6話 イリスの横領/王都での依頼
どうやらイリスはもう待っていたようだ。
「ちょっと!セラ遅いじゃない。いつまで待たせるの?」
「ごめん買い物が少し長引いちゃってね」
(嘘ついちゃってもいいの)
(いいだろ。言ったら余計にめんどくさくなる)
本当は反王家派の人と話してたなんて言えるわがないだろ!!
「まあ今のセラからしたら初めての買い物だしね〜楽しまないとねうんうん」
「あはは」
どうやら話し方的にこの世界の女性も前世と同じで買い物好きが多いいのかもしれない。
正直内心とても楽しかった。
やはり俺に乙女心が...いやないない。考えたくない。
「それにしても太ももにつけてる。そのナイフ扱えるの?」
「まず使ったことがない」
そう。俺はナイフが使えたらかっこいいと思って買ったのだ。
だから使えないし、そのための知識がない。
ハア〜練習あるのみか
「だよね〜。前のセラも私も神器だよりだしね〜」
「そうだった...のかな?」
「そうだよ〜。前のセラは銃を乱射しながら得意な氷魔法で槍をつくって射出して手数の多さで戦ってたよ〜」
なにその戦乙女は。もうミニガンじゃん
「前の私ってそんなに強かったの?」
今の会話から以前のセラフィーがどのぐらい強かったのかちょっと知りたくなった。
「私なんかよりもと〜ても強かったよ〜」
今の俺がイリスを超えない限り以前のセラフィーより強くなるのは難しいか。
いずれ魔王軍が攻めてきたら俺に戦えるのだろうか。
いっぱい課題が増えていく。
とても頭の痛い話だ。
そうこう言ってる間に今日の宿についた。
んん?外装からして相当お高そうな宿なんだけど。
「イリス。宿のどの部屋にしたの?」
「最上階だね」
何が「最上階だね」だよ。いったい、いくら使ったんだろうか。
「何泊何日のいくら使ったの?」
正直聞きたくなかったがこれからの旅支度の資金を蓄えなければ。
「好きなだけよ」
何を言っているのだろうかそんな大金があるわけ無いだろ。
なんだ不正か?
「どんな脅しをしたの...一緒に謝るから」
「いやいやそんなことしてないよ。いや、確かに不正かも知れないけど...」
「一応聞いても?」
もう嫌な予感しかしない。
「騎士団って遠征とか遠出するじゃん」
「うん」
「その時の宿代ってどこから来てると思う?」
「どこからってそれは〜ハッ!」
「そう王国よ。まだ私たちは騎士だから国のお金を使えるわ」
うわ~ゲスい。横領だ。 税金の無駄だ。
イリスは騎士を名乗っていい存在なのか。
本当に国の味方なのだろうか。
もしかしてイリスも反王家派の人間なのではないか。
数え切れない余罪が上がってくる。
もっと頭が痛くなってきた。
(セラフィーいるか)
(もちろんいるわよ)
(イリスは犯罪者なのか?)
(否定はしないわ。昔からよく王国の私物を横領していたわよ)
(そうか。)
連れてくるのは間違っていた…のかもしれないな...
そうして入口でホテルマンらしき人に部屋へ案内された。
そして夜食を済ませ、ようやく一息ついたところで――
「じゃあ、今からお風呂入ろっか!」
「……ん?」
イリス君は今なんて言ったんだ?
「セラ!! 一緒にお風呂入ろ〜!」
聞き間違えじゃなかった。
思わず遠い目になる。
いや、待て。
前回、セラの姿を見ようとしたら強制的に意識を変えられたんだ。
ならば今回は、絶対に断る。
「いや、まだ部屋でやることが――」
「そんなの後でい〜よ!」
「わぁぁぁ!?」
そのまま腕を掴まれ、浴場へと連行された。
(セラフィー、本当に一緒に入っていいの?)
(今のイリスと会うのはちょっと気まずいから好きに拝みなさい)
(いや、いいの!?)
「セラ、どうしたの? ぼーっとしてるよ?」
「……いや、ちょっと考え事を」
もういい。
余計なことは考えない。
見なければいい。
そう、視線を固定すればいいだけだ。
そうして浴槽に浸かり。
俺は壁を見る。
ひたすら壁を見る。
「…………」
「セラ?」
「…………」
「セラ〜?」
「……何?」
「さっきから壁しか見てないよ?」
「壁が気になる年頃なんだよ」
「そんな年頃あるの?」
「ある」
「へぇ〜」
絶対信じてない。
「こっちおいでよ〜」
「いや、ここでいい」
「なんで?」
くっ……。
このままでは押し切られる。
昔は陰を極めすぎて『隠密の楓』なんて呼ばれていた俺だ。
この程度の状況、乗り切ってみせる!
