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第58話 「ジンの遺言」

キングピラー内部【中層】

研究区画ーー



崩れた天井。


壊れた装置。


煙がゆっくり(ただよ)う。



床にはーー

倒れた実験体。



まだ少し興奮醒(こうふんさ)めやらぬ

(たかぶ)った感情の余韻(よいん)が…

コトハの周りに光となり漂っている。



涙を流したままーー

コトハは立ちつくしていた。



キリカが言う。

「……すごい力ね」



コトハは小さく息を吐く。

「私……」


「何をしたの……」



ルディが答える。

「……進化」



リントが笑う。

「いいじゃねぇか」


「優しいお前らしくて」



その時ーー


研究施設の奥。


壊れたコンソール。



ピッ!



機械が起動する!!



コトハが振り向く。

「え……?」



モニターに……文字が流れる。



【研究記録 最終ログ】


  【博士:ジン】



リントの目が止まる。

「……親父」



モニターにーー

映像が映る。



白衣の男。

ジン。


少し疲れた顔。

だが…

優しく笑っていた。



『もしこの記録を誰かが目にしているなら』


『私はもうこの世にいないだろう』



静かな声ーー


リントは何も言わない。



ジンは続けるーー


『この研究施設は』


『マリス機関の中心研究所の一つだ』



コトハが息を()む。



『マリス化は…』


『人間の悪意を利用する力だ』


『怒り』


『憎しみ』


『妬み』…


『そういう感情を集め』


『世界を支配する…』


『それがマリス機関の最終目的だ』



キリカが(つぶや)く。

「やっぱり……」



ジンの表情が変わる。


『だが!』


『感情はそれだけではない』



モニターにーー

別のデータ。


【リベラ】


『人を守りたい想い』


『助けたい気持ち』


『信じたい心』


『善意の感情』


『それもまた…』


『人間の力であり可能性だ!』



コトハの目が揺れる。



ジンは静かに言う。


『私はそれを独自に見つけた』


『感情は…』


『進化する!』



モニターのデータが変わる。



 『悪意』       『善意』


【マリス】      【リベラ】

  ↓         ↓

【アビス】     【リベリオン】

  ↓         ↓

【ヴァルス(悪)】  【ヴァルス(善)】

      ↓  ↓

      【???】



キリカが言う。

「……まだ上があるの?」



ジンは更に続けるーー


『マリス機関は』


『悪意の究極進化を目指している』


『だが私は…』


『善意の究極進化を信じた!!』



そしてーー


ジンの目がーー

まっすぐカメラを見る。


『リント』



リントの体が止まるーー


『お前なら…』


『その先に行ける!』



研究データが表示されるーー


【感情最終進化理論】


【マリス】


【リベラ】


【アビス】


【リベリオン】


【ヴァルス(善悪意完全体)】



そして……


最後の名前ーー



   【 アルカ:Arca 】



コトハが言う。

「……アルカ?」



ジンが静かに笑う。


『感情の完成形態ーー

    善も悪も超越した存在』



リントは黙っているーー



ジンの声が少し優しくなる。


『リント』


『お前は昔から』


『よく笑う子だったな…』



キリカが少し驚くーー



『その笑顔は…』


『いつだって』


『人を守る笑顔だった』



ジンは小さく息を吐く。


『だから私は』


『お前に未来を託す!!』


『世界はきっとお前を試すだろう』


『だが忘れるな…』



ジンは最後に言う。


『感情は…』


『人を壊す』


『だが…』


『人を救うのも』


『感情だ!!』



映像が乱れる。

ノイズーー



最後の言葉。


『どんな…時でも…笑顔を……忘れるなよ……リン…ト』



プツンーー


映像が消える。


研究施設はーー

静まり返る。



コトハが言う。

「アルカ……」


「本当に存在するの……」



キリカがリントを見る。

「リント…」



リントは少し笑った。

「さぁな」


「親父の夢だろ」



ルディがつぶやく。

「……違う」



リントが振り向く。



ルディは塔の上を見る。

「……来る!」



その瞬間ーー



ドォォォォォン!!



研究施設全体が揺れる。


鳴り響くーー巨大な音。



キングピラーの奥ーー

    新しい扉が口を開いた。



キリカが笑う。

「どうやら…」


「呼んでるみたいね」



コトハも立ち上がる。

「うん」


「答えを確かめに」



リントが歩き出す。

「行くぞ!」



研究区画の出口ーー


 その先に待つのはーー


  キングピラー 【上層】



   【D】のフロアーー-



誰も言葉を発しなかったが…


ジンの言葉(いし)は――消えなかった。



ただ――


 その意味だけがーー


   それぞれの心に残っていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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