表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100年の休暇  作者: 十月猫熊
13/20

13

少し短めです。

3日ぶりに目にしたラルフからは、毛の生えた耳としっぽが、無くなっていた。


眠っているその顔からは苦しみの跡が見て取れた。


耳のあったところには包帯がまかれている。

そして、ヒトの耳と同じ場所に小さな耳ができてきていた。


犬の獣人にとって耳としっぽは大切なもので、とれたそれらは箱に収められてとっておかれる。


そして本人が死んだときに一緒にお墓に収めるのだとか。


箱に入ったしっぽに最後に触らせてもらい、カティアはもうラルフと今までのようには過ごせないことをなんとなく感じていた。


耳としっぽのとれた傷口がふさがるころには、ラルフはすっかり元気になっていて、ヒト族と同じところにできてきた耳もちゃんとした大きさになっていた。


カティアが不思議がって耳に触ろうとすると、くすぐったがって逃げ回った。


そして、ラルフはカイトと同じ部屋で寝るようになって、二人で寝ていたベッドはカティアだけのものになった。


幼体ではなくなったラルフは、ほんの一週間で今まで着ていた服が着られなくなるほど、ぐんぐんと成長した。


その急激な成長も痛みを伴うらしく、痛い痛いと言いながら、一日中何か食べていた。猛烈にお腹がすくらしかった。


カイトはもっと早くに二次成長をしたのでここまでの急激な成長ではなかったらしく、大変だなーと言いながら、ラルフのために仕事を休んで一日中ご飯を作っていた。


ラルフは耳としっぽがなくなって、体が大きくなるにつれて、その言動もあっというまに大人びた。


子供っぽい物言いはなくなり、あと一年しかないから、と騎士団の入団試験にむけて猛烈に訓練を重ねていった。


幼体の間はいくら鍛えてもたくましくはならないのだとか。


そして、本人の努力の結果、17歳で入団試験を受ける頃には、たったの一年とちょっとで鍛え上げたとは思えない体つきとなっていて、無事に合格し…この家を出て行ったのだった。


カティアはラルフと一緒に寝られなくなって寂しくて泣きそうになったけど、同じ家に居るのだから、と我慢していたのに、家を出てしまってからは耐えられなくて随分泣いた。


仕事をしているときは忘れられたけど、夜ベッドに入ると寂しかった。

でも、15歳にもなって、幼子のように寂しくて一人で寝られない、などとは恥ずかしくて口にはできなかった。


孤児院にいたとき、本当の幼児だったころにそんなことはなかったというのに。


やがて一人で寝ることにも慣れて、五人家族から四人家族になったことにも慣れた。


家族の仲間に入れてもらって日の浅いカティアが、両親やカイトがラルフがいなくなってもそれなりに過ごしているのに、いつまでも寂しがっているわけにもいかなかった。


でも。


今日、カティアの名を知る、不審人物からの接触があった。


カティアは、最近は触れることの減っていた胸元のペンダントを服の上から触った。


これは普段服の中に入れているので、カティアがこんなペンダントをしていることを知らない人たちの方が多い。


胸元から引っ張り出してその小瓶を眺める。


中にはオレンジ色の宝石のような結晶がびっしりと詰まっている。


ランプにかざすとキラキラと輝く。

小さい頃は、これが自分と親を結び付けてくれるのだ、と見るたびに嬉しくなったものだ。


でも今は…。


もしかして本当の親がカティアを捨てなくてはならなかった理由がなくなり、迎えに来たのではないか。

…カティアの本当の親は、身分が高そうだと言われていたし…。


この家族と引き離されることを想像するだけでも、身を切られるような絶望を感じる。


でも、贈り物の主が実の両親だとして、もう18歳だから引き取ってもらわなくてもいいです、と言えばいいのではないか?


でも、やっぱり実の親に一目会ってみたい。


自分の種族を知りたい…。

どうして大きくならないのか知りたい。



あの緑の髪の人の身なりはとても良かった。

実の親は貴族かもしれない。


聞いた話だと貴族の娘は、政略結婚という、政治の駒に使われることも多いとか。


もしかするとカティアが病気で成長が止まっていることを知らず、18歳になった娘を政治の駒に使うために迎えに来たのではないか…。


様々なことが頭をよぎり、もうパンクしそうだ。


一人で抱えるには重すぎる…。

カティアは膝に頭を押し付けて丸くなり、何も考えたくない、とぎゅっと目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