第6話:その日のうちのリベンジ
(面白いじゃない。一筋縄ではいかないからこそ、職人は燃えるのよ)
大泣きした涙をゴシゴシと拭った私は、失敗した土の山を前にして、すぐに次の行動に移っていた。
日を改めるなんて気が長いことはしていられない。職人の熱が冷めないうちに、今ある素材で次の手を打つ。それが前世からの私の流儀だ。
「シア。もう一度。粘土、こねる」
「……! はい、お嬢様!」
私の不屈の瞳に圧倒されたのか、うさぎの少女シアは頼もしく笑顔で頷き、まだ裏庭に残っていた綺麗な土に素早く手を伸ばした。
それを見ていたレオンとリリスは、目を丸くして顔を見合わせている。
「おいリリス、うちの天使ちゃん、泣き止んだと思ったらもう次を始める気だぞ……」
「なんてタフな精神力かしら! 失敗を恐れずにすぐ挑戦するなんて、やっぱり大物の器だわ!」
後ろの親たちがまた何か騒いでいるが、今の私には彼らを見ている余裕はない。
(よし……さっきの失敗の分析よ。ただの土を盛り上げただけじゃ、私の魔力の流れと、動いた時の自重に耐えきれずに自壊しちゃった。なら、形状の工夫が必要ね)
2歳児の私には複雑な構造を作る筋力はない。
けれど、前世の知識がある。前回は人間の形(土偶)にこだわったから、細い足に負荷が集中して折れたのだ。ならば、構造的目を引くもっとも安定する形にすればいい。
私はシアに「ここ、太く」「ここ、足、四本」と短い言葉で指示を出した。
シアは「四本足、ですか? わかりました!」と長い耳を揺らしながら、私の意図を完璧に汲み取って泥を足してくれる。
そうして出来上がった二号機は、下半身をどっしりと太くした、安定感のある「四足歩行の獣のような形」だった。よし、これなら絶対に自重では潰れない。
「よし。動かす」
私は完成した泥の獣の前に座り直し、小さな両手をかざした。
(今度は焦らない。魔力は細く、均一に。まずは中心の背骨になる部分にだけ、そっと魔力を滑り込ませるの……)
気合を入れ、体の中の魔力を引き出そうとした、その瞬間だった。
(……あれ? 力が、出ない……?)
指先からほんのりと温かい魔力を出そうとしただけなのに、体の奥底がすっからかんに乾ききっているような、強烈な違和感に襲われた。無理に絞り出そうとしたせいで、急激に頭がクラクラと視界が歪み始める。
(あ、しまっ……。さっきの1回目で、2歳児の私のちっぽけな魔力は、もう全部使い果たしてたんだ……!)
いくら中身が大人で知識があっても、肉体はただの幼子。一日に何度も魔法を使えるほどの魔力タンクなんて、今の私にはまだ備わっていなかったのだ。
「あ、う……」
声にならぬ声を上げた瞬間、急激な睡魔と倦怠感が襲いかかってきた。
限界を超えて魔力を消費したことによる、完全な魔力枯渇(MPゼロ)。
立っていられなくなり、私の視界がぐにゃりと傾く。それと同時に、限界を迎えた幼い身体の自律神経が完全にストライキを起こし、下半身の堤防があっけなく決壊する感覚がした。
(嘘、ちょっと待っ――)
抵抗する間もなく、私はお漏らしをしながら白目をむき、そのままパタリと地面に倒れ込んでしまった。結局、二号機はピクリとも動かすことができなかった。




