第6話 「それでも笑う」
少し肌寒い夕暮れ。
駅前。
壊れた車ーー
逃げ惑う人々。
その中心でマリスが吠える!
「グオオオオ!!」
巨大な腕がーー
逃げ惑う人目掛けて振り下ろされる。
ドンッ!!
衝撃の寸前、
その腕が止まる!
止めていたのはリントだった…
しかし衝撃で地面が割れる。
キリカが叫ぶ。
「リント!!」
リントは振り向かない。
「下がってろ」
マリスが笑いながらーー
絡みつくような声で呟く。
「見つけた」
「リント」
---
「Dが…」
「お前を欲しがってる」
リントは肩を回しながら鼻で笑った。
「またか……バカの一つ覚えかよ」
「まったく興味ねぇな」
マリスが笑みにも似た…
歪んだ表情で続ける。
「逃げられない」
「お前は」
「研究素材だ!」
リントはため息をつく…
「うるせぇ」
次の瞬間!
雄叫びと共にーーマリスが突進。
リントが消える。
「遅い!」
後回し蹴りーー
ドカッ!!
マリスが地面に叩きつけられるーー
しかし…すぐに立ち上がり
腕をムチのようにしならせる。
刃のような骨から
繰り出される斬撃ーー
リントは紙一重で避ける。
コトハが震える。
「速い…」
キリカが呟く。
「リント」
リントが笑う。
「心配すんな」
拳を固める。
「今日はちょっと機嫌いいからな」
黒い影が溢れ、静かに身体を包み込んでゆくーー
「顕化」
装甲を纏い空気が震えるーー
…!!!
二人が同時に動く。
衝撃。
拳。
蹴り。
マリスが建物ごとリントへ
突っ込むがーー
リントは素早く躱し
腕を掴んでそのまま叩きつける。
ドォン!!
地面が砕け倒れたまま
マリスが怒り狂う。
しかしリントは笑っていた。
「終わりだ!」
一瞬で距離を詰めーー
拳に顕化エネルギーを収束させる!!
その瞬間――
マリスが笑った…!?
「……データ……取得……完了」
リントの眉がわずかに動くが…そのまま撃ち抜く!
「…チッ」
ドォォン!!!
衝撃波。
マリスの身体が砕け飛ぶ。
そして黒い霧ーー
結晶だけがその場に落ちた。
ーーー
リントが静かに息を吐く…
顕化が解けていく。
足元に転がった結晶は
微かに光を帯びていた。
ピシッ。
細い亀裂が走りーー
そして砕けた。
何も言わずリントは
それを見下ろす。
キリカが駆け寄る。
「すご…」
コトハ。
「リント強すぎ」
リントが笑う。
「まぁな」
ーーー
リントの顔をジーッと…
見ているキリカ…
「ねぇ」
リントが振り向く。
「ん?」
キリカ。
「何でさ…いつも笑ってんの?」
静かな風が吹く
夕方の街…
リントは少し空を見あげーー
そして笑う。
「癖」
コトハ。
「嘘!」
リントは頭を掻く。
「バレた?」
キリカは真剣な顔。
「本当は怖いでしょ」
リントは少し黙り…
そして言う。
「まぁな…」
コトハも黙る。
リントが続ける。
「怖いよ普通に」
キリカが驚く。
「え?」
リントは二人を見る。
「でもさ…」
「怖い顔してたら」
「余計怖いだろ」
少し優しい目ーー。
「……お前らが」
コトハの目が揺れる。
リントは恥ずかしそうに笑う。
「だから笑ってる」
その時…
頭の奥に…
父の声…
『リント…』
『笑っていられるうちはな』
『まだ壊れていない証だ』
リントは小さく呟く…
「……壊れる気しねぇけどな」
軽く言うーー
でも目はちょっとだけ遠い。
キリカが小さく笑う。
「そっか」
コトハ。
「帰ろ」
リント。
「あ~腹減った」
キリカ。
「そればっか!」
三人が歩き出す。
その頃。
遠くのビル屋上。
黒いコートの男。
スコープを下ろす。
「ターゲット確認」
通信機。
ノイズ混じりの声。
『観測は継続せよ』
『次段階、試験体Bを投入』
男がわずかに笑う。
「了解、Dr.」
通信が切れる…。
男は呟く。
「人間は……実に面白い」
遠くでサイレンが鳴る。
リントはまだ知らない。
自分の戦いが、
“実験”として観測されていることを。
そして…
次の個体がすでにーー
動き始めていることを。
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