第62話 「届かない三秒」
キングピラー【上層】ーー
【D】のフロア
第一ノ扉【Destroy】
重い空気。
倒れたままの…
キリカ とルディ。
そして――
血を流しながら立つ
リント。
その前に立つ男。
【ゼノン】
静寂…
リントが首を鳴らす。
「……なるほどな」
拳を握る。
「三秒」
ゼノンは何も言わない…
リントが続ける。
「未来を見てるんじゃねぇ」
「やり直してる」
「気に入らねぇ未来をな!」
ゼノンの目がわずかに細くなる。
「理解は早いな」
リントが笑う。
「説明聞いてりゃ誰でも分かる」
「問題は――」
拳を構える。
「分かってても当たらねぇことだ!」
ドン!!
床が砕けるーー
リントが消えるーー
一瞬でゼノンの懐。
拳ーー全力
――しかし
当たる直前ーー
ゼノンの姿が
すでに半歩横にあった。
拳は空を切る。
リントが舌打ちする。
「チッ!」
蹴り。
肘。
回し蹴り。
怒涛の連撃。
だが――
全部ーー
当たらない。
ゼノンは動かない。
いや――
起こるはずの未来を捨てるように
位置だけが変わる。
ドン!!
ゼノンの拳が
リントの腹にめり込む!!
息が一瞬で吐き出されるーー
リントの体が吹き飛ぶ。
床を滑る。
血が飛ぶ。
キリカが叫ぶ。
「リント!」
ルディが歯を食いしばる。
「クソ……!」
リントが立ち上がる。
ふらつきながらもーー
笑う。
「はは……」
口から血ーー
それでも笑う。
ゼノンが言う。
「終わりか?」
リントが肩を回す。
「バカ言え!」
拳を握る…
「面白くなってきたところだ」
再び踏み込む!
拳。
蹴り。
渾身の一撃。
だが――
また外れる……
ゼノンはーー
すでにそこに居たかのようにーー
位置を変える。
ドン!!
膝がリントの顎を跳ね上げる。
視界が揺れる。
続けて…肘。
リントの体が床に叩きつけられる!!!
静寂…
誰も動けない…
その時――
コトハの小さな声。
「……今」
コトハの瞳が揺れる。
空気がーー
ほんの一瞬だけ
軋んだ。
まるで――
時間が
巻き戻ったようなーー
違和感。
だが…
リントも
キリカも
ルディも
誰も気づいていない…
コトハだけが
それを感じていた!
ゼノンがリントを見る。
「立て」
静かな声。
リントが笑う。
「……うるせぇな」
ゆっくり立ち上がる。
血だらけの顔ーー
それでも笑っている。
拳を構える。
「分かってんだよ」
ゼノンを見るーー
真っ直ぐに。
「三秒」
「その三秒で…」
拳を握る。
「全部やり直してんだろ?」
ゼノンは答えない。
ただ静かに見ているーー
リントが笑う。
「ならよ」
「簡単じゃねぇか」
一歩踏み込むーー
床が砕ける。
「三秒で――」
拳を振り上げる。
「壊せばいい!」
ゼノンの目が
わずかに細くなる。
その瞬間!!…
リントの拳が――
ゼノンの頬を
かすめた!!!
空気が裂けるーー
ゼノンの髪が揺れる。
静寂…
ゼノンが
初めて
足を止めた。
リントが笑う。
「……ほらな」
血を拭う。
「届きかけてんじゃねぇか」
ゼノンの目がーー
わずかに変わる。
その表情は――
初めてのーー
興味。
キングピラー【上層】
破壊を司るーーヴァルス
【ゼノン】
そして…
まだ覚醒していない男。
【リント】
二人の距離は――
わずかーー
三秒。
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