第17話 「ジンの意思」
崩れたビルの屋上。
瓦礫の中央で――
それは立っていた。
黒い巨体。
筋肉が歪みーー
皮膚の下を黒い霧が流れ
目だけが赤く光っている。
【憤怒のアビス】
キリカが震えた声で言う。
「……ちょっと待って」
「さっき爆発したよね?」
コトハが端末を見る。
「反応……消えてない」
「むしろ」
画面が赤く点滅する。
「上がってる」
その瞬間…
ドンッ!!
地面が砕ける!
憤怒のアビスが拳を振
り下ろした。
リントが横に跳ぶ。
衝撃で屋上が割れる。
キリカ
「嘘でしょ!?」
リントが笑う。
「おー…ヤル気満々だな」
憤怒のアビスの声が低く響く。
「……怒り」
「怒り…怒り」
黒い霧が膨れ上がる。
「全てを…」
「壊す!!」
次の瞬間ーー
消えた!?
ドンッ!!!
拳。
リントの腕が交差する。
衝撃で瓦礫が吹き飛ぶ。
リント
「……おっと」
少し後ろに滑る。
キリカ
「さっきより強い!」
コトハ
「出力倍以上!」
憤怒のアビスが吠える。
「人間共…」
「消えろ!」
突進。
拳。
蹴り。
衝撃。
ドン!!
ドンッ!!
ドォン!!
リントが押される。
キリカ
「リント!」
追撃ーー憤怒のアビスの拳が振り上がる。
リントの顔へ――
ーーその瞬間!
キリカが飛び込んだ。
「バカ!!」
ドンッ…!!
衝撃でキリカの体が吹き飛ぶ。
ザ…ザァッ……
瓦礫に転がる。
リントの目が止まる。
「……キリ?」
コトハが駆け寄る。
「キリちゃん!」
キリカが顔をしかめる。
「いったぁ……」
腕から血が流れている…
リントがゆっくりと--振り向く。
憤怒のアビス。
黒い霧。
赤い目。
その時!
リントの頭の中で
声が聞こえた。
――リント
優しい声…
父親。
ジン。
「人を憎むな」
「どんな時でも」
「笑っていられる男になれよ」
リントの拳が震える。
怒りじゃない--
憤怒のアビスが踏み込む。
「わざわざ我が…
出向くほどでもなかったか」
「大人しく消えろ!!」
最大級の攻撃ーー
その瞬間…空気が変わった。
リントの周囲に
白い光が揺れる。
コトハが息を呑む。
「……え」
上空でゼノンが目を細める。
「……ほう」
憤怒のアビスの一撃。
一瞬静止ーー
そして…リントの手が――
完全に受け止めた。
憤怒のアビス
「……バカな!?」
リントがゆっくり顔を上げる。
「なぁ…」
小さく言う。
「それ」
「やめてくれる?」
次の瞬間!!!
ドンッ!!!
静かなる一撃がーー
憤怒のアビスの顎を穿つ!!!
憤怒のアビスが吹き飛ぶ---
地面を滑る。
キリカが驚く。
「え……?」
リントの体の周囲で
白い光が揺れている。
怒りではない--
優しい光。
ゼノンが小さく呟く。
「……なるほど」
「ジン……」
少し笑う。
「これを残したのか」
リントが歩く。
憤怒のアビスが立ち上がる。
吠えるーー
「怒り!!!」
突進!!!
だが。
リントが消える。
背後。
「遅い」
ドカンッッッ!!!
蹴り。
巨体が宙を舞う--
屋上の壁に激突!!
崩壊。
憤怒のアビスが膝をつく。
霧が乱れる…
「……なぜだ」
リントが肩を回す。
「知らねぇよ」
ニヤッと笑う。
「でもさ」
拳を握る--
白い光が揺れる。
「仲間傷つける奴は…」
一歩踏み込む!
「大嫌いなんだよ!」
ドゴォッ!!!
強烈な一撃。
憤怒のアビスが
完全に吹き飛んだ。
地面に叩きつけられーー
黒い霧が崩れる。
沈黙…
キリカが呟く。
「……なに」
「今の…」
コトハ
「エネルギー波形……」
「未知!?」
ゼノンが笑う。
「未完成だな」
リントを見る。
「だが」
目を細める。
「面白い」
リントが振り向く。
「何が?」
「てゆーかまだいたのかよ」
ゼノン
「お前」
「世界を壊すかもしれないな」
リント
「はぁ?」
ゼノンは笑う。
「楽しみだ」
その体がーー
黒い霧に溶け---
再び消える。
屋上に静寂。
リントの周囲の白い光が消える。
キリカが立ち上がる。
「今のなに!?」
リント
「知らねぇよ」
コトハ
「でも」
遠くの塔を見る。
「まだ終わってない」
その時。
リントがふとキリカを見る。
腕から血。
「……おい」
キリカ
「ん?」
リントが少し目を、
そらしながら頭を掻く。
「さっきの」
「……助かった」
キリカが一瞬固まる。
「え?」
リントはぶっきらぼうに言う。
「次やったら怒るからな!」
キリカ
「はぁ!?」
リント
「危ねぇだろーが!」
「俺より前に出るな」
沈黙。
キリカの顔が少し赤くなる。
「な、何よそれ」
「心配してんの?」
リントはそっぽ向く。
「別に」
「ただ…」
少しだけ笑う。
「仲間減るとめんどくせぇ」
キリカ
「こ…んのバカ!!」
コトハが小さく笑う。
リントがそれを見る。
「めんどくせぇな」
「次行くか」
その瞬間。
遠くの黒い塔が
赤く光った。
物語は
まだ始まったばかりだ……
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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