第16話 学校で『部活』をやってみよう!
サークル系イベントに行ってから、数日がたった。
結局、葉月の仲間を見つけられなかったわけだが、どうすればいいんだろう?
悩む私をよそに、葉月は気にしてないが如く『部活』に誘ってくるっ!
「先輩っ! 遅いですよっ!」
学校の校門前で、葉月が仁王立ちして私を待っていた。 今日は、葉月の学校――または私が退学した学校で活動することになったのだ。
二見さんも来ていて、校門前に葉月と一緒に立っている。 今日も、未来学校のさっぱりした爽やかな制服を着ている。
……というかこの子は、ネット小説部には行かなくていいのか? いや、もう今日の活動を終えてここに来たんだろうか。 いまいち行動が読めない人である。
ところで、当たり前だが私と二見さんはこの学校の生徒ではない。
まともにこの学校の制服を着ているのは葉月だけで、二見さんは未来学校の制服、私は私服だ。 バラバラすぎて、寄せ集めの輩なのは明らかである。
見つかったらすぐに追い出されるだろうが、気にしないっ!w
「入っていいの?」
「さあ」
そんな感じで二見さんと適当に話しながら、校門をくぐって敷地内に入っていった。
卓球部の第2部室は、今日も人はいなかった。
今度は葉月が3人分のレトロPCを用意してくれていたみたいだ。 デカいブラウン管のパソコンが3台に増えていて、オシャレな可愛い布をかけて部屋の隅っこに置いてあった。 許可を取ってないのは言うまでもない。
最初は息がつまるほど暑かった部屋も、冷房が効き始めると快適になった。 冷房を最低の16度に設定して、最大風量にすると、超気持ちいい。
「あぁあぁっ! 気持ちいいですよっ!先輩っ!!!」
「す・ず・しーーーっ!!!ww」
私たち3人はテンションが上がり、活動そっちのけではしゃぎ始めた。 冷房の風を受けながら、踊り狂っていく。
二見さんまでテンション上がりすぎて、椅子の上に立ち上がって冷房の風を受けている。 目をつむって腕を伸ばして、「ああぁああぁあ~~~~~~っ!!!!!」とか叫んでいる。 大丈夫、暑さで頭をやられたの。
そんなことをしていると、いきなり部屋の扉がガラッと開いた!
入ってきたのは教師だった。 私たちの様子を不審な目で見てくる。
かくして、私たちは追い出された! 入って20分しか経ってないが、校門を逆戻りして出ていく。
葉月は号泣しながら、歩きながら私にすがりついてきた。
「ぜんばぁ”ぁぁあああい!!!!私、この世に否定されてるんでずよぉぉつ!!!!!!!!!!!」
カンカンに照り付ける太陽のもとで、涙と汗でぐちゃぐちゃになりながら、葉月が私に訴えてくる。 汗にまみれた腕が絡みついてきて、湿気と熱気で、余計に暑く感じられてくる。 あぁ、もう暑いわね!
……でもまぁ、学校で活動してたらそうなるだろう。 ちょっとは制服を工夫したりして隠せばいいものを、そんなこともしないし。
仕方ない、また適当な安い喫茶店にでも行くかな。 あ、でももう財布はすっからかんだ。 どうしよう。
私が活動場所を一人で考えていると、葉月が別の話題を振ってきた。
「そういえば先輩、あの日二見さんと一緒にどこ行ってたんですか?」
あの日?……あぁ、バイクで疾走して青春っぽいことした日ね。
私は思い出しながら、山の神社に取材に行った話をする。 葉月も興味があったようで、食いついてきた。
「私も行ってみたいですっ!」
キラキラした目をして、思いっきり顔を近づけてくる。 あぁ、相変わらず距離が近いわねあなた。
聞けば葉月は、そういった取材をしたことはほとんどないらしい。 考えると、当たり前かも。 オカルト系でぶっ飛んだ話ばかり書いてるし、取材なんてしようがない。
とはいえ、取材かぁ。
今のところ、別に私は行きたいところはないのだ。 縄文時代の遺跡には、一人で行ったし。
考えながら歩道を歩いていると、横で二見さんがぼそっと言う。
「私も、小説のネタが尽きてきてるんだよねー……。 最近、考えても全然思いつかなくて……」
二見さんはそう言って、控えめに俯いている。 なるほど、3人の方向は一致しているのかもしれない。
