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第15話 「予測不能」

瓦礫(がれき)の中ーー

リントとアビスが向かい合う。



互いに同じ構え。

同じ距離。

同じ重心。



キリカが小声で言う。

「いやこれ……」


「完全コピーじゃん」



コトハが端末を見ながら(うなず)く。

「動きのパターン……一致(いっち)してる」



リントは肩を回す。

「めんどくさいな」


「俺が二人いる感じか」



アビスは静かに言う。

「違うな…」


「お前は所詮(しょせん)

原型でしかない」


(われ)は完成型!」



リントが笑う。

「イキるねぇ」



次の瞬間!


二人が同時に動いた。



ドンッ!!



拳と拳が衝突しその余波でーー

床が砕ける。



キリカ

「うわっ!」



コトハ

「衝撃が……!」



再び衝突。



ドンッ!!



完全な互角ーー



リントが笑う。

「ほんとに真似してんだな」



アビス

解析済(かいせきず)みだ」


黒い霧が揺れる。

「お前の戦闘スタイルは」


「全て再現可能!」



その時だった…



後ろで。

ゼノンが小さく笑った。

「……違うな」



誰も戦いを止めない。


だが全員が聞いていた。



ゼノンはまるで観客のように

瓦礫(がれき)に腰を下ろす。


「お前」


アビスを見る。

「まだ分かってない」


アビスの動きが一瞬止まる。


ゼノンが続ける。

「そいつの強さは」


「技じゃない」



リント

「おいおい」


「勝手に解説すんな」



ゼノンは笑う。

「いいじゃないか」


「事実だ」



アビス

「否定」



ゼノン

「なら聞くが」


「お前…」


「人間を理解してるか?」



沈黙…


アビス

「そんなものは不要」


「人間は悪意の(かて)ーー」


所詮(しょせん)マリスの(みなもと)でしかない…」



ゼノンは小さく(うなず)く。

「そうだな」


「だが……半分だ!」



キリカ

「……え?」



コトハ

「半分?」



ゼノンは遠くの黒い塔を見つめる…


「人間は」


「悪意を生む」


「しかし…」


リントを見る。


「それと同時に…」


「意味不明なものも生む」



アビス

「……?」



ゼノンが言った。


笑顔(キセキ)だ」



沈黙…


リントが頭を()く。

「なんだそのポエム」



ゼノンは笑う。


「お前の親父が言ってただろ」



リントの目が動くーー



ゼノン

「人を憎むな」


「どんな時でも笑っていられる男になれよ」



キリカ

「え」


「なんで知ってんの」



ゼノンは答えない。



ただリントを見る。

「それが…」


「人間の持つ最大の武器」


「意外性だ!!」



アビス

「理解不能ーー」



ゼノン

「だろうな」


そして静かに言う。

「だからお前は」


「リントに勝てない」



黒い霧が爆発する。


アビス

「否定ーー」

「否定ーー」

「否定ーー」



リントがため息をつく。

「ほら」


「怒らせた」


首を鳴らす。


「責任取れよゼノン」



ゼノンは笑う。

「いいだろう」


「観測してやる」



アビスがリント目掛けて突っ込む!

速度が更に()ね上がる。



キリカ

「嘘っ…まだ速くなるわけ」



コトハ

「出力上昇!」



リントの顔面への最大の一撃!!


――だが。


リントの手がーー

その拳を(つか)んでいた。



アビス

「……?」



リントが笑う。

「なぁ」


「ずっと気になってたんだけどさ」


「今やっと分かった!」



アビス

「……」



リント

「お前」


「俺より弱いよな?」



ドンッ!!



空気が爆発する程の衝撃が腹にめり込む!!


アビスが吹き飛びーー

壁を砕きながら転がる。



()れ出る霧を揺らし…立ち上がる。

「バ、バカな……なぜ」


「同一戦闘」

「同一能力」



リントは肩を回す。

「まだ分かんねぇか」



アビス

「……?」



ニヤリと笑う。

「俺さ」


「考えて(なぐ)ってねぇんだわ」



キリカ

威張(いば)るなアホ!」



リント

「だから」


一歩踏み込む。

「真似しても意味ねぇ」



そう言葉を残しーー消えた

ーー次の瞬間。



背後からの強烈な回し蹴り!!


ドンッ!!


すぐさま追いつきーー

トドメの渾身の一撃を放つ!!


ドガァッ!!



アビスが吹き飛びーー

壁にめり込むほど(たた)きつけられた。



リントが歩く。

「終わりだ」



アビスが崩れ始める。

「グッ……理解…不能」


「人間は……不完全…」


「故に…」



霧が崩れる。

「予測不能ーー」



闇に溶けるように…静かに消える。


沈黙。



コトハが端末を見る。

「反応消滅」



キリカ

「終わった……?」



その時!


後ろから

拍手。

パチ。

パチ。

パチ。

振り向く。


ゼノン。


壁にもたれて笑っている。

「なるほど」


「やっぱりだ」



リント

「何が?」



ゼノン

「お前」


「本当に面白い」



そして…



静かに言う。

「今日は」


「戦わない」



リント

「今日は?」



ゼノン

「ああ」


少し笑う。

「そのうちな」



空気が変わる。



ゼノンが言った。

「リント」


「お前いつか後悔するぞ」



リント

「は?」



ゼノン

「人間を信じすぎる」


静かな声。

「それが」


「お前の弱さだ」



ーーリントは少し考えてから言う。

「まぁ」


肩をすくめる。

「それでもいいよ」



ゼノンが笑った。

「だろうな」



そして


黒い霧の中に消える…


屋上に静寂が戻る。



リントは空を見る。


遠くに…

黒い塔。



その光が――一瞬だけ

揺らいだ気がした。



「めんどくさいの」


   「まだまだいるな…」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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