第四十八話 人型魔獣ヴィーナス 後編
カチッ。
カチッ。
カチッ。
天井面で氷の礫をぶつけ合う。
「一体なんの冗談ですか? 鎮魂歌でも奏でるつもりですか?」
ヴィーナスは足に力を込める。
まだか……?
これ以上は私が保たない……!
念が通じたか、空気が振動をし始めた。
辺りを怪訝そうな顔で窺うヴィーナス。
間に……合った。
「ヴィーナス、鎮魂歌でも奏でるつもりかと言ったな。その通りだ。これは……お前のために奏でたのだからな!!!」
私が叫ぶと同時に雷鳴が轟いた。
屋内での雷の精製。大気中で氷をぶつけ合うことによって生じたプラスとマイナスの電荷によって地面から天井面で電気が流れる。
これは私の魔力ではなく自然の雷。もともと極限まで人体に電気を流しているヴィーナスにとっては一撃必殺の火力。
「氷獄紋・雷轟!!!」
「ッ!!!」
ヴィーナスは今更気づいたのか距離をとる。しかし関係ない。この部屋全体に暗雲が立ち込めているのだから。
パッと白く視界が遮られる。瞬間、ヴィーナスに雷が直撃した。
ヴヴヴと部屋が揺れ、遠くにいた私でも全身に痺れを感じる。
こんなものを喰らえばひとたまりもない。
「……よい鎮魂歌でした。ええ……本当に」
雷に打たれながらも話すヴィーナス。
不死身……いや……!
「しかし時間をかけ過ぎましたね。私の体見ての通り雷と化しました。いや、実に惜しい。ここまで戦闘が長引いたのは長兄との戦い以来でした」
再び雷の状態になり勝利を確信するヴィーナス。
たしかに、時間をかけ過ぎてしまった。
「打つ手なし……ですね。敬意を評してあなたは五体満足でサン様に献上しましょう」
本当に、時間をかけ過ぎた。
「……最期に1つ質問がある」
「なんでしょう?」
「お前の雷化の持続時間はどのくらいだ?」
ヴィーナスは周囲に電気を放出する。
苛立ちを表すかのように。
「それを聞いてどうするんですか?」
「いいだろう? どうせ死ぬのだ。漏らしやしないよ」
しばしの沈黙。
やがて重い口を開いた。
「……5分です。よかったですね、最期に望みが叶って」
「ああ、望みが叶ったよ。お前のすべてを凍らせることができてな」
「なに?」
私がなぜ、氷をばら撒くような真似をずっと続けてきたか。
下準備が必要だったのだ。
魔力総量が段違いでは通常の攻撃は無意味。だがこの方法なら戦闘不能にはできる。そして――――――
「5分間、懺悔しながら死ぬんだな」
私は指を鳴らした。
音もなく大気中の水分がすべて氷へと変化した。
「な……!」
有無を言わさず部屋全体が1つの氷像となった。
瞬く間に、死すらも感じることなく、一息であの世行き。
――氷獄紋奥義・絶界。
――Next is another perspective