私も気晴らしにどこか行きたいし、適当に取材する場所を見つけて、行ってみるのも悪くないかも。
言っちゃ悪いけど、葉月や二見さんを見ていると、学校に行って家に帰って寝るぐらいしかしてなさそうだ。
現代は遊ぶ場所も制限されているし、子供はもはや歩行と呼吸しかしてないような気がする。 何も肌で経験しないまま、大人になってる気がするのだ。
私も同じだし、だから昔から無意識にイライラしてきたわけだけど。
そういう生活をしていると、考えが停滞するのは仕方ない気もする。
私もなんとかそれを回避しようと、あちこち散歩してるのだが、停滞を回避できているかは疑問符がつくところだ。
どこにも行く場所がなくなった私たちは、それぞれの家に帰ることにした。 集合して1時間とたってないのに、今日の活動はおしまいである。
カンカン照りの太陽のもとで歩くと、すぐに元気がなくなって、私たち3人はしおれるようにして解散していった。
まったく、何をやってるんだろうねぇ。 私は息を吐きながら、帰路を辿る。
家の近くまで来ると、『レトロPCショップ』の横を通りがかった。
「あ。 キーボード壊れたんだった」
私は一人で呟きながら、店に立ち寄ってみる。
ところでキーボードってすぐに壊れるのね、びっくりしたわ。
小説家という職業柄、毎日大量に文字を書くからか、あっという間にキーボードが摩耗する。
最初は滑らかだった打ち心地も、キーがへたってパコパコガタガタになるのである。 私の打ち方が悪いだけなのかな。
店に一歩足を踏み入れると、強烈な寒気が私を襲った。
うわ寒っ!
一体何度に設定したらこうなるのかと思うほど、店の中は凍えるような寒さに満ちていた。
前回も寒かったが、今回はさらに寒い。
しかし相変わらず、35℃を超えた外への扉は見事なまでに開け放たれていて、電気代を考えるとなぜか私の方が胃が痛くなってくる。
店に入ってすぐに、中央のソファにまた目が行った。 裸足の女の人は、今日もそこにいた。
前回より更にだらけていて、寝そべった体をソファに残して、頭だけズレて床に落ちかけている。 それでもスマホはしっかりと握っていて、何をしているのやら知らないが、熱心に光速で指を動かしている。
あなた、もしかして一日中スマホしてるの。 体も頭も、どうかなっちゃうわよ。 あ、もうなってんのかな。ぶははっ!ww
私は心の中で爆笑しつつ、前回と同じく店の隅っこに行って、安いキーボードを手に取った。
ソファに近づいて女の人に声をかけると、女は頭からずり落ちて、転がるように床に寝そべった。
そのままゆっくりと立ち上がり、何事も無かったかのようにレジへ向かう。 まるで、動物のナマケモノを見ているような気分である。
女は弱々しい足取りでレジへたどり着くと、雑に接客サービスを開始した。 バーコードを読み取りもせずに、一言いう。
「2800」
超簡潔な表現である。 よし分かった、2800円ね。 私はもう何も突っ込まずに、財布からお金を出していく。
いいじゃないの、慣れてしまえばシンプルな接客だ。 こっちも気を使わなくていいし、必要最小限で、ある意味洗練された接客と言えなくもない。
おぉ、いいじゃない。 そうそう、ポジティブに行きましょう。
じゃらじゃらと出した硬貨を、女が頑張って数え始めた途中で、私は割り込むように言った。
「あ。 すいません袋いいですか?」
女は顔を上げてギラっと睨むと、振り返ってレジの奥の袋を取ってくる。 なんかごめん。
その後、前回と同じように5分ぐらい待って、ようやく会計が終わった。 私はイライラしながら店の出口に向かっていく。
また来るからね。 絶対、来てやるから。 舐めんじゃないわよ。
私は無意味な頑固さを発揮しながら、店を後にした。
外に出ると、急激に暑さの中に戻った。
うわ、暑っ……! いきなり外気に出て、暑さの中に逆戻りである。
思わず足を速めて家に帰ろうとするが、考えてみれば、家は大してクーラーが効かない。
どうせ家に帰っても、まだ今日書く分の小説の内容も浮かんでない。
私はもう一度方向を変えて、家に戻らずそのまま散歩することにした。
お好み焼き食べよう!(黒縁)




