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part3 動き出す者たち

「待ってよ、ニド君。わたし、戦争なんて……イヤだよ?」


 隣で不安そうな表情を浮かべながら、そう言う小桜鏡花。


 僕も戦争をしに行くなんてそんなの御免だ。

 仮にそんなのに巻き込まれたりしたら、僕なんて即死間違いなし。そこらへんの小石より役に立てる気がしない。


 なんで、戦争しようなんて物騒な事を考えているのやら。ニドーの奴。


「いいか、2人とも。戦争をしに行く……というのは冗談で言ったわけではない。

 俺たちは、事実、戦争に向かうのさ。

 ……そう、誰が一番先にこの世界に来た理由を解き明かすか、謎解きの戦争にな!」


 …………はぁ。そういうことか。

 まあ、言葉そのまんまの意味な訳ないよな。中二病こじらせているから、わざわざそんな言い方したわけだ。心配させやがって。

 どうせなら、と、「誰と争うのさ?」なんてノリで言ってみる。


 戦争ってのは争う相手がいるから成立するんだ、変に大げさな言葉を使おうとするのは中二病の悪い癖だな。

 まあニドーの事だから、どうせ「まだ見ぬ敵がどこかにいる!」とか答えてくるんだろう。


「良くぞ聞いてくれた! ーー聞いて驚け、俺たちにはライバルがいる! 

 1人だけじゃなくて、何人も。しかも、強敵と書いてライバルと読むタイプの奴らがな!

 そいつらは転移から1週間もしない内にアンノウンに向かう位だ、相手に不足はないぞ!」


 …………えっ。


 本当にライバルいるの?


「え!? そんなセンパイいるの!?」

 

 僕の心を代弁するかのようにリアクションをとってくれた小桜鏡花。

 その後「先輩と書いてライバルとも読む」なんて、ニドーが追って呟いたような気がしたけど、そんなことは心底どうでもいい。


 一週間もしない内にアンノウンに着いたライバルがいる……? 

 ってことは、ニドーみたいな能力者が他にもいるってこと? 或いは、アンノウンに行く為の、何らかの方法を編み出した人がいるってこと?


 何だそれ、圧倒的敗北感。そして、僕だけ神様に見捨てられている感が尋常じゃない。僕にも異能くれよ。


 一応確認で「やっぱり全部冗談ってオチじゃない?」なんて聞いてみた。あぁ、悲しき抵抗。


「ああ、全部紛れもない真実だ。

 ーーしかし、何故俺がそんな事を知っているのか気にならないか? 気になるだろう?

 俺はそのライバル達のメンバーに誘われたが、全部断ってここにいるんだーー。

 俺には大切な仲間がいるんだ、そいつらを放っておけない。と言ってな!」


 聞いてもいないことまで熱く語ってくれたニドー、清々しいドヤ顔だ。イタイ、臭い、イケメンの無駄遣い、イケボの無駄使い。


 ……でも、ちょっとカッコいいと思う自分もいた。


「うわぁー!! 流石ニドくん! 私たちに出来ないことを平然とやってのける! そこにシビれるあこが……んっ。あ、あこがれるかなー、なんて」


「えっ? 今のって」


 思わず小桜鏡花のセリフに反応してしまう。

 今、とある漫画の有名なセリフがちらついた気が……。


 ちらと横目で様子を見てみると、目に見えてわかるほど顔が赤くなって目がきょろきょろしている。

 小桜鏡花……鏡花さんって、普通のイケイケ女子かと思ってたけど、まさか隠れオタ、


「ーーどうしたのエイト君!? エイト君も、かっこいいよ!?」

「へ!? あ、いや、え? あ、ありがとう」

「う、うん」


 明らかにパニクってる気が。こっちもパニクるから勘弁してほしい。いや、元よりその姿を見るだけで心臓はバクバクになるんですけども。

 

