第16話 「黒い塔」
崩れたビルの屋上にーー
涼やかに夜風が吹く。
瓦礫の中で
キリカが大きく息を吐いた。
「はぁー……」
「なんなの今日」
コトハは端末を操作している。
「マリス反応……完全消滅」
リントは肩を回していた。
「いやー」
「最近の敵は派手だな」
キリカが振り向く。
「派手とかじゃないでしょ!」
「ビル壊れてるのよ!?」
リントが瓦礫を見渡す。
「弁償は市役所でいいのか?」
キリカ
「知らないわよ!」
その時。
コトハが静かに言った。
「……待って」
キリカ
「なに?」
コトハの端末の画面。
数値がーー
ゆっくり上がっている。
「マリス反応……じゃない」
キリカ
「え?」
コトハ
「もっと……大きい」
空気が重くなる。
リントが空を見上げた。
「ん?」
遠くーー
夜の地平線の向こう。
黒い影。
最初は
ビルかと思った。
だが違う…
それは
塔だった。
空を突き刺すような
巨大な黒い塔。
キリカの目が見開く。
「……なにあれ」
コトハが呟く。
「観測記録……一致」
「間違いない」
ゆっくり言う。
「黒い塔」
リント
「黒い塔?」
コトハ
「世界各地で観測されてる構造物」
「正式名称…」
一瞬迷ってから言う。
「ピラー」
キリカ
「ピラー?」
コトハ
「悪意集約装置」
沈黙。
リント
「……やばいやつ?」
コトハ
「かなり」
その時…声がした。
「かなりどころじゃない」
三人が振り向く。
ゼノン。
いつの間にか
瓦礫の上に立っていた。
キリカ
「まだいたのあんた!」
ゼノンは笑う。
「帰る前に一つ教えてやろう」
リント
「サービスいいな」
ゼノンは遠くの塔を見る。
「世界には」
「七つの塔がある」
コトハの目が揺れる。
「……七」
指を向ける。
夜の向こう。
さらに巨大な影。
ゼノン
「そこに」
少し笑う。
「世界の悪意が集まる」
リント
「へぇ」
頭を掻く。
「迷惑な建物だな」
ゼノンはリントを見る。
その目は少しだけ楽しそうだった。
「だから壊すんだろ?」
リント
「当然!」
「ムカつくからな」
ゼノンが小さく笑う。
「いいね」
そして…
ゼノンが空を見た。
「その中心にあるのが――」
「キングピラーだ」
静かに言う。
「だが気をつけろ」
リント
「ん?」
ゼノン
「塔には」
「守護者がいる」
キリカ
「守護者?」
ゼノン
「アビス」
コトハの声が震える。
「……上位個体」
ゼノン
「いや」
首を横に振る。
「さっきのは」
「ただの模倣型」
沈黙。
キリカ
「……え」
ゼノン
「本物のアビスは」
塔を見る。
「もっと強い」
リントの目が少し光る。
「いいじゃん」
ニヤッと笑う。
「楽しそうだ」
ゼノンが呟く。
「やっぱりな」
そして背を向ける。
黒い霧が揺れる。
「じゃあな」
キリカ
「待って!」
ゼノンが止まる。
キリカ
「なんで教えたの?」
沈黙。
ゼノンは少しだけ笑った。
「簡単だ」
リントを見る。
「お前らが」
「どこまで行くかーー
見たいからだ」
そして
もう一言だけ言った。
静かな声。
「……まぁ」
「お前らは途中で一度…」
「壊れるがな」
沈黙。
キリカ
「は?」
コトハ
「え?」
リント
「……はぃ?」
だが
ゼノンはもう笑っていた。
「気にするな」
「人間は…」
「心が強いやつほど厄介だからな……」
黒い霧が広がりーー
そして…
溶けるように…消えた。
キリカが叫ぶ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「何今の!?」
コトハ
「……意味不明」
リントは少し考えてから言う。
「まぁ」
肩をすくめる。
「変なやつだな」
そして空を見る。
遠くの黒い塔。
リントが呟く。
「なるほど」
キリカ
「なにが?」
リントは笑う。
「世界って」
「めんどくさいな」
そして歩き出す。
キリカ
「どこ行くの!?」
リント
「決まってる」
遠くの塔を見る。
「ぶっ壊しに!」
その時だった!
コトハの端末が
激しく警告音を鳴らす。
キリカ
「なに!?」
コトハの声が震える。
「マリス反応……」
「急接近!!」
リント
「またかよ」
コトハ
「違う」
ゆっくり画面を見て…そして言う。
「場所」
「…ここ」
沈黙…
次の瞬間!!
背後の瓦礫が
爆発した。
黒い霧。
ゆっくり立ち上がる影。
その目は
完全な闇だった。
低い声。
「……リント」
三人が振り向く。
影が言う。
「やっと見つけた」
空気が凍るーー
リントが笑う。
「誰だよ」
影は答えた。
「我は」
一瞬間が空き…
黒い霧が急激に膨れ上がる。
「憤怒のアビス」
次の瞬間ーー
地面が砕けた。
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