第20話 「放逐のルディ」
空が裂けたーー
黒い亀裂が空間を引き裂きーー
そこから重い気配が街へ落ちてくる。
ドンッ――!!
衝撃と共に、
廃ビルの屋上が砕けた。
煙の中から現れたのは
異形。
四足の巨体ーー
黒い外骨格。
背中から歪んだ棘が突き出ている。
その目だけが赤く光っていた。
コトハが息を呑む。
「……違う」
キリカ
「え?」
コトハの声が震える。
「マリスじゃない……」
端末が赤く点滅する。
【はぐれアビス】
キリカ
「ちょっと待って!」
「アビスって…塔の守護者じゃなかったの!?」
コトハ
「違うこれは…はぐれ型」
「独自の進化をしたタイプの……アビス」
リントが ニヤッと笑う。
「要するに…」
「ヤベーやつってことだろ?」
次の瞬間。
はぐれアビスが消えたーー
ドコッ!!
衝撃。
リントの腕が交差する。
「っ……!」
屋上のコンクリートが割れる。
キリカ
「見た目より速い!」
続けざまに、はぐれアビスの爪が
振り下ろされた。
ザシュッ!!
リントが横へ跳んで躱す瞬間
爪が屋上を抉りとる!!
リントが笑う。
「いいね」
拳を握る。
「ちょっとは楽しめそうだ」
そう言った途端一気に踏み込む!!
ドンッ!!
拳がはぐれアビスの腹に叩き込まれ
その巨体が後ろへ滑る。
だが止まらないーー
逆に咆哮する!!
空気が歪みーー
重力が揺れた。
コトハ
「まずい!」
キリカ
「何!?」
コトハ
「重力干渉型…」
次の瞬間!!
屋上の空間そのものが沈む。
ドンッ!!
リントの体が地面へ押し付けられた。
「ぐっ…!」
キリカ
「リント!」
間髪いれずにはぐれアビスが突進する。
リントに向け巨大な爪が振り下ろされた…
その瞬間――空が震えた。
ピシッ。
空間に亀裂ーー
音もなく、
そこに---
人影が立っていた。
白いタキシード。
銀色の長髪。
静かな目。
キリカ
「……誰」
男は答えないーー
ただ黙ってはぐれアビスを見た。
少し首を傾げ呟く。
「……うるさい」
はぐれアビスの動きがーー
一瞬だけ止まる!?
“理解できない”というように。
しかし…次の瞬間!!
はぐれアビスが男に
襲いかかるーー
巨大な爪。
咆哮。
だが――男は動かなかった。
ただ……指を軽く上げ呟いた
その瞬間!!空間が歪む。
【ヴォイド・ブレイク】
パキンーー
世界が割れた。
黒い亀裂がはぐれアビスを包み込む。
一瞬。
沈黙。
次の瞬間。
消えた!?
跡形もなくーー
キリカ
「……は?」
リント
「マジかよ」
コトハが震える声で言う。
「……アビス」
キリカ 「え?」
コトハ 「あの人…」
男は三人を見る。
視線が一瞬だけーー
キリカとコトハに止まる。
不思議そうに。
「……人間?」
少し考える。
「面白いな…」
リントが言う。
「おい!」
男が視線を向ける。
リント
「誰だお前」
沈黙…
風が吹く。
男は少しだけ笑った。
【ルディ】
キリカ
「ルディ?」
男は続ける。
「放逐された…アビス…」
沈黙。
キリカ
「……は?」
リントが笑う。
「なるほど」
拳を握る。
「で?敵か?」
ルディは首を横に振る。
「違う…」
少しだけ空を見る。
「今は違う…」
その体が黒い霧に溶けて消えたーー
屋上に静寂…
キリカ
「……何あれ」
リント
「さぁな」
コトハが遠くを見る。
「でも」
小さく言う。
「また会う気がする」
リントが笑う。
「そりゃそうだろ」
遥か上空。
裂け目の奥で--
巨大な闇が蠢いていた。
戦いは--
まだ終わらない。
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