第63話 「届いた拳」
キングピラー【上層】ーー
【D】のフロア
第一ノ扉【Destroy】
静寂ーー
拳が――
触れた。
ほんのわずかーー
だがーー確かに。
リント の拳が…
ゼノン の頬をかすめた。
その瞬間――
ゼノンの髪がわずかに揺れる。
沈黙…
リントの目が細くなる。
「……当たったな」
血だらけの顔で笑う。
ゼノンは動かない。
ただ静かにリントを見ているーー
「三秒」
ゼノンが呟く。
「その檻の中で」
「初めて触れた」
ルディが目を見開く。
「今の……」
キリカも息を呑む。
「リントの拳が……」
コトハの声が震える。
「届いた……」
ゼノンがゆっくり息を吐く…
そして――
一歩下がった。
リントが眉をひそめる。
「……は?」
ゼノンが言う。
「もういい」
沈黙。
リントが笑う。
「逃げんのか?」
ゼノンは首を横に振る。
「違う」
静かな声。
「ここまで来れたなら」
「一応…」
「【D】と戦える」
四人が固まるーー
キリカが怒鳴る!
「はぁ!?」
「最初からそれが目的かー!」
ルディも睨む。
「回り…くどい……」
ゼノンは答えないーー
ただ天井を見上げる。
「ジンさん」
四人が顔を見合わせる!?
「これで」
「良かったか?…」
静かな声。
「一応」
「【D】と戦えるようには」
「しといた」
「後は」
「リント次第だけどな……」
リントが頭を掻く。
「何だよそれ…」
「意味分かんねぇ」
ゼノンは背を向け歩き出す。
リントが呼び止める。
「おい!」
ゼノンは止まらないーー
リントが叫ぶ。
「ゼノン次会ったら…」
「ぶっ飛ばすからな!!」
ゼノンは振り向かないーー
ただ小さく笑った。
「出来るならな…」
その姿は…
通路の闇に消えていった。
ーーー
そして――
リントが床に座り込む。
「クソ……完全にやられた」
「完敗だ完敗!」
キリカが怒る。
「何よあいつ!!」
ルディが腕を組む。
「敵なのか…味方なのか……」
コトハが小さく言う。
「でも……」
「悲しそうだった」
リントが笑う。
「知らねーよ」
「とりあえず」
「強すぎだろあいつ!」
キリカが蹴る!
「アンタが突っ込みすぎなのよ!」
ルディがため息をつく。
「また…始まった」
「まったく……」
コトハが笑う。
四人の声が
主なきフロアに響く。
その頃――
キングピラー外。
夜風が吹くーー
黒いコートが揺れる。
【D】
破壊のヴァルス
【ゼノン】
ゼノンは空を見上げるーー
静かな声。
「ジンさん……」
「これで」
「少しは」
「あんたに恩返しができたかな」
遠い星の瞬きを見上げーー
ゼノンが目を閉じる。
そして…
小さく呟く。
「ヒカリ……」
「ルナ……」
遠い記憶ーー
血。
泣き声。
消えない光景ーー
ゼノンの拳がわずかに震える。
「これで……」
夜空を見上げたままーー呟く。
「お前達も」
「少しは…」
「笑ってくれるか……」
誰もいない空。
ゼノンはーー
静かに歩き出した。
その背中はーー
夜の闇に溶けていった。
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