第59話 「邂逅」
重い扉がゆっくり開く。
ゴゴゴゴ……
冷たい空気が流れ出た。
今までの階層とはーー
明らかに違う。
その場にいた全員が理解した。
――ここから先は、別格だと。
長い通路。
黒い床。
高い天井。
まるで城の内部のような空間だったーー
キリカが周囲を見回す。
「……気味が悪いわね」
コトハも小さく頷く。
「うん……」
ルディが静かに言う。
「ここから先…」
「……空気が違う」
リントが肩を回す。
「ま、ここまで来りゃ」
「ラスボスの家みたいなもんだろ」
その時ーー
通路の奥ーー
足音が響いた。
カツ…
カツ…
カツ…
ゆっくりーー
落ち着いた足取り。
現れた男。
黒いロングコート。
鋭い目。
男は静かに四人を見る。
「なるほど…」
低い声。
「お前達か」
キリカの目が細くなる。
「……相変わらずね」
男はわずかに笑う。
「礼儀が足りないな」
リントが軽く手を上げる。
「よぉ」
「久しぶりだな」
男の視線がリントに止まる。
「久しぶりだな」
「リント」
ルディが低く言う。
「最高幹部…ゼノン」
「【D】……」
キリカが続ける。
「ヴァルス!?」
ゼノンは静かに頷く。
「ここまで来るとはな」
「予想より早かった」
コトハが小さく言う。
「やっぱり…」
「ここにいたんだね」
ゼノンは四人を順に見るーー
キリカ。
コトハ。
ルディ。
そしてリント。
「……なるほど」
「確かに少しは成長したみたいだな…」
リントが笑う。
「それ、褒めてんのか?」
ゼノンは答えない。
ただ一歩前に出る。
「だが…」
「ここから先は別だ!」
「ここは、キングピラー【上層】」
「【D】のフロア」
「第一ノ扉【Destroy】!!」
そう言った途端…空気が変わる。
ズン……
見えない圧力ーー
四人の体が重くなる。
コトハが息をのむ。
「何……これ…」
キリカが歯を食いしばる。
「っ……!」
ルディが言う。
「来たか……」
ゼノンの力。
ヴァルスーー
リントの笑顔が消える。
ゼノンが静かに言う。
「これは挨拶だーー」
「立っていられるか?」
圧力がさらに強くなる。
バキッ…
床がひび割れる。
コトハが膝をつく。
「う……」
キリカも片膝をついた。
「くっ……!」
ルディは踏ん張る。
だが身体が歪みきしむ…
ゼノンは静かに言う。
「これが…」
「ヴァルスだ」
そして…
リントを見る。
「リント」
「お前が」
「どこまで進めるのか…」
リントがゆっくり顔を上げるーー
「試してぇって顔だな」
ゼノンは答える。
「門番だからな一応」
そして腕を下ろす。
圧力が消えるーー
四人が息をつく。
ゼノンが言う。
「ここから先は」
「弱者の場所ではない」
黒い力がゆっくり集まるーー
【D】
【破壊のヴァルス】
【ゼノン】
その一歩が床を鳴らす。
「通りたければ」
「力で示せ!」
リントが笑う。
「最初から」
「そのつもりだろ」
ゼノンの口元がわずかに動く。
「当然だ」ーー
静かにゼノンの視線が落ちる。
それだけで――
空気が凍りつき。
音が消えた。
その場の全てが――
ゼノンに呑まれていた。
誰も言葉を発せれないーー
ただ――
それが答えだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
もし宜しければブックマークお願いいたします。




