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第五十一話 人型魔獣マーキュリー 中編2

 掌に黒い渦が出来上がる。

 飛び散った漆黒の球体が急速に掌に戻ろうとしていく。同時に空間すべてを引き込み始める。


「ほぉ……」


 マーキュリーは落ち着いた声をだす。だが、もはや彗星すべてが俺の掌の黒い渦に飲み込まれて残りはマーキュリーだけだ。


 徐々にだが、マーキュリーは俺の掌に向かって引きずられ始める。


「なんとも……強力なスキルだな。人間の頃の俺では太刀打ちできなかっただろう。だが……俺の覚醒スキルの前には塵にひとしい……!」


 マーキュリーの青白磁の瞳が輝き始める。


散りばめられた星屑(シテルネンハオフェン)


 スキル発動……!

 なにが起きるというんだ……?


 身構えていたがなにも起こらない。いや、()()()()()()()()()()()()()()俺の黒い渦が消え……!


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 違う。

 腕ごと持っていかれた……!

 いつの間に!


散りばめられた星屑(シテルネンハオフェン)、これは俺の死に近づくと自動で発動するスキル。俺の死に関わる未来を消し去る」

「未来……改変……!」

「昔のスキルはご存知の通り未来を見るだけだった。信用などされなかったがな。今になって慌てふためいているんじゃないか?」


 こんな……概念系のスキルが存在するなんて……。

 だけどここまでの力、ノーリスクなんてことはありえない。

 なにか……リスクがあるはずだ。


 右肩から血が滴り落ちるのを楽しそうに見つめるマーキュリー。


「お前が思っているようにこのスキルは自動発動なうえにリスクもある。だが……ほとんど戦闘不能のお前には関係のない話だ」


 高々と手を上げる。黒い空間が数え切れないほど現れる。

 まるで宇宙空間のように部屋全体が黒く塗りつぶされていった。


「先程のお前の、重力に重力を重ねたスキルは体に負荷がかかり過ぎる。2回発動しようものなら体が耐え切れずに爆散する。発動できたところで俺のスキルでお前のもう1本の腕も消し飛ぶだろう。詰んでいるんだよ、お前は」


 上げた手を振り下ろす。同時に避ける場所がないほどの彗星が射出された。


 たしかに、もうなにもできない。

 圧倒的物量に未来改変。リスクがあったとてそこを突くすべがもうない。

 

 部屋を埋め尽くす彗星。

 死が――――迫りくる。


 そうだ、オリビアやバルトは大丈夫だろうか。

 分断されているから今頃他のプラネットシリーズと戦っているだろうか。


 それに……ラキアは……。

 まだ告白もしていない。ようやく俺は俺を取り戻して、彼女に想いを伝えられると思ったのに。


 まだ、なにも言えていない。

 彼女の助けになると誓ったのに……!!!


 死ねない。

 死にたくない。

 死ぬわけにはいかない!


 【死】を現実として突きつけられたとき、脳内でなにかが弾け飛んだ。

 ヒューズが割れるように、パッと。


「絶対に……死ねないッ!」


 瞬間、世界が止まったような気がした。

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