第7話 「守るという罪」
週末の昼下がり。
商店街。
悲鳴ーー
「逃げろ!!」
三メートルを超える大型マリスが暴れている。
車を投げる。
ドンッ!!
リントが前に出る。
「キリ、コト」
「避難誘導頼む」
キリカ
「ラジャ!」
コトハ
「任せて!」
リントは首を鳴らしながらマリスの前に立つ。
「さてと…」
マリスが吠えた瞬間ーー
リントに向かって突進。
ドォン!!
リントが両腕でその巨体を受け止める。
「……重いなクソ」
そして…
不適に笑う。
「けど…まだまだだな」
「顕化」
身体より溢れでた影がーー
静かに包み込みーー
黒き装甲へと変貌していく。
リントの連撃ーー
ドドォォォン!!
マリスが吹き飛び壁を破壊する
瓦礫の中から立ち上がるが
…その瞬間!
リントは消えるーー
背後から重い蹴りの一撃!!
ドゴォッ!!
さらにトドメの渾身の一撃!!
黒い霧が舞うーー
地面に落ちる結晶。
静寂が辺りを包む…
キリカ
「相変わらず派手…」
コトハ
「終わったね」
リント
「いや…」
左の路地の奥ーー
小さな影…!?
ゆっくり歩いてくる。
…!?少女。
六歳くらい。
裸足。
ワンピース。
だが瞳が黒い…
体が歪む。
骨が伸びる。
黒い腕。
少女マリス!?
コトハが息を呑む。
「……子供」
少女が呟く。
「お…かあ…さ…ん」
リントの足が止まる。
キリカ
「リント…」
リントに近づく少女の腕が刃へと変わるーー
でも…
涙を流しながら進むその姿は
苦しんでいる様にも見える。
「さむ…い……よ」
リントの顕化が…不安定に揺らぐ……
拳が震え動くことができない。
その瞬間!
少女がリントの方へ跳ぶ。
キリカ
「リント!!」
リント――動けない。
キリカが叫ぶ!!
「あんたが守るって
言ったんでしょ!!」
「男なら自分の言ったことくらい
守りなさいよ!!」
その言葉が--
何より胸に刺さる。
少女が再び暴走するーー
まるで矛盾するかの様に…
泣き叫びながら……
リントは静かに目を閉じた。
父の声が脳裏を過る…
『人間…笑っていられるうちはな』
『まだ壊れていない証だ!』
『だから、どんな世界でもいつも笑っていられる男でいろよ』
リントは小さく呟く…
「……ごめ…ん…な」
「……顕化」
今までで一番静かで淡い光がリントの身体を優しく包み込む--
次の瞬間。
リントが消えるーー
少女の背後!!
優しく…しかし正確な一撃。
トンッーー
衝撃は最小限。
黒い霧が弾ける…
少女はその場に倒れ--
人間の姿に戻った。
呼吸……ある!?
コトハ
「……生きてる」
キリカ
「マリスが……剥がれた?」
リントは少女の腕に浮き出たものに気付くーーそこには
【黒い紋章】
だが…どこか不完全なその紋章は
リントの顕化紋と…
わずかに似ている。
リントの目が細くなる。
「……顕化紋じゃない」
遠くからサイレンの音が近づいてくるーー
少女が薄く目を開け…
リントを見つめる。
そして……掠れた声で一生懸命伝えようとしている。
少女
「お…にい…ちゃん」
一瞬!リントの呼吸が止まる。
少女が続ける…
「こわ…く…なかっ…たよ」
リントの顔から笑顔が消え--
ほんの一瞬ではあるがーー
その目が揺れる。
その瞬間…少女は意識を失った。
救急隊が駆け寄り運ばれていく。
その光景を見つめながら
リントは動けなかった…
キリカが横に立つーー
が何も言わない。
コトハもただ隣にいる。
リントはいつものように笑おうとするが……口元が少しだけ震える。
一滴。
地面に落ちるーー
誰にも気付かれぬよう背中を向けた。
しかし二人は気づいている。
でも……言わない。
コトハがただ小さく声をかける。
「……笑わなくていいんだよ」
リントは一瞬固まるが…
無理やり笑う。
「何のことだよ」
でも…
その目は、少しだけ赤く滲んでいた。
夕日が沈む中リントは空を見上げ。
そして--
いつもの顔に戻る。
けれど。
その笑顔は少しだけ…
重かった。
その時――!!
リントの腕の紋章が
【ドクン…】と…
一度だけ脈打った。
……少女のそれと
同じように。
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