第十二話 それぞれの戦い
絶望している隼人と月影のところに、罪刃の剣が近づいてくる。
「あーあ、嬢ちゃんだけ落ちてしまったな」
その発言に、隼人は相手を睨みつける。
「貴様のせいだろう……」
隼人は立ち上がり、刀を抜いて構えた。
そこへ吹雪が舞い、雪影と彩が現れる。
「雪影、彩! どうしてここに……」
月影は驚いたが、雪影は無視をする。
そして、ちらっと罪刃の剣を見た。
「罪刃の剣、ここまでご苦労だったな。あんたの仕事はここまでだ」
「仕事? どういうことだ」
隼人たちが戸惑っていると、罪刃の剣はため息をついた。
「俺の仕事は、嬢ちゃんたちの分断でな。あわよくば、始末できればいいってことだったのよ」
「はじめから、分断が目的だったのか」
目的がわかり、隼人は歯を食いしばる。
「じゃぁな。もし嬢ちゃんが生きていれば、また戦おうって伝えててくれ」
「それはないな。だって、俺たちが倒すんだから!」
雪影はそう言うと、隼人に向かって襲いかかってきた。
彩も月影に向かって、いくつものクナイを放つ。
その間に、罪刃の剣は森の中へと消えていった。
隼人と月影はなんとか避けて、距離をとった。
「早くよしね様のところに行かなければいけないのに、どうすれば……」
★★★
穏やかな川が流れており、小さな泡が浮いていた。
すると、勢いよくよしねが顔を出す。
「……ぷはーっ!」
よしねは河原へとあがり、服をしぼる。
「なんとか力を使って溺れずにすんだけど、隼人たちとはぐれちゃった……」
風を使って乾かしながら、よしねはどうすればいいか考えた。
しかし、いい案は浮かばず、杖をとんっと叩いた。
「よしっ、まずは隼人たちと合流しよう」
よしねが歩きだそうとした時、遠くからこちらに歩いてくる人影が見えた。
「もしかしたら、隼人たちかも……おーい!」
よしねは呼びかけたが、返事はない。
首を傾げたよしねだったが、相手は一人だということに気づく。
「隼人たちじゃない? もしかして、敵?」
不安になったよしねは、とっさに杖を構えた。
だんだん人影が近くなり、顔が認識できた。
「えっ……」
それは、よしねのよく知った人物であり、一番会いたかった人。
「ゆりね……姉上!」
姉に会えたことがうれしくなり、よしねは急いで駆けだした。
ゆりねは、微笑んだまま動こうとしない。
「姉上、姉上ーっ!」
やっと会えたと、よしねは喜びでいっぱいだった。
あと少しというところで、よしねは吹き飛ばされた。
「きゃぁーっ!」
地面に転がったよしねは、わけがわからずにいた。
「えっ、どうして私、倒れているの?」
「私に近づかないでちょうだい」
響いた声はよしねの知っている姉のものだった。
しかし、その表情は見たことのないものだった。
ゆりねの表情はいつもの微笑みではなく、感情のない『無』であった。
「あっ……姉上?」
「私を姉と呼ばないで。あなたとは関係ないわ」
ゆりねは淡々と話し、持っていた杖を突きだす。
「さぁ、早く杖をとりなさい」
「な、なぜ姉上と戦わないといけないの!」
「わからない子ね。あなたが邪魔なのよ」
「邪魔……?」
「そうよ。あの方にとっても、私にとっても、あなたの存在は邪魔でしかない」
言われたよしねはぼう然とする。
それに追い打ちをかけるように、ゆりねは淡々と話す。
「あなたさえいなければ、私がこんなに苦しむことはなかった」
「姉上、わかりません! あんなに優しくしてくれたのに、なんで?!」
「あなたと話すことなんて、なにもないわ!」
ゆりねはそう言うと、杖を振り風を巻き起こす。
よしねは吹き飛ばされないように、踏ん張るしかなかった。
「姉上……どうして、私たちが戦わないといけないの……」
「さぁ、どうしたの。早く杖を構えなさい」
「くっ……風刃!」
よしねは杖を振って風の刃を放つ。
だが、ゆりねの一振りでかき消されてしまう。
「うそ……っ」
「残念ね。見ていなさい、風はこうやって操るのよ!」
ゆりねは、杖を上に向け、クルリと回した。
すると、風が勢いよく吹き荒れ、よしねの体を浮かせた。
「えっ、なにこれ?!」
手足をバタつかせるが、空をきるだけだった。
そして、そのままの勢いで木に激突する。
「かはっ」
鈍い音を立てて、そのまま地面に落ちた。
「くっ……」
「どうしたの、よしね。なぜ攻撃しないの」
「……できるわけない」
「なんですって?」
よしねはふらふらと立ち上がり、ゆりねを見つめた。
「姉上と戦うなんて、できないよ!」
「甘ったれるんじゃないわよ!」
「きゃぁっ!」
ゆりねが放った風の刃は、よしねのよりも大きかった。
それに威力も激しく、よしねは防ぐことしかできなかった。
「なにをしているの。早く攻撃しなさい!」
「くっ……風の舞!」
「遅いわ!」
よしねよりも速く、ゆりねは杖を振り風を巻きこみ、よしねへと逆流させる。
「しまっ……!」
よしねは防ぎきれず、宙を舞った。




