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第十三話 黒幕の正体

 宙を舞ったよしねは、そのまま地面に落下し転がった。

「ぐっ……」

「なかなかしぶといわね。でも、もう終わりにしてあげる」

 ゆりねは杖を真っ直ぐ持ち、意識を集中させる。

「絡めとりなさい、風蛇ふうじゃ!」

 すると、風がうねりをあげて、よしねに巻きついてくる。

「しまった、動けない!」

 それは、どんどん巻きつき、口まで覆ってきた。

「あっ……かは……っ」

 い、息ができない……と、よしねはかすれる意識の中思った。

 その時、ふと十年前の火事のことを思いだした。

 よしねが苦しんでいる中、ゆりねは表情ひとつ変えなかった。

「苦しいでしょう? でも、私の苦しみはこんなものじゃないわ……」

 やがてよしねはゆっくりと倒れた。

「よしね、これもあなたのためなのよ……」

 ゆりねがよしねの頬に触れるため、しゃがんで手を伸ばした。

 しかし、ゆりねの手は触れることはなかった。

 なぜなら、よしねの杖が、ゆりねの腹に食いこんだからである。

「かはっ?!」

「風刃!」

 至近距離で受けたゆりねは、ふらふらと後ずさる。

「なぜ……意識を失っていたんじゃないの?」

「そうだよ。でも、あの火事のことを思いだしたの」

「火事……あの十年前のことね」

 腹をおさえながら、ゆりねはよしねを見つめる。

「私が邪魔なら、あの時助けなければよかったはず」

 よしねは杖を支えに立ち上がる。

「でも、姉上は私のところに来てくれた!」

「それは……」

 口ごもるゆりねは、腹から手をどけた。

「えっ、血が出ていない?!」

 よしねの攻撃を受けたはずのゆりねは、血を流していなかった。

「どういうこと、姉上……」

「あなたは何も考えなくていいのよ」

 ゆりねは動じず、また杖を構える。

「さぁ、あなたの力を思いっきりぶつけなさい」

「姉上……」

 戸惑うよしねだったが、頭を振りゆりねを見つめる。

「風よ、集まりなさい!」

「そう、それでいいのよ……」

 ゆりねは微笑み、意識を集中させた。

「「はあぁーっ!」」

 二人の力がぶつかり、辺りは土煙に包まれた。

 やがて土煙がなくなると、倒れたのはゆりねの方だった。

「はぁ……はぁ……」

 よしねはふらふらになりながら、ゆりねに近づいていく。

 そして、隣に力なく座りこんだ。

「強くなったわね、よしね……」

「あの火事の時、姉上が逃がしてくれたからです」

「そうだったわね……」

「あれは、姉上の愛だとわかったんです」

「ふふっ……今更かしこまらなくてもいいのよ」

「そ、そんなこと言ったって、どう接したらいいかわからないんだもの!」

「そうね……」

 慌てるよしねに、ゆりねは微笑んでいた。

「あなたに、伝えないといけないことがあるの……」

 ゆりねは真剣な眼差しでよしねを見つめる。

「あの火事を指示したのは……」

★★★

 隼人と月影は、雪影たちに足止めを食らっていた。

「君たちと戦っている場合じゃないんだ!」

「知るかよ! こっちも命令なんだからな」

「命令って、君たちは誰から受けているんだ」

「それを知ってどうするんだよ。今から倒されるのに!」

「君に倒されるわけにはいかない!」

 隼人は刀を構え、意識を集中させる。

はやぶさ!」

 素早く駆けだした隼人は、目にもとまらぬ速さで斬撃を入れた。

「雪影様!」

「えっ……?」

 その場にいる全員が驚いていた。

「月影……?」

「げほっ」

 なぜなら、月影が雪影を庇っていたからである。

「月影、なんで俺を庇ったりしたんだ!」

「だって、雪影のこと大事だから……」

 月影はそう言うと、仰向けに倒れた。

「まさか、敵を庇うなんて……」

 隼人はため息をつきながら、刀をおさめる。

 血だらけの月影を見て、雪影は青ざめていた。

「しっかりしろ月影!」

「雪影……俺もうだめみたい……」

「月影ーっ!」

 月影が目を閉じた時、刀のさやで叩かれた。

「あいてっ!」

「しっかりしろ。致命傷ではないはずだ」

「いてて……実際すごく痛いんだからいいじゃんか」

 隼人と月影の会話に、雪影たちはぽかんとしていた。

「大丈夫なのか、月影……」

「大丈夫じゃないよ、すごく痛い」

 月影は横になったまま、雪影を見つめる。

「隼人がとっさに威力を弱めてくれたから、俺はこのくらいですんだんだよ」

「驚いたよ。君がいきなり飛びだしてくるから」

「だって、俺が雪影の傷つくとこ、見たくなかっただけだから」

「俺が負けるとでも?」

「わからないよ? この攻撃を受けていたらただじゃすまないし、彩も悲しむだろ」

「月影に庇ってもらわなくても、なんとかできたさ」

「本当?」

 そして、雪影と月影は微笑みあった。

「雪影様が笑ってる。よかった……」

 彩もほっとして涙を流す。

 月影たちを見て、隼人も微笑んだが、ふと思いだした。

「和んでいるところ悪いが、そろそろ教えてくれないか」

「教える? なにをだよ」

「『あの方』という人物のことだ。知っているんだろう」

「あぁ、それなら……」

 そして、ゆりねと雪影は、同じ名前を言った。

「お館様よ」

「お館様っていう方だ」

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