「おい、2人とも急に赤くなってどうしたんだ。熱を操る異能にでも目覚めたか?」


 それだったら良かったのに。ただ羞恥心が熱暴走しているだけです。

 「何にもないから気にしないで気にしないで!」と言いながら、鏡花さんがぶんぶん手を振っている。

 一応、僕も合わせて首肯しておいた。


「そうか、なら話を進めるぞ? とにかく俺たちにはライバルがいるんだ。

 チームアルタンは、そいつらよりも先に謎を解明する。それが、プロジェクト・ラグナロクだ。

 どうだ、俺たちで、やって見ないか?」


「うん!! めっちゃ楽しそう! 小桜鏡花、大賛成でーす!」


 鏡花さんは即座にそう答えた。

 僕は……即答はできない。


 ライバルがいるっていうのは、張り合いが出ていいかも知れない。ただ、その競争相手がどんな奴なのか知っておきたいところだ。

 異能使えるような奴だったら、敵に回したくないし。

 そんな奴に目をつけられる事になるなら、家で引きこもってた方がいいかも知れない。


「ライバルが頭のおかしいヤツとかじゃないなら、僕も賛成かな。そこらへんどうなの?」


 と聞いて見て、


「……あー、まあ、大丈夫だ。競争相手だからって殺しにくるような連中ではないさ」


 と、最初、微妙に間が空いた気がしたのは気のせいか……?



 ……まあ、いいか。同じく転移した仲間同士、命に関わるようなことはしてこないだろうし。


「分かった。その話、乗った」


 それに、僕はやっぱりアンノウンに行って見たい。その気持ちの為なら、多少のリスクくらい背負わなければ。

 

「よしきた! そうと決まれば、すぐ移動だ。もう、準備は整っている」


「「え?」」


 急に、僕と鏡花さん、そしてニドーの足元が光りだす。

 青い光は不思議な模様を浮かび上がらせながら、まるで魔法陣のような形になって、その光を強くしていく。

 

「ーー転移邂逅コンフューズ


 いま、なんて? 


 そう問う間もなく、激しい光が体を包み込んだーー。


***


 時は、矢島英徒、暁二堂、小桜鏡花ら3人が、アンノウンに到着する少し前にさかのぼる。


 アンノウンに存在する三大国家の1つ、シルルトリア連合国では、国で最も位の高い騎士達が集まる会議が執り行われていた。

 中央議事堂にある会議室の中、純金で出来た飾りがふんだんに施された円卓を、4つの椅子が囲うように配置されている。

 滅多に使われることのない1つの空席を除き、3つの椅子には、思い思いに腰掛ける『星将』達の姿があった。


 議題は『レネゲイド』について。

 レネゲイドーーすなわち異世界からの転移者について、彼ら彼女らは話し合っているのだ。

 

「あーっ、たく。カッタリィな! レネゲイドは資源化ァ! それでいいだろうが! 大昔からそうしてきただろ!!? だってのに、なんで今になって扱いを変えようなんて言いだすんだテメェらは」


 『赤炎星せきえんせい』の称号を持つ精悍せいかんな大男、ゴルアド・サウスタリアは、豪奢ごうしゃな飾り付けが施された机に容赦なく足を乗せながら大声を上げた。



 ーー赤炎星、ゴルアド・サウスタリア。

 スキンヘッドの頭は傷だらけで、身につけている真っ赤な鎧には巨大な3本の爪痕が走っている。

 彼は、今も傍に置いてある2メーター近い剛斧の柄を、常に握り締めて、決して離したことがない。

 人々はゴルアド・サウスタリアを、戦いを愛する星将と謳った。

 


