になってしまったのだ。
科学館は潰れかけというだけあって、壁や天井がボロボロだった。 建物は古いが、今まで数十年子供たちを楽しませてきたと思うと感慨深い。
館内には色んなアトラクションがあったが、一番刺激的だったのは地震マシンである。 地震の揺れの大きさを、段階を経て体験できるというものだ。
畳一つ分ぐらいのスペースに乗って、ぐわんぐわんと揺れるマシンに私たちは絶叫していた。
「フオォォォオォッ!!!!wwwww」
「あぁあぁあ~~揺れるぅぅつ!!!イェイっ!!ww」
「ギャーっ!!!!!!wwwww」
「楽しーっ!!!!wwww」
順番待ちをしている小学生たちが見上げてきて、奇異の目を向けてくるが気にしないっ!w
……とはいえ、楽しいと叫んじゃうのは大丈夫なの、私。
その後も色んな展示物を体験していった私たちは、数時間も遊び倒したのち、締めくくりとしてプラネタリウムに行くことにした。
しかし、思わぬところでイベント発生! プラネタリウムへ向かう途中で、不意に係員の人に声をかけられたのだ。
先頭でウキウキで歩き回っていた私に、スタッフの女の人が声をかけてくる。
「こんにちはー。暑いですねー!」
「★f!#うぇ@¥。………………そうですね」
私は突然のことにびっくりして、不審者みたいに挙動不審になって返事をする。
それを聞いた途端、後ろの3人がふき出すようにして笑い始めた。
「先っ輩wwwwwwwww 『そうですね』って何ですかwwwwwwwwwwwwww」
「フミ、社交性無いの?」
瑞ちゃんが、真面目な顔になって聞いてくる。 いやぁ、そんなに真面目に考えなくてもいいんだけど。
「んー、そうじゃないはずだったんだけど」
私は口ごもりながら言葉を濁す。
もう……こういう時に、うまい言い方が出てこなくて嫌になる。
嘘くさい爽やかな笑顔で『暑いですねー!』って言うぐらいならできるはずだけど……。 最近はそれすらも嫌になって放棄しだしたぐらいだから、困ったものである。
係員の人は、ずいぶん年上で70代ぐらいだった。 こういうのは年齢によっても違う気がする。
さっきの人のは、なんか余裕がある気がした。 私は嘘くさいとか本音がどうとか言ってるけど、そういうのも感じない。 利己ではなく、ちゃんと相手のことを思っている感じがするのだ。
うーん、どうしたらそうなれるんだろう? 人生経験を積めば、勝手にそうなっていくものなんだろうか?
私たちはプラネタリウムに入ると、座るための席を探し始めた。
会場は思いのほか人が多かったが、難なく席は見つかった。 座席が連なっている端っこの方に、4人で並んで座る。
私は最後に入っていき、端っこの席に座った。
頻尿だから、トイレに行くために真っ先に出ていけるようにしてるのかって? いやぁ、そういうわけじゃないけど。
一番奥に座った銀杏の向こうには、一席だけ空いているが、それ以外はこの辺りは埋まっていた。 会場はもう満杯になってきていて、とても潰れかけの科学館とは思えない。
私は優雅に手足を落ち着けると、目を瞑って空気を吸う。
スゥゥゥー……
ハァァァー……。
あぁ、いいわねこの感じ。 このプラネタリウムも、もうじき消えてなくなるのである。 はかない最後の一瞬を、私たちで見届けようじゃないの。フハっ!w
私が一人で哀愁に浸っていると、そばに人が来た。 振り向くと、座席の外側に、中学生ぐらいと思しき女の子がいた。
奥の一席だけ空いた席に行きたいんだろう、私に向かって真正面から聞いてくる。
「すみません、前を失礼してよろしいですか」
「え? ……あぁ、ぇ●&#どうぞ」
ビビり散らかした私は、またもや動揺した。 偉そうにふんぞり返っていた足を引っ込めて、慌てて女の子に道をゆずる。
女の子はめちゃくちゃ丁寧な所作で一礼すると、まるで貴族令嬢のように、優雅に私の前を通っていった。
「先っ輩っ!! 今の見ましたか」
隣の葉月が反応して、腕をガシンと掴んで激しく揺らしてくる。 あなた、もうちょっと小さな声で言いなさいよ。 絶対聞こえてるわよ。
瑞や銀杏たちも、まるで庶民のように、頭をペコペコさせて道をゆずっていっている。
葉月は身を乗り出して、珍獣でも観察するように、向こうに行った女の子をガン見し始めた。 だからやめなさいって、変な人たちと思われたくないんだから。
それにしても、えらく礼儀のいい子だった。 小学生高学年から中学生ぐらいだと思うが、驚くほど所作が綺麗なのだ。
たぶん裕福な家庭か何かで、育ちが良いんだろう。
安いアパートの横にしょんべん引っかけてる18歳がいるかと思えば、あんな品の良い中学生もいるなんて。 うーん、世界は広いなぁ。
私が神妙な顔で社会の広さを感じていると、ふと誰かの目線を感じた。 振り向いて横の方を見ると、向こうの席から瑞ちゃんがこっちを見ている。 じっと私を見て、まるで危ない動物を観察するかのようだ。
ギャーッ! 完全に私を変人を見る目で見てるぅぅっつっ!!ww 私と目が合うと、瑞ちゃんはふいっと前を向いていった。
私がヤバい人だってそろそろ気づいたのかしら。 ずいぶん遅かったわね。ははっ!!w
その後、プラネタリウムを見終えると、私たちは潰れかけの科学館から出てきた。
施設を後にしながら、歩きながらもう一度振り返って、ボロボロの建物を見る。
人々を楽しませて、最後の輝きを放った。 これで潰れかけの科学館も、悠久の眠りにつくのである。 あぁ、いいわね。 博物館を見た後だから、ポエマーになっちゃうわ。
私たちはそのまま電車に乗って、風船も何もないクソさびれた駅からおさらばした。 電車の中には夕日が差し込んできている。
帰りの電車の中でも、瑞ちゃんは私のことをちらちらと見てきた。 私が振り向いたら、ふいっと目をよけて……。
……え?! もしかして、恋にでも落ちたのかしら。 私のことが気になってるとか???!! フゥゥツッ!!!wwww
帰ってうどん食べよう。(黒縁)




