第五十六話 魔王サン 中編2
「ラキア……それにオリビアもバルトも、無事だったのか!」
俺たちはがれきの中着地する。
全員傷一つない。
「私もよく分からないんですけど、なぜか戦闘前の状態に戻っていて……」
ラキアは首をかしげながら話す。
そこにオリビアが割って入った。
「どちらかというと、傷を負っていた現実がまるごとなくなったような感覚だな。妙な気分だ」
「まあ、いいじゃねぇか。なんとかなったんだからよ!」
バルトはお気楽に言った。
現実がなくなる……。まさか、マーキュリーの瞳が死に際に輝いたのは……。
あいつはあいつなりにもがいた末の行動だったということか。
「それよりも遅くなってすみませんでした。家畜として扱われていた孤児院の子たちを逃がしていて……」
「いいや、来てくれてありがたかったよ。サンは……魔王は、予想を遥かに超えて強い。全員でかからないと勝てない」
俺はそう言ってふと気づいた。
ラキアの魔力総量が見違えるほど増えている。オリビアもバルトも同様だ。
たしかに俺の傷を治すなんて、普通じゃできない。魔力総量が増えていれば納得はいくが、どうやって増えたのだろうか。
「お、俺が強くなったことに気づいたかカイト。なんか知らねえけど、復活したときに魔力総量が増えてたんだよな。おまけにスキルまで増えてたんだぜ」
バルトは腕組みをして笑いながら話す。
覚醒スキル……!
そうか……俺が人間として覚醒スキルを発動したことをきっかけに、彼らも使えるようになったのか。
「けど、新しいスキルの発動は控えたほうがいい。リスクが重すぎる」
「それなら大丈夫ですよ、カイトさん。私が生きていれば、どんな負傷でも一瞬で回復するスキルを皆さんに施し続けられます」
ラキアは誇らしげに胸を張っていた。
なんという永久機関。
俺は、こいつらに出会えて本当によかった。
「ツマラナイ会話ハ終ワッタカ」
機械音声のような声が正面から聞こえてきた。
サンのようなモノが近づいてくる。
歩くたびに地響きが起きた。
「マサカココマデヤルトハナ……。特別ニ貴様ラニハ我ノ本当ノ姿ヲ見セヨウ」
目に入った姿は先ほどまで見ていたサンの姿とはまるで違っていた。
人型ではなく、全長10mほどのフェニックスとなっていた。頭部も、羽も、体全体に青白い焔にまとわれてた。
「おいおい、こりゃあ、やべぇぞ……。プラネットシリーズなんかと比べ物にならねぇじゃねぇか」
バルトが後ずさりするのも分かる。
マーキュリーよりも、以前のサンよりも、さらに強くなっている。
これがサンの最終形態。
――――本気の姿か。
「コノ世界ノ半分ハナクナッテモ問題ナカロウ。……灰燼ニ帰セ」
青白く灯る羽を広げ始めるサン。
その美しさは、これから世界の半分を壊すようにはとても思えなかったが……。
「日輪」
その考えは、一瞬にして消え去ることとなった。




