第10話 「視線」
夜の雨はーー
止みかけていた。
街の空気は重い。
まるで見えない何かが
街全体を…
覆っているようだった。
静かな道路をーー
リント
キリカ
コトハ
の三人が歩いていた。
キリカが両手を頭の後ろに組む。
「でもさー」
「さっきのマリス
弱くなかった?」
リントは前を向いたまま答える。
「弱いんじゃない」
「増えてる」
コトハが頷く。
「うん」
「顕化の速度が異常」
端末を操作する。
画面には赤い点が無数に表示されていた。
すべて――
【顕化反応】
キリカが目を丸くする。
「ちょっと待って」
「これ全部?」
コトハは静かに言った。
「この街だけじゃない」
「世界中…」
キリカが口笛を吹く。
「うわー」
「派手に始まったね」
その時だった…
遠くから爆音ーー
黒い煙が上がる。
キリカが笑う。
「次だね」
リントはすでに走り出していた。
現場はコンビニだった。
ガラスが割れーー
店内は荒れている。
中央に立つ男は…
体の半分が黒い霧に覆われていた。
マリス。
だが――
さっきの男とは違う。
霧が濃い。
圧が強い。
男はゆっくり振り向いた。
「……また来たのか」
その声は妙に落ち着いていた。
キリカが小声で言う。
「ねぇ」
「なんかさっきのより強そうじゃない?」
コトハも感じていた。
「顕化が進んでる」
リントは男を見つめる。
マリスは笑った。
「面白い」
「お前の匂い」
「塔と同じだ」
――その瞬間。
リントの胸に
微かな痛みが走った。
針で刺されたような、
浅い違和感。
一瞬だけ視界が揺らぐ。
――黒い空。
――高い場所から見下ろす街。
――掠れた声。
「……まだか」
ノイズのように消える…
リントは小さく眉をひそめた。
だが痛みは次の瞬間には消えていた。
気のせいだ。
そう判断し、拳を握る。
黒い霧が爆発した。
マリスが突進する。
速い。
キリカが叫ぶ。
「速っ!」
リントが前に出る。
拳と拳がぶつかる。
衝撃で棚が吹き飛ぶ。
マリスが笑う。
「いい」
「楽しい」
「もっと壊そう」
リントは無言で拳を握る。
次の瞬間。
鋭い蹴りがマリスを吹き飛ばした。
壁が砕ける。
マリスは立ち上がり笑った。
「やっぱりだ」
「お前は特別だ」
リントは静かに言う。
「終わらせる」
渾身の一撃。
黒い霧が弾け
男の体が崩れ落ちた。
霧が空へと消えていく。
その時だった!!
空が震えた。
三人が同時に見上げる。
遠くの空。
雲の奥。
黒い塔から、
黒い光が空へ伸びていた。
コトハが呟く。
「……何あれ」
キリカが目を細める。
「なんか……いる?」
塔の頂上。
黒い影。
コトハは何も言わない。
だが――
リントだけが
目を逸らせなかった。
塔の頂上。
影がゆっくりと
首を傾ける。
その瞬間。
リントの胸が
強く一度だけ打った。
理由は分からない。
だが確かに。
向こうも
こちらを見ている。
塔の上。
黒いコートの男が
街を見下ろしていた。
「……見つけた」
男は小さく呟く。
「リント」
その瞳は静かだった。
だが奥底には
底の見えない闇が揺れている。
男は笑った。
「面白くなってきた」
その瞬間ーー
黒い閃光が脈打つ!!
――その鼓動と
リントの紋章がーー
“同じリズムで脈打っていた”。
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