第88話 「見えなかった顔」
黒き滅びが迫るーー
世界が削れていく中で
キリカは歩いていた…
ただ真っ直ぐに。
止まらないーー
止まれないーー
キリカ
「……はぁ」
小さく息を吐く。
「怖いなぁ……やっぱり」
足が震える…
それでも進む。
その瞬間――
ーー キィィィン… ーー
視界が歪むーー
世界が滲むーー
そして…
“そこ”
…に立っていた。
懐かしい場所…
見なれた公園…
キリンのアーチ……
夕焼けーー
ブランコが揺れている。
キリカ
「……ここ」
足が止まるーー!?
知っている。
忘れるはずがない。
その奥に――
一人の背中。
キリカ
「……っ」
息が詰まるーー
その背中は…
振り返らない。
分かっている……
誰かなんて。
それでも――
顔が見えない…
キリカ
「……ねぇ」
声をかける。
「なんで……」
一歩、近づく。
「なんで出ていったの」
声が震える…
「私たちのこと……嫌いになったの?」
返事はないーー
ただ背中があるだけ。
顔は見えないーー
ずっと…
見えないまま。
キリカ
「……ねぇってば!」
さらに近づく。
手を伸ばすーー
触れられない。
距離が縮まらないーー
「なんで……!」
声が強くなるーー
「なんで顔見せてくれないのよ!!」
その瞬間――
空気が止まる。
キリカの呼吸が荒くなる。
心臓が早くなる。
視線が揺れる。
そして――
気づく。
キリカ
「……違う」
小さく呟く…
「違うよね……」
手が震える…
「見えなかったんじゃない」
一歩、踏み出す…
「私が……」
唇を噛む。
「見ようとしてなかったんだ」
静寂。
風が吹き…
夕焼けが揺れる。
キリカ
「……怖かった」
涙が溢れる。
「本当の顔を見るのが」
もう一歩、近づく。
今度は――
距離が縮まる。
キリカ
「もし……」
声が震える…
「本当に私たちのこと嫌いだったらって…」
手を伸ばす。
「そう思ったら……」
「見れなかった」
指先が触れる…
その瞬間――
“顔”が現れるーー
優しい目。
穏やかな笑顔。
キリカ
「……あ」
息が止まる。
それは――
大好きだった父の顔。
キリカ
「……なんだ」
涙が溢れる…
止まらない。
「ちゃんと……笑ってるじゃん」
父は何も言わない。
ただ――
そっと手を伸ばしーー
キリカの頭に触れる。
その温もり…
忘れるはずのないもの。
父
「ママとコトを頼むぞ、キリ」
優しい声ーー
あの日と同じ。
キリカは泣きながら笑う。
キリカ
「……分かったよ」
「私、ちゃんと前に進むから」
涙を拭う。
「コトちゃんは――」
少し照れたように笑う。
「私が守るから」
父は何も言わない…
ただ微笑む。
その姿が――
ゆっくりと光になるーー
消えていくーー
キリカ
「……ありがと」
小さく呟く…
その瞬間――
世界が弾ける。
――現実
黒き滅びが迫るーー
【セブンスピラーΩ】
だがキリカは止まらない。
顔を上げるーー
涙はもうない。
その目は――
まっすぐだった。
キリカ
「……行くよ」
静かに足を踏み出す。
その瞬間――
体の奥で何かが変わる…
ドクン…
ドクン…
心臓が高鳴るーー
熱が走るーー
だがそれは――
激しくない。
静かに…
確かに…
満ちていく。
光が溢れるーー
優しい光。
暖かい光。
眩いほどの光がキリカを包むーーー
ルディ
「……キリカ」
コトハ
「……キリちゃん」
涙が溢れる。
リント
「キリ……」
しかし…
キリカは振り返らない。
ただ前を見るーー
セブンスピラーΩを!!
キリカ
「――パパ……約束、守るよ!!」
その言葉と共にーー
光が静かに広がるーー
黒の波を押し返すようにーー
だが消えないーー
滅びの時は刻一刻と迫る。
それでも――
“抗っている”
『何かを守る強い決意』
それを瞳に宿したーー
キリカの姿がそこにあった。
キリカ
「……待ってて」
小さく呟く。
「今、道作るから」
その一歩はーー
もう迷わない!
過去を越えた者の一歩。
――見えなかったその顔は
ずっと傍にあった…
ずっと愛してくれていた…
そして……
何より…優しかった。
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