表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELACION 〜有力貴族の居候となった少年とその数奇な人生を〜  作者: 紺色わさび
ステンネル家の居候 編
3/74

陽だまりで死にかける

「———くぁ」


 間の抜けた欠伸声(あくびごえ)が、風に乗ってどこかへ飛んでいく。

 ぎらぎら輝く真昼の太陽がどうしようもなく眩しい。(まぶた)を閉じてもなんと視界は真っ赤である。

 ———どうやら、芝生に寝っ転がって、そのまま寝こけてしまったらしい。首を傾(かたむ)けると、花を生やした雑草の隣に訓練用の木剣(ぼっけん)が転がっていた。


 眠りにつく前の出来事を、なんとなく思い返す。確か、今朝は義母上(ははうえ)に雑草抜きを頼まれていたのだったか。

 なので、朝食を()って元気が有り余っている間に抜けるだけ抜いてしまおうということで、根っこをぶちぶち言わせながら引っこ抜いていたのだ。それを約一時間ほど。そのあと、義母上(ははうえ)が仕事の支度を済ませた頃にやってきて、熱中症になるからそのくらいで充分よ、とかなんとか言っていただいたはずだ。


 そして、義母上()の忠告は正しかった。


「か、らだ。動かすのだるぅうう……」

 

 軽く熱中症である。

 眠気もあるだろう。だが、身体は全体的にだるおもで、何だか動く気になれない。喉はカラッカラだし、ついでに夜でもないのに星が見える。おそらくこの星は他の人間には見えないヤツだ。そう考えると、少しばかりお得な気がしてくるが、どちらにしろ早めに水分を補給しなければ。シャツも汗でぴったり張り付いている。何なら少し日光で乾いてきているくらいだった。どっちだ。


「でも、だるいんだよなぁ」


 起き上がれないわけではないだろう。ふんぬっ、と力を込めれば、おそらくいける。が、直後に視界の中のきらきら星が増えて今度こそ意識を失ってしまう気がした。なので、動けない。

 上半身を起こさなければ、いずれ倒れる。しかし、無理やり起き上がっても昏倒(こんとう)してしまいそう。この状況はつまり。


「僕の人生、詰んだか〜」


 享年(きょうねん)十二歳(じゅうにさい)宮城(みやぎ)登笈(とおい)、ステンネル公爵家(こうしゃくけ)別邸(べってい)の庭にて死亡。死因は水分不足による熱中症。といったところか。

 そんなことを想像していると、いきなり視界から太陽が消えた。日陰。ではなく、バケツだ。そんでもって、そのバケツが一瞬でくるりとひっくり返り、大量の水が滝のように顔に落下してきた。


「———ぶへっ。ゲホッ、えほっ!!」


 鼻から、口から、少しだけ耳に。色々なところで水を吸収して、色々と咳き込む。鼻の中の水をちーんと出しつつ、また咳き込む。目元の水を拭いながら、もう一度咳き込む。そんなこんなを数十秒続けて、ぱっちり目を開けた時には、なんとお星様がいなくなっていた。

 さらば、輝く星々よ。出来ればもう会いたくはない。


 ———とか何とか考えながら、ゆっくりと身体を起こした。その流れで、


「助かったよ。ありがとう、リア」


 と、バケツ片手にこちらを見下す少女に礼を言った。


「ん。別にいいわ。それより屋敷に帰ったらちゃんとお水を飲みなさいよ。……あと、その土とか泥もなるべく落とすこと」


 リア。と呼ばれた少女は、肩を(すく)めながらそう告げて、そのまま歩いて勝手口の方へ帰っていく。

 彼女の後ろ姿を眺めつつ、青年———登笈(とおい)は、衣服についた草を払って、もう一度大きく欠伸(あくび)をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