道筋を定めて
「僕は……そうだなぁ」
喫茶店ストーンフィッシュ。その奥のテーブル席で、登笈は答えに悩んでいた。
問いは、自分がこれからどうしたいのか。それに対する正直な見解を述べるなら、わからない、が彼にとっては正しい。
とりあえずステンネル公爵家のあるセントホルンへ帰りたいのは確かだが、それもリアーネとの約束を果たすためのもの。
では、彼女と再会してからはどうするのかと考えると、登笈の思考は砂嵐が舞うようにぴたりと止まってしまった。
「王国には帰る。けど、その後は二人と同じかな」
だが、自分の沈黙をライアとルーンが待っていてくれたから、登笈は自虐じみた苦笑を作ってそう答えられた。
三人揃って差し迫った明確な目的意識など無いと、そう共有して。
「じゃあ、またみんな一緒だね」
「帰国になるわけだな。はぁ、道のり長ぇぞぉ」
「……え?」
予想に反した二人の返事に、登笈が目を丸くする。
それを聞いて、向かいのルーンも、え、と声を漏らした。
「一緒に行くんじゃないの?」
「え、いや……だって、ルーンは別にアテリアに行く用事があるわけじゃないでしょ? ライアも実家には……」
しどろもどろになりながら、登笈は嬉しさ半分、戸惑い半分に手をわたわたとさせた。
「私、もう友達と離れたくないよ……」
マグカップの縁を指でなぞるルーンが、弱々しい声でぽしょりと呟く。
その捨て猫のように寂しさに溢れた言葉を聞いて、登笈は、うっ、とハートを突き刺される。
彼女がそう意識して言ったのかは定かで無いが、三人ともが学習院という故郷に色々なものを置いてきた。唐突にお別れを告げられて、無理矢理に手放してきた。
おそらく、先に行ったレイドとスイヨも、本音のところではこれ以上学友を失うことはしたくなかっただろう。それでも成すべきことがある、目的の為に我慢しなければならない、と自分を押し殺して未来を願ったのだ。
だからルーンの切実な想いを否定することも出来ない。ライアも、余計な茶々(ちゃちゃ)を挟まず、ただ目を閉じて顛末を待っている。
「セントホルンまで行って、そこで邪魔になったらどっか行くから……それまでみんなで一緒にいおうよ」
懇願するルーンの瞳に、登笈は降参とばかりに手を挙げる。
「わかった、わかったよ。セントホルンまで三人一緒だ。その後のことは、その後考える!! ライアも、それでいいかな?」
ぐっと水を飲み干して、それからライアに視線を飛ばすと、彼は少し楽しそうになってきたようで、勝気な笑みで、おう、と返した。
「やったぁ!!」
「その代わり、過酷な道になるよ。エイトリー領が抜けられないんなら、ライアがさっき言ったように北上して回るしかないからね。距離もあるし、多分すっごく寒い!!」
「ヴェステン領は一度行ったことがあるが、あっこは人里離れると雪に埋もれちまうくらいの極寒地獄だ。死人が出ねぇようにしないとな」
資金に防寒着、地図。揃えるものは多いが、指針はここに定まった。登笈の帰領に付き合う形で、ライアとルーンの同行も決まり、彼らは一蓮托生で臨山都市ティファリアを出発する。
最初に目指すは、スリージ聖王国の最北端であり、妖精伝説が根差す白銀の街ラウンステッド。




