第十一話 分断
よしねの攻撃により、土煙が舞う。
「や……やったの?」
「くく……なかなかやるじゃねぇか。もっと戦おうぜ……」
罪刃の剣の声が響き、大剣が煙を切り裂いた。
よしねと隼人は驚きを隠せずにいた。
「あいつ、化け物なの?」
「違います。奴は戦う事でしか己を見出せない、悲しい男です」
震えるよしねを落ち着かせるため、隼人は肩に手を置く。
隼人の発言に、罪刃の剣は眉間にしわを寄せた。
「へっ、言ってくれるじゃねぇか……」
傷ついた体を気にすることなく、罪刃の剣はまた大剣を突きだす。
「狙った獲物は逃がさねぇ。覚悟しろ!」
持っていた大剣を振り上げた時、何本もの触手が罪刃の剣を絡めとる。
「「ぐっ! なんだこの触手は!」」
「よしね、無事?」
「月影! なんでここに?」
「嫌な予感がしたから、二人を追いかけてきたんだよ」
現れた月影に、よしねは驚く。
その間にも、罪刃の剣は触手を引きちぎろうとしていた。
「ぐあぁーっ!」
「よしね様、月影、話は後です。触手が引きちぎられる前に、一旦退きましょう!」
よしねと月影は頷き、三人は来た道を引き返す。
「おい、逃げるんじゃねぇ!」
残された罪刃の剣の声が響き渡った。
★★★
「でも、月影が来てくれて助かったわ。ありがとう」
「そういえば、嫌な予感がしたと言っていましたね」
「えっ、そうだけど……」
「なら、今あの家には誰もいないということですね」
「今はそんな話している場合じゃ……」
言い返そうとした月影だったが、隼人の黒い笑みに顔が引きつる。
「ご、ごめんなさい……」
「月影、気にしなくていいのよ。隼人も、変なところ気にしすぎよ」
「いいえ、よしね様。あの家には大切な文書もあるんです」
隼人は深いため息をつく。
「もし、あの家が襲撃されたら大変なことですよ」
隼人の説教に、よしねと月影はうんざりとした顔をする。
いや、今はそれどころじゃないだろ、と二人は心の中でツッコんだ。
すると、強い衝撃波が三人を襲った。
「うわぁっ!」
「くっ!」
全員吹き飛ばされ、地面に転がる。
「へっ、やっと追いついたぜ」
「なっ、もう追いついてきたの?!」
「俺から逃げられると思うなよ」
「しつこいのは嫌いよ。風刃!」
よしねはすぐ立ち上がり、杖を振って風の刃を放った。
しかし、罪刃の剣は大剣でそれをなぎ払う。
「そんなのきかねーよ! おっと」
間髪入れずに隼人が刀を抜き、素早く斬りかかった。
「へぇ、合わせ技ってか。面白いじゃねぇか」
「余裕でいられるのも、今のうちだ!」
隼人は攻撃を続け、一度離れる。
「あぁん? どうした、攻撃しないのか?」
罪刃の剣が前に出ようとすると、視界が花吹雪で見えなくなる。
「ちっ、目くらましのつもりか!」
それは月影の術であった。
大剣を振り回して花吹雪を散らすと、もうよしねたちはいなかった。
「ちくしょーっ! また逃げやがった」
歯ぎしりをする罪刃の剣のところへ、近づく者がいた。
「どうやら、逃げられたようね」
それはゆりねであり、いつもの微笑みはない。
「なんだ、疾風のお嬢さん。いたんなら、手伝ってくれてもよかったじゃねぇか」
「そんなことしたら、あなたは私まで攻撃するでしょ?」
「あー、バレバレか」
「それよりも、あの方から伝言よ」
「伝言?」
「あなたには、よしねたちの分断をお願いします」
「なんだと? じゃぁ嬢ちゃんの始末はどうするんだ」
「それは私がやるわ」
ゆりねは表情をくずさず、そう言い放つ。
罪刃の剣は、また嫌な笑みを浮かべる。
「あの方も悪趣味だね。姉に妹を殺させるなんて」
「私は一度死んだ。あの子とは関係ないわ」
ゆりねはそう言うと、いつもの微笑みをつくった。
「じゃぁ、よろしくね。よしねはきっと自分より、仲間を選ぶと思うから……」
「さすが姉妹。よくわかるんだな」
にやりと笑った罪刃の剣は、大剣を背負い駆けだした。
★★★
その頃、よしねたちは走り続けていた。
「俺の術も、そんなに長くもたないから急ごう!」
「待ちやがれーっ!」
「えーっ! もう追いついてきたんだけど?!」
よしねは驚きを隠せずにいた。
すると、目の前に吊り橋が現れた。
「ここを渡れば、お館様の屋敷はすぐそこですから」
「急いで渡りましょう!」
よしねたちが走って渡っていると、罪刃の剣が追いついた。
「そう楽に渡れると思うなよ?」
呟いた罪刃の剣は、思いっきり地面を蹴った。
そして高く跳び、よしねたちの頭上をとび越えた。
「うそっ、なんて跳躍なの……」
反対側に着地した罪刃の剣は、よしねたちに振り向くとにやりと笑う。
「何をする気だ?」
「まさか!」
隼人が察知したが、罪刃の剣の方が速かった。
「じゃぁな、嬢ちゃんたち」
そう言うと、大剣で吊り橋のひもを斬った。
支えがなくなった吊り橋は、無残に壊れていく。
「うわっ、落ちる!」
三人が落ちそうになった時、よしねは杖を振って風をよんだ。
「舞い上がれ、風の舞!」
「よしね様?!」
風が吹き荒れ、隼人と月影は反対側に着地した。
「よしね様、早く手を伸ばしてください!」
隼人は出来る限り手を伸ばしたが、よしねに届くことはなかった。
よしねは微笑み、下の川へと落ちていくのだった。
「よしね様ーっ!」




