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元勇者と敵幹部が駆け落ちした隠れ家で、生まれる実家を完全に間違えた赤ん坊の受難  作者: ペクチン21字


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8/11

第8話:ママの笑顔と、お漏らし上等の限界突破特訓

翌日。お日様がパッと昇ると同時に、私はおむつの上からしっかりズボンを穿き、裏庭へと這い出していた。

今日の私の横には、頼れる相棒のシア。そして――なぜか「愛娘の特訓だから」と最高に気合を入れまくり、現役時代すら超越したような、黒いエナメル革と際どい紐、そして大量の鋭利な金属トゲに彩られた、破壊的かつ過激すぎる衣装に身を包んだリリスの姿があった。布地より露出している面積の方が圧倒的に多く、もはや何の防御力もない。パパのレオンにいたっては、大量の予備のおむつを抱えたまま、顔を真っ赤にしてフリーズしている。

「さあ天使ちゃん、ママの特訓講座の時間よ! 今日は限界まで出し切るのを、ママがちゃーんと見届けてあげるからね!」

聖母のような満面の笑みだが、格好が不健全すぎて放たれるオーラは完全に悪の女幹部のそれである。

(昨日の今日でまたやるなんて我ながら執念だけど、ママの格好がガチすぎて色んな意味で直視できないわ! 早くこのちっぽけな魔力タンクを大きくして、あっちの意味でも自立してやるんだから!)

「お嬢様、本日の三号機のベース、用意できました!」

シアが誇らしげに差し出してきたのは、昨日作った四足歩行の泥人形をさらに改良したものだ。旋回するときの横方向のねじれに耐えられるよう、関節にあたる部分を少し太く補強してある。

「シア、ありがとう。……よし、やる」

私は三号機の前に座り直し、小さな両手をかざした。

お腹の奥の温かい感覚を引き出し、細く、均一に、泥の身体の中へと魔力を流し込んでいく。

じわりと三号機が光を帯び、のっしのっしと裏庭の地面を踏みしめて歩き出した。

(ここからよ。左へ……ゆっくり、曲がって……!)

私が意識を集中すると、三号機は左の足を引いて、ぐっと身体を旋回させようとした。昨日、泥の強度が足りずにボロリと崩れてしまったあの瞬間だ。

けれど、今回は関節を太くしたおかげで、泥の身体はねじれの負荷に見事に耐え、くるりと綺麗に一回転してみせた。

「あ、歩いて回ってます! 大成功です、お嬢様!」

「あらあら、構造のバランスが素晴らしいわ! 天使ちゃん、やっぱり天才ね!」

シアと、動くたびに金属の鎖をジャラジャラと妖しく鳴らすリリスが拍手をしてくれる。

前世の陶芸で培ったバランス感覚が証明されて嬉しいけれど、今日の真の目的はここからだ。

「ママ。わたし、もっと、だす」

「ええ、その意気よ! さあ、人形の動きを維持したまま、お腹の奥の魔力をぜーんぶ絞り出しなさい!」

ママの掛け声に背中を押され、私はお腹の奥の蛇口を全開にした。

指先から、文字通り魔力がドバドバと流れ出していく感覚がする。

一歩、二歩、三歩。三号機はこれまでにないほど力強い足取りで、裏庭の草むらを猛ダッシュで進み始めた。

(あ、きた……!)

一分も経たないうちに、恐ろしいほどの倦怠感が一気に押し寄せてきた。

頭がギチギチと痛み、視界の端がみるみる真っ暗になっていく。お腹の奥が完全に空っぽになり、身体のすべてのエネルギーが吸い出されている感覚。

それと同時に、下半身の堤防がじわじわと緩んでいく、あの恐怖の感覚がやってきた。

(くっ……やっぱりこれ、セットなのね……!)

思わず魔力を止めてしまいそうになったその時、すぐ横からママのよく通る声が響いた。

「ダメよ、天使ちゃん! そこで怖がってブレーキをかけたら、器は広がらないわ! 身体の感覚なんて気にしなくていいから、最後の一滴まで私にぶつけるつもりで出し切りなさい!」

(っ、その過激すぎる格好のママに『出し切れ』って言われると、別の意味でブレーキがかかりそうなんですけどーーー!? でも……逃げないわよ!!)

ママの檄に煽られた私は、プライドを最後の最後でかなぐり捨て、お腹の底に残った最後の一滴まで、魔力を力任せに絞り出した。

「お嬢様、もう十分です! お顔が真っ白に……あッ!」

「リリス、やっぱり漏らして白目むいてるって!! あと服!! 服が気になって集中できない!!」

ラグのない見事な「失禁・即・気絶」のコンボを決めながら、私の意識は暗転した。

けれど、倒れる寸前の私の視界には、主人の魔力を過剰に注がれて、ものすごい勢いで裏庭の柵を突き破っていく三号機の勇姿が、はっきりと焼き付いていた。

「……はっ!」

跳び起きると、そこはまたしても我が家のベッドの上だった。

身体はすでに綺麗にリセットされている。羞恥心は、もう「必要経費」として処理することにした。

「お嬢様! 気がつかれましたか!」

ベッドの横で、シアが目を輝かせて待っていた。

「シア……私、がんばった」

「はい! 素晴らしかったです! 倒れられた後、あのお人形は裏庭の端の柵を粉々にするまで走り続けていました!」

「あら、天使ちゃん。さっそく良い顔をしているわね」

部屋のドアを開けて、ママがクッキーの乗ったお皿を持って入ってきた。服はさすがに普通のワンピースに着替えたらしい。心底安心した。

「ママ。わたし、からっぽ、した」

「ええ、見ていたわ。初めての本格的な特訓なのに、ママの指示通り最後まで逃げずに絞り切るなんて、本当に感動しちゃった。どう? お腹の奥をよーく意識してみて」

ママに言われて、私はおへその下あたりに意識を集中させてみた。

すると、確かに不思議な感覚があった。昨日、初めて気絶した後に目覚めたときよりも、お腹の奥の空間が、ほんの少しだけ……本当に指先ひと節ぶんくらいだけど、広くなっているような気がしたのだ。

(あ……本当に、ちょっとだけタンクが大きくなってる……!)

気のせいかもしれない。けれど、確実に手応えがあった。

「よし、この調子で明日もママと一緒に『からっぽ』にする特訓、頑張りましょうね!」

満面の笑みで告げるママに、私は内心で(ヒエッ……明日はさらに露出が増えるんじゃ……)と引きつりつつも、小さく頷いた。

お漏らしと気絶のペナルティは相変わらず最悪だけど、頼れるママという最高の(そして色んな意味で刺激が強すぎる)トレーナーを得て、私の「モノづくりの道具」は確実に強化されようとしていた。

「シア。明日、また、やる」

「はい、お嬢様! お着替えはいくらでもあります!」

こうして、お色直し(限界突破)したママが加わった、前代未聞の「お漏らし上等」な限界突破特訓が、本格的に幕を開けるのだった。

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