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第五十七話 魔王サン 中編3

「……! ヤバい! 逃げ……」


 俺が言い終える前に、青白い焔が視界すべてを覆った。

 なにもかもが焼き尽くされてしまう。


「重力操作・臨界虚空下転!!!」


 どこまで吸い込めるかは分からないが、重力場を精製して身を守る。


 荒れ狂うようにして焔が大地を焼き焦がす。

 いつまで続くとも分からない無限の焔。

 

 ジリジリと足が後退していく。

 極限の重力場ですら飲み込めないはどの質量なのか……!


「真氷獄紋・絶界零度!!!」


 オリビアが叫ぶとともに俺たちの身の回りに分厚い氷の障壁が出現した。


 その障壁を貫通しようと焔が突き進んでくる。

 

 あと数ミリで破壊されるというとき、衝撃が収まった。


「ハアッ……ハアッ……! なんとか……防いだか……!」


 俺は周りを見渡す。

 

「なっ……!」


 目に見える範囲のすべてが、消失していた。

 大地のみがギリギリ形を成している程度である。


 南区が……完全になかったことになった……!

 

「ヨクゾ耐エタナ。南区スベテヲ破壊スル我ガ焔ヲ」


 悠々とクレーターと化した大地を踏み鳴らして歩くサン。

 

 魔力総量がまるで変わっていない……。サンにとってあのスキルは大技でもなんでもないということか。

 さらに破壊力をあげたら王国まで届きうる……!


「爆裂炸手XX(イグゼクス)!!!」


 バルトがスキルを発動する。

 両肩から機械仕掛けとなり、肩からは炎が噴出している。

 

「どおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 真っ直ぐサンに突進していく。その速度は光速すらも凌駕していた。


 サンはあゆみを止めずに正面からバルトの突撃を受け止める。

 赤い炎と青白い焔がぶつかり合う。

 お互いの炎が猛々しく燃え上がり、天にも昇るほどだ。


 互角に見えたが、徐々に青白い焔がバルトを押し返していく。


「…………んのぉ!!!」

「中々ノ火力ダガ……無駄ダ。我ノ焔ニハ及バヌ」


 ついにバルトは完全に焔に包囲された。


「ぐ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「真氷獄紋・雪原!」


 オリビアがサポートに入る。

 バルトの周りに氷柱が生え、一瞬焔が弱まる。

 その隙をついてバルトは脱出した。


「野郎……強すぎるぜ……」

「動かないでください、バルトさん。――億物介抱(おくぶつかいほう)


 ラキアがスキルを発動すると黒焦げになっていた体が瞬く間に治っていった。


「すごい回復力だな、ラキア」


 俺の言葉にラキアはにっこりとほほ笑んだ。


「私がいるかぎり、誰も死なせはしません」


 頼もしい仲間が揃ったな。

 だが、やはり一対一ではサンに致命傷どころかかすり傷すら負わせることすらできない。

 全員の力を合わせて一撃で仕留めなければ。


「カイトさん。今の私なら近接戦闘もできます。おそらく、この中の誰よりも」

「え?」

「自己強化を行うスキルがあるんです。それでまずは魔王と戦って隙を作ります。そこでカイトさんの重力操作で動きを止めて、オリビアさんの氷で焔凍らせて、バルトさんの突撃で最後決めるというのはどうでしょう」


 ラキアが近接戦闘を行えるということも驚いたが、なによりここまでの作戦を立てられるということに最も驚いた。

 たしかにその連携ならサンにわずかな隙を作れるかもしれないが……。


「俺やオリビア、バルトはいい。けど、真正面で一対一をするラキアが危なすぎる。サンの力は圧倒的だ。並べるくらいの力がないと、陽動すらできないぞ」

「問題ありません。一時的になら……時間は長くありませんが、必ず隙を作ります。ですので皆さんは魔力を一点に集中してください。その一撃にすべてを賭けるように……」


 ラキアはみんなに向けて言った。

 ラキアの覚悟を受け取ったのか、みんな静かにうなずく。


 そう……だよな。

 俺だけじゃない。俺たち勇者が、人間が揃えばできないことなんてないんだ。

 

「……分かった。先鋒、任せた」


 ラキアの肩に手を置いて、俺は見送った。

 

 スタスタと軽い足取りでサンに近づいていくラキア。

 サンはそんなラキアを見下ろすようにして鎮座していた。

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