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第32話 「沈黙する塔」

守護者が崩れ落ちた瞬間ーー



塔の前に(ただよ)っていた重苦しい空気がーー



わずかに揺らいだ。



しばらくの沈黙…



その静寂を破ったのはキリカだった。

「……終わった」


息を整えながら、彼女は剣を下ろす。



コトハは空を見上げた。


先ほどまで不気味に渦巻(うずま)いていた黒雲が、

ゆっくりと薄れていく。

「うん……」



そして。


――ゴゴゴゴ……。



低い地鳴りのような音が響いたーー-



三人が同時に塔の方を見る。


()ざされていた巨大な扉が、ゆっくりと開き始めていた。



リントは眉をひそめる。

「……開いた?」



「守護者を倒したから…?」

キリカが小さく(つぶや)く。



コトハは未来を()るように目を閉じたがーー


すぐに首を振った。

「中は……見えない。でも」


「危険な未来は……今のところ見えない」



——でも、それが逆に不気味だった。


リントは少しだけ黙った。


——本当か?

理由は分からない。


だが…胸の奥がわずかにざわつく。


それでもーー


  「行こう」


自分でも、その言葉の理由は分からなかった。



三人は慎重に塔の中へ足を踏み入れる。



内部は驚くほど静かだったーー


戦闘の(あと)もなければ、マリスの気配もない…


ただ、長い通路が奥へと続いている。



壁は黒い石でできており、

ところどころに赤い光が脈打つように流れていたーー


まるで塔そのものが生きているかのようだ。



キリカが周囲を警戒(けいかい)しながら進む。

「……なんか、思ってたより普通だなぁ…」


「もっと地獄(じごく)みたいなの想像してた」



コトハは小さく(うなず)いた。

「うん。でも……奥に何かある」



三人は通路の奥へ進む。



やがて、広い空間へと出た!

そこで彼らは足を止める。


中央にそびえていたのは――

巨大な柱だった!



天井まで届くほどの黒い柱。


その内部を、赤黒い炎のようなエネルギーがゆっくりと流れている。



ドクン……ドクン……



まるで心臓の鼓動(こどう)のように脈打っていた。



コトハが(つぶや)く。

「……これが……ピラー」



キリカは目を細めた。

「エクリプス・ピラー……」



リントはゆっくりと柱に近づくーー

不思議な圧力がある。


近づくだけで胸がざわつき——

なぜか…壊せる気がした。


だが、その感覚を振り払うように、リントは眉をひそめる。



キリカが剣を抜いた。

「これ…」


「壊せばいいんでしょ?」



——いつも通りの言葉。

でもその声には、わずかな苛立(いらだ)ちが()じっていた。


そう言って柱へ()りかかる。



キィィィン!!



金属を打ったような音が響いたーー

剣は弾かれ、柱には傷一つつかない。



キリカが舌打ちする。

「何これ……(かた)すぎる」



コトハは首を振った。

「たぶん壊せない…」


「守護者を倒すことで……塔は止まる」



!?…その言葉の直後。


ピラーの赤い光が、ゆっくりと輝きを弱めていく…



ドクン……

ドクン…

ドクン。



塔の鼓動?も…次第に静まり始める……



そしてーー



光と鼓動は完全に沈黙した。


塔の中は、静けさと闇に包まれるーーー



リントが小さく息を吐いた。

「終わった……のか」



コトハは(うなず)いた。

「うん。この塔は、もう動かない」



その時…


キリカが壁の奥を指差した。

「ねぇ…あれ」



三人が振り向く。



壁に刻まれていたのは――

巨大な紋章。


六つの塔を示すような印。


そして…


その中央には

他よりも大きな紋章が刻まれていた!



リントはそれを見つめる。

「……これって」



コトハが小さく言った。

「キングピラー……」



七本の塔。

その中心。

すべての悪意が集まる場所。



リントは拳を握る。

「まだ終わりじゃないってことか」



その時だったーー



遠く離れた別の地域。

巨大な都市の上空。


金色に光るーー

黒い塔がそびえている。


強欲の塔。


【マモン・ピラー】



塔の周囲では人々が争っていたーー

金品を奪い合いーー

怒号が飛び交うーー


暴動。

略奪。


欲望に()まれた街。



その光景を見上げる一人の男ーーー

フードを被った男が、小さく笑う。

「三つ……か」



男の指には…

奇妙な紋章の指輪。

「面白くなってきたな」



男はマモン・ピラーを見上げる。

「欲望は、人間を一番簡単に狂わせる」



色に染まる夜の街でーー


塔の金色の光だけがーー


(あや)しく揺れるように輝いていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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