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100年の休暇  作者: 十月猫熊
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竜王の城の中にある私の部屋は、そのままになっていた。


懐かしい調度品に小物の数々。

思わず私の口元に笑みが浮かぶ。


急にあたりの様子が変わったので、慌てふためくラルフに、とりあえずソファに座っていてもらった。


私が居なかったにもかかわらず、この部屋に変わらずに控えていてくれた侍女たちに微笑みかける。


嬉しさを隠し切れない表情の、私付きだった侍女たちに頼んで、ラルフには痛みを抑えるお茶を出してもらい、私は隣の寝室で今の体に合う服を身に着けた。


何が起こっているのか分からなくて、キョロキョロしっぱなしのラルフの隣に座って、とりあえず謝って、説明をした。


「ここは、竜王の城にある私の部屋。転移してきたのよ。説明もなく連れてきてごめんなさい。私、あのペンダントに、ありったけの自分を封じていたの。魔力含めて、ね。だから魔力不足で、ある程度から大きくなれなかったみたい。特にヒト族の国は空気中や土地の魔素が少なくて、周りから取り込むこともできなかったから。魔力が戻ったことで一気に成長したし、だいたいの記憶も取り戻したわ」


「そ、そうなのか」


今の私は大柄なラルフの肩より少し上、女性としてはむしろ長身かもしれないほどに大きくなっていた。


胸も柔らかくその存在をしっかりと主張していて、どこからどうみても成熟した女性だ。


ラルフは、大きくなった私を確かめたい気持ちと、どこを見ていいのか分からなくなってドギマギする気持ちの板挟みのようだった。


「ほら。ちゃんと大きくなったでしょう?」


ラルフの大きな手をとって、私の頬に当て、頬ずりをする。


ラルフが赤くなったのをみて、嬉しくなった。


「私ね、ちゃんと思い出したの。私の種族は不死竜の異名もある、炎竜よ」


「え!あれっておとぎ話じゃないのか…」


「そうね、炎竜は私を含めて数人しかいない。私の子はいつも私より夫の血が濃く出てしまうから。私の夫は何度生まれ変わってもいつもあの人なんだもの」


「そうか、伝説では竜王の妻は確かに不死竜という話だった…」


私の種族、炎竜は、火竜の仲間であるが、決定的に違うところがあった。


もともと、竜の名の付く一族は皆、数千年を生きる。火竜もそうだ。

なのに、炎竜は他の多くの獣人と同じように、百年ちょっとで寿命を迎える。

そのかわり、死ぬと同時に、この世界ができたときからあると言われる神木の幹から光が放たれて、その光がこごって赤ん坊が姿を現す。


生まれ変わるのだ。


一度炎竜として生まれると、そうして延々と何度も生まれ変わるので、不死竜、と呼ばれていた。


そうして生まれ変わっても、直前の前世の記憶はそのまま持っているので、周りも本人も特段不便はない。


忘れたいことは次々回の生では忘れられるし、覚えておきたいことは覚書にしておくことで学び直して忘れないようにすることができる。


覚書にしないまでも、前世であったことを頻繁に思い出しておくと、次の生でも思い出の中の記憶として残る。


なので、ヒト族の国で苦労しているハーフエルフの領主も、もちろん夫であったダミアスも、本来忘れているはずがない人たちだった。


なのに、私は自分の魔力と記憶を封じてまで、ダミアスから離れた。


「あのね、かいつまんで話すと、前回の人生で、私、子どもを亡くしたの。産んだ子の瞳の色を確認できないまま、その子は死んでしまったのよ。残念ながらやっぱり炎竜をついではいなくて、生まれ変わってくれなくて、悲しくて泣いたわ」


あまりに色々起きすぎていっぱいいっぱいだろうに、ラルフはそうか、と頭をポンポンしてくれた。

小さいカティアをなぐさめるときにしてくれた、そのままに。


「なのにね、あの人ったら…よりにもよって、数千年共に生きてきた私というものがありながら、私が子を亡くして悲しんでるっていうのに、その隙に、ヒト族の女の子に手を出したのよ!味見がしてみたかったんですって!私がどんなに怒り狂ったか、想像がつく?」


ラルフが慌てたようにプルプルと首を振った。


数十年前の出来事とはいえ、私付きの侍女たちはまだ思い出して怒り心頭の様子だ。


「それでね、まあ難産のせいで子が死んだのだけど、私の体も弱っていて、私もその後すぐに死んでしまったのよ。でもね、死ぬ前に、私の信頼の厚いこの子たちに頼んで、生まれ変わった私から、ダミアスが私を探し出せないくらい、でも私が死なないギリギリまで魔力を吸い取って封じて、あの人が興味津々だったヒト族の国に置いてきて、と頼んだのよ。あの人が反省したようだったらこの子たちが迎えに来てくれることになっていたの。でもね、迎えに来たのはこの子たちじゃなくて、あの人本人だったでしょう?っていうことは、まだ本心から反省はしていないってこと…?」


「はい、姫様、反省したような時もありますが、相変わらず魔が差したのなんだのと口になさるので、あきれておりました」


「そんな気がしたわ…。で、あの娘はどうなったの?まだヒト族だとしても生きているでしょう?番のためのこの部屋には入れなかったのね?」


「あの娘を竜王様の番とは誰も認めておりません。あの娘は、残念ながら胎内に受け入れた竜王様の魔力に耐え切れず、子を成すこともなく儚くなりました。この件では本当にあのハーフエルフには迷惑をかけたものです」


「…そうだったの…」


あのハーフエルフ、とはもちろん領主のことだ。


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