 そんな彼は思う。この国において、レネゲイドはいつの時代も変わらず資源化してきたのだ。それを何故、今更変える必要があるのか、と。


 レネゲイドの持つ巨大な魔力炉心、そして神の加護を受けた強力な肉体は、非常に質が良い。

 見つけたらすぐに捕らえて、加護と魔法を収穫したら、奴隷に落として働かせ続ける。

 男でも女でもほとんどが美貌を兼ね備えているから、体が動かなくなっても、他国の好色家に輸出すればいい資金にもなる。


 レネゲイドは、まさしく至れり尽くせりな理想的資源だ。


 だというのに他の星将は、これからはレネゲイドを保護する時代だ、などと言うのだから、ゴルアドには理解できなかった。

 レネゲイドと戦いたくないだけなんだろう腰抜けが! と、何度内心叫んだことだろうか。


 とある星将に影で脳筋と蔑まれる彼にとって、こういった話し合いはまさしく苦手分野であった。



 そんな彼に、『青水星せいすいせい』の称号を持つ細身で眼鏡を付けた男、ウルスラ・ノースタリアは苦言を呈した。


「ゴルアド、机に足をかけるな。貴様は星将に相応しい振る舞いというものが全く身に付いていないようだ。それに加えて、現状を微塵みじんも理解できていないとは救い様がない。

 何をしても見苦しいのだから、黙っていてくれないか?」



 ーー青水星、ウルスラ・ノースタリア。

 白い髪は腰まで伸びて、青いローブの美しい花の紋様と調和している。

 眼鏡、イヤリング、ネックレス、腕輪。身につけた大量のそれらは、彼自身が開発した魔道具の数々であった。

 人々はウルスラ・ノースタリアを、知識を愛する聖将と謳った。

 

 ウルスラは忌々しそうな視線をゴルアドにぶつける。

 間髪入れずに大声が上がった。


「見苦しいだァ!? レネゲイドの資源化を止めようとしてるお前の方がよっぽど見苦しいわ! このバカ! ハゲ!」


「何を言うか! バカもハゲも貴様だろう!? ……ああ、クソ。これだから低脳は嫌なんだ。黙ってボクの命令を聞けば良いものを……。最近部下も言う事聞かないし、揃いも揃ってボクの邪魔をーー」


 ゴルアドとウルスラの2人が睨み合う事があれば、


「ふふふっ。そんなに髪を掻きむしっていたら、本当に髪の毛がなくなってしまうかも知れませんよ?

 ウルスラ殿。貴方の白髪は美しいのですから、もっと大切にしなさいな。

 ゴルアド殿も、そんなに眉間に皺を寄せてしまっては、せっかく勇ましい顔が老け込んでしまいますよ?」


 『緑風星りょくふうせい』の称号を持つルキノ・イースタリアは、普段と変わらぬゆったりした優しい口調で宥めるのだった。


 ーー緑風星、ルキノ・イースタリア。

 華やかな髪留めで1本に束ねられたダークブラウンの髪。戦闘用に裾が短くなっているとはいえ、防具としては心許ないドレス。

 気品に溢れる彼女は、戦うための道具を好き好んで身につけることはなかった。

 人々はルキノ・イースタリアを、平和を愛する聖将と謳った。


 ルキノは穏やかな微笑みを浮かべながら語り出す。


「それにゴルアド殿。ウルスラ殿は愚か者ではありません。ここ数日の間にレネゲイドの数が急増していて、このままだと世界のバランスが崩壊しかねないのです。

 ……それを防ぐために、ウルスラ殿はレネゲイドの保護を提案しているのですから、決して侮ってはいけませんよ?」


 いつの間にか、喧嘩して睨み合っていたはずの2人の視線は、ルキノに釘付けになっていた。


「あァ? ……ったく、ルキノちゃんに言われちまったら何も言えなくなっちまうっての……。

 悪かったなァ! ウルスラァ、テメェはハゲじゃねえよ」


「謝るべきはそこではない…………!! まあいい、ルキノ氏の顔に免じて、ここは引き下がろう」


「お前ェ! ルキノちゃんの顔がカワイイから許すのか!? 俺が謝ったから引き下がるんじゃねェのかよ! この薄毛!」


「顔に免じて、とはそう言う意味ではない! それに、薄毛もハゲも変わらん罵倒だろ!! あぁ…………このバカの相手をしていたら日が暮れてしまう。髪の毛と一緒に口もなくなってしまえばいいのに……」


 会議というには緊張感が欠け、一見、ただ3人で談笑しているようにしか見えない会議だが、




 ーーその空気が激変する時は、突然、訪れた。

3/8 加筆修正(星将達の描写を追加)

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