野盗狩り②
野盗集団の対応は迅速だった。
ライアを捕捉した若い男が短剣を引き抜き、近くで座り込む老人の元へと向かう———が、これを今度は加減無しの電撃で撃ち払う。その後も同じく人質を取ろうとする行動が相次ぐものの、中距離から確固撃破されていく。
騎士ならばともかく、まさかリング持ちが救出に現れるなど、誰一人とて想像していなかったのだろう。彼らの不運さは同情ものである。
どん。どん。どん。と、巨人の足音のような轟音が響く中、登笈もまた、影薄ながら野盗の一人と相対していた。
「っんだよ、お前ら……意味わっかんねぇ……」
痩せぎすの男だった。乱雑に剥ぎ取られた毛皮と乾いた血のついた上着で全身は確認出来ないが、頬は痩けていて、首も細い。短剣を握り締める手の甲には骨も浮かび上がっているほどに。
憎々しそうにこちらを睨み付ける彼は、登笈の身なりや顔を見て、唾を吐き捨てる。
「意味が分からないのは僕の方だ。何でこんなことをする。脅して、奪って、それで何が楽しい」
「意味だぁ? それこそ知らねぇよ。くっそ。お前、んの綺麗なツラからして貴族だろ。なーんも苦労しねぇで、正義ぶりやがって」
男は額を押さえて、前髪を乱雑に握りながらそう言った。登笈が貴族で、だから自分達の苦しみなど分かりようもないと。
「はっ。あの雷野郎もそぉだろうが。餓鬼のくせに騎士気取りで、みんなを苦しめる盗賊を成敗ってか。なめやがって」
「……くッ!!」
ガギッ。と、金属と金属とが削り合う不協和音が響いた。
切りかかって来た短剣を刃の根元の方で受け止めて、登笈と野盗が剥き出しの剣気をぶつけ合う。
「おいおい怒んなよ……その通りだろうが。生活に困ってねぇから、んなことが言えんだよ」
「そりゃ———僕は恵まれてる方かもしれないけど、それとこれは違うだろっ!!」
「はっ、分かんねぇなぁ。小せぇ頃から何もしなくても飯が出てきてたような奴に、どうこう言われたかねぇんだよなぁ!!」
勢いそのまま、短剣による突きと振り下ろしが交互に襲い来る。野盗の連撃を刃渡りのリーチで強引に弾きながら、反撃の機会を待つが———残念なことに、男を大きく上回るほどの技量を登笈は持っていない。
積もった雪が足を奪い、グリザリオから習ったステップも逆に下半身を疲れさせるだけだ。どうしても一度攻められれば防戦一方となってしまう。
「ネサラだってそうだ。貴族や一部の富裕層が良い気になってっから天罰が降ったんだよ!!」
「ッ———……」
「違ぇなら何か言ってみ———」
一迅。野盗がその言葉を言い終えるより前、赤黒い液体が足元の白を暗く染め重ねる。ついでに落ちた手首から先に何の感傷も持たず、登笈は剣についた血を払ってから、狼狽える男の腹を思い切り蹴り飛ばした。
「……あぁ、もう」