「セラ、さっきから本当に変だよ?」
「そんなことない」
「じゃあ、こっち向いて」
「断る!」
「即答!?」
怪しまれる。
「……もしかして、恥ずかしいの?」
「…………」
「図星だ〜!」
「違う!」
「じゃあこっち向いて〜」
「断る!」
「やっぱり恥ずかしいんじゃん!」
「くっ……!」
完全敗北だった。
そして数分後――。
「ふぅ……いいお湯だったね〜」
「……疲れた」
「なんでお風呂に入っただけでそんなに疲れてるの?」
「精神力を誰かさんのせいで大量消費したんだよ……」
「大げさだなぁ」
(……セラ)
(なによ?)
(次から絶対に一人で入る)
(賛成よ)
こうして俺たちは、異世界での旅における新たな教訓を得た。
『イリスと一緒に風呂へ行くと、体ではなく精神が疲れる』
「これでセラとの思い出が一つ増えたね!」
「嫌な思い出だよ……」
「私は楽しかったよ?」
「私はもう寝る……」
「え〜、まだ話そうよ〜」
「今日はもう無理……」
そしてベッドに倒れ込む。
翌朝。
小鳥のさえずりと共に俺は目を覚ました。
窓から見える日差し。
静かな朝。
そして無防備なイリス。
ん?無防備なイリス?
と横目に見ると下着姿のイリスだった。
俺が男だったらやっぱり襲っ…いかんいかん。
まぁ見た目はそう魅力的な女性だと思う。
相当俺の好みだ。
だからこそ直視できないのだ。
(うへ〜カエデはイリスのことそう思ってたか〜)
(げ。俺の思考を覗くんじゃない。)
(覗くってよりも情報が入ってくるのよ)
(そうなのが?じゃあ仕方のないことか)
と雑談してたら。
イリスが起きた。
「おはよ〜セラ〜」
「おはようイリス」
そうして1日が始まってしまった。
身支度を整えて俺等はギルドへと向かった。
向かった理由はギルド証の確認と依頼の受注だ。
「すいませーん!」
「少々お待ちを!!!」
今日は何かと騒がしい。
王都だからということもあるのだろうがクロッシングのときよりも騒がしい。
何かあったのだろうか。
そうして数分後。
「はい!お待たせしました!!ご要件をお伺いします。」
「ギルド証の更新手続きが昨日されたはずなんですけど〜」
「えっとイリス様とセラ様で間違いないでしょうか?」
「そうです〜。」
「では、お二方こちらの刻印に触れてください」
触れると青くギルド証の自分の名前が光った。
流石ファンタジーだ。
「はい。ではこちらギルド証ですB−ランクへ昇格おめでとうございます」
飛び級か…学園時代のほうがありがたかったな。
「ありがと〜。あ~それと私たちに合ったレベルの依頼あったりする?」
「現在の依頼ではお二方に合う依頼は難易度Bランクの依頼があります。」
難易度B。結構危険な依頼になりそうだな。
「依頼内容は」
「最近、王都周辺を縄張りにしている地域支配主の討伐です。
目撃情報では長い巨体で色は灰色。近くには硬い鱗が落ちていたとのことです。
出現場所は王都の南側の森とだけ報告が入ってます。
それと報酬は金貨40枚です。」
金貨40枚。退職金よりは、はした金だが相当美味しい。
「イリスはどうしたい?」
「私は受けたいよ〜」
ん〜でもおかしくないか?
「受付嬢さん一つ聞くけど、私たちよりも強い冒険者っていないの?
普通ならそういう人が受けると思うんだけど」
「ハッすいません。実は国内の高ランク冒険者は今、他の依頼で」
なるほどな。でも危険が多すぎる。
「それって断っても」
「いやいや。受けてもらえませんか?上からの命令なんです。あ!」
「もしかして国が関わっていますか?」
「大きな声では言えないんですがお二人に指名の王族依頼なんです。しかも国王様からのでして」
ああー事情をわかってた国王は半強制的に俺等に仕事を与えたわけか。一回王城に乗り込むか。
「実は国王様からお二方はめんどくさがって依頼を受けないだろうから最悪場合強制的に依頼の受注をしてくれと言われまして。あと最後に仕事をサボるなと」
二人「腹立つ〜」
そうして結局のところ王都の南まで来てしまった。




