第15話:スクラップ・アンド・ボーン!
シアがどこからか集めてくれた、歪んだ鉄鍋や錆びた釘などのボロ鉄。
私は裏庭のシートの上にそれらを並べ、じっと睨みつけていた。
(力任せに魔力を流すと弾かれるか、爆発する。なら、最初から土と混ぜ合わせて、不純物を徹底的に削ぎ落とした綺麗な結合から試したらどうかしら……?)
私はボロ鉄の山に、庭の白土を被せた。中心には、あの不思議な青い石をハメ込む。
(私の魔力を青い石に預けて、そこから波紋みたいにじわじわと全体を馴染ませていく……溶け合え、溶け合え……!)
お腹の奥の魔力タンクをジリジリと削りながら、不純物を排出し、土中のケイ素と鉄の成分を高密度で結晶化させていく。
青い石が「カチ、カチ……」と、規則正しい音を立てて明滅し始めた。
(あ、馴染んでる! 素材がどんどん純化していくわ!)
手応えを感じた私は、思わず無意識に「相棒」となる形を思い描いていた。
――カチカチカチカチ!
突如、青い石の明滅が激しくなった。
シートの上の素材が、まばゆい光を放ちながら一気に収縮し、滑らかな流線形へと姿を変えていく。
完成したのは、ゴミの山から生まれたとは到底信じられないほど、美しく洗練された仔犬だった。
ボディは、土の成分が極限まで圧縮・洗練された「上品な硬質セラミックのような、光沢のある純白」。その隙間から覗く関節部分には、不純物を完全に抜いて鍛え上げられた「鈍く気品ある輝きを放つ黒鉄」が精密なパーツのように噛み合っている。
瞳の代わりに埋め込まれた青い石は、流れるような美しいラインでボディに溶け込み、静かに明滅していた。
「……うそ、綺麗」
呆然とする私の目の前で、その白い仔犬が、首を傾げてこちらを見た。
駆動音は一切しない。静寂の中で、トコトコと滑らかに四肢を動かし、私の足元に駆け寄ってくると、冷たくて心地いい鼻先を私の靴にちょんと重ねた。
『……ワンッ!』
透き通った、どこか鈴の音のように綺麗な鳴き声。
(う、動いた……!? 私、ただの置物を作ったつもりだったのに……!)
どうやら、青い石の特性に私の魔力が過剰に反応し、洗練された結晶の隙間に、独自の「擬似神経(回路)」を形成してしまったらしい。
前世のどんなロボットとも違う、魔法とクラフト技術の結晶である「魔導芸術品」。
「お、お嬢様……? 今、綺麗な声が……って、なんですかその美しい生き物は!?」
おやつを持って庭に出てきたシアが、皿を落としそうになりながら釘付けになった。
仔犬はシアを振り返ると、芸術的なフォルムの尻尾をパタパタと振り、地面に残っていた鉄クズを一瞬でスキャン。次の瞬間、その鉄クズを自分の体内にシュッと吸い込み、一瞬で純化された「小さな綺麗な鉄のサイコロ」に変えて、シアの足元にコロンと転がした。
『キュイッ』
「ひゃっ!? 鉄の塊が、お留守番の芸を……? いえ、これ、素材を精製したのですか……?」
「シア、ちがうの。これ……わたしが、つくった……かも」
ヘトヘトになって地面に座り込んだまま、私は苦笑いするしかなかった。
鉄を加工する練習をしていたはずが、まさか「素材の自動精製機能付き・自律AIゴーレム」を生み出してしまうなんて。
失敗から生まれた、あまりにも美しく奇跡的な大成功。
この日、我が家に新しく、真っ白で最高に賢い家族が加わったのだった。




