第22話 「その笑顔の為に」
満月の夜。
黒い塔の麓。
崩れた街の中央でーー
三人は立っていた。
リント。
キリカ。
コトハ。
遠くに見える塔が…
妖しく脈打つ様に誘う…
コトハが端末を見る。
「エネルギー反応……急接近」
キリカが眉をひそめる。
「また来るってこと?」
!!!
その時だった!
突如ーー黒い裂け目が現れ
空間が歪んだ。
そこから現れた影ーー
人の形をしている。
だが…
目がない。
口もない。
ただ黒い仮面のような顔。
コトハが震えた声で言う。
「…模倣アビス……」
「強い…出力……守護者級」
キリカが顔をしかめる。
「ちょっと待って」
「守護者って……」
その場の空気が重くなる--
リントが肩を回す。
「まぁ」
「殴れば分かることだろ」
キリカ 「はぁ?軽すぎ!」
リントが前に出た。
「喋んねぇのか?…」
返事はないーー
拳を鳴らす。
「人形なら遠慮いらねぇな!」
次の瞬間!!
リントが動いたーー
ドカッ!!
衝撃音と共にーー
リントの拳がアビスを叩き飛ばす。
アビスの身体と一緒にーー
瓦礫が吹き上がった。
キリカが叫ぶ。
「速っ!?」
だが…
アビスにはあまり効いていない。
体が歪みーー
リントの動きを
完全に再現した。
コトハが叫ぶ。
「リント!」
「それ!」
「コピーしてる!!」
その瞬間。
アビスが動いたーー
リントと
同じ速度。
同じ動き。
拳。
衝突。
ドンッ!!
衝撃波!!
激しい激突でーー
二人が同時に吹き飛ぶんだ!!
キリカ
「冗談でしょ……!」
リントが立ち上がるが口の端から血…
「…なるほどな」
笑う。
「面白ぇ」
再び突進ーー
拳。
回し蹴り。
衝撃。
だが――次の瞬間!
アビスの腕が変形した!!
その黒い刃がコトハの方へ突き出される…!!!
一直線!!!
コトハの瞳が開く。
「!?」
その瞬間だった!
――視界が歪む。
音が遠くなり…
コトハの世界が
一瞬だけ止まった。
そして……見えた。
未来!?
リントが立っている。
模倣アビスの刃。
コトハへ向かう。
そして…
リントがその前に立つ。
胸を貫かれる。
コトハ 「……え」
世界が戻るーー
コトハの喉から声が漏れる。
「リント…」
キリカの声。
「コトちゃん!!」
目の前!!
模倣アビスがーー
すでにコトハへ踏み込んでいた。
コトハの体が凍る。
(今の……)
(何……)
拳が振り下ろされる。
避けられない--
次の瞬間--
ドンッ!!
温かい何かが
コトハの頬に飛んだ。
ポタリ…。
赤い。
血。
コトハの目が揺れる。
「……リント?」
目の前に--
リントが立っている--
模倣アビスの黒い刃が
リントの胸を貫いていた。
キリカ
「……え!?」
リントの体が--
ゆっくり止まる---
刃が胸を貫通している。
コトハの手が震える。
「……リント!?」
リントがいつもの笑顔で言った。
「コト」
「ぼーっとすんな」
血を吐くーー
「良かった…間に合った……」
コトハの目から涙が落ちる。
「……なんで」
リントは微笑みながら言う。
「決まってんだろバカ」
「……仲間だから」
模倣アビスが刃を引き抜く。
ブシュッ!!
血が飛ぶ。
コトハ
「嫌だ……」
声が震える。
「嫌だ……」
キリカが叫ぶ。
「リント!!!」
リントがゆっくり振り向く…
「そんな顔すんなよ」
コトハの涙が止まらない。
「嫌だ……」
「嫌だよ……」
リントが少し困った顔をする。
「コト」
手を伸ばすーー
震える手で…
彼女の頭を軽く叩く。
「泣くな」
「お前…似合わねぇ…」
血が溢れーー
リントの視界が揺れる。
キリカが駆け寄る。
「ふざけんな!!」
涙を流しながら叫ぶ。
「死ぬな!!」
リントが笑う。
「キリ」
「うるせぇぞ」
「耳痛ぇだろバカ」
キリカの拳が震える。
「バカ……」
「バカぁ………」
リントが満天の星空を見上げる。
「なぁ…」
小さく言う。
「俺さ」
「結構…」
笑う。
「楽しかったわ」
コトハが首を振る。
「嫌だ……」
「まだ……」
「まだ一緒に……」
言葉が崩れるーー
リントの声が弱まっていく…
「キリ」
「コト」
二人を見る。
その目はーー
優しかった。
「いつも傍にいてくれて…
ありがとな」
そして…
ゆっくり目を閉じながらいつもの笑顔を見せた。
「いい旅だった…」
その瞬間ーー
リントの体が崩れた。
コトハが抱き止める。
「リント!!」
キリカが叫ぶ。
「起きろよ!!」
だが…
返事はない。
静寂の中…無情に風だけが吹く。
遠くでーー
黒い塔が妖しく脈打つ……
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