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第四十五話 人型魔獣ウラヌス 後編

 ウラヌスは手をかざし次元の裂け目を発生させた。

 俺とウラヌスの距離は約20m。満身創痍のウラヌスでは近づくことも難しいだろう。


 便利な能力だ。

 俺にもそんな能力があれば近づいてぶっ飛ばせるだろうに。


 いや、待て。

 ウラヌスは次元の裂け目を発生させた。俺にトドメを刺すために。なら……一撃いれられる……!


 俺はうつ伏せの状態から壁に片手をつきながら立ち上がる。

 ウラヌスはゆっくりと体を次元の裂け目へと入れていく。


 早く……早くきてくれ。

 立ってるだけで精一杯なんだ。

 現れた瞬間俺もろとも吹っ飛ばしてやる。


 機械仕掛けの右手の関節をコキコキと鳴らす。

 ウラヌスは体をすべて次元の裂け目に入れた。


 ――――――くる。

 残った魔力を右手に集中させる。俺の周りで次元の裂け目が開かれる音が聞こえる。

 

 俺は予想していた。最後に狙うならどこからか。

 絶対に頭上だ。ガードが1番難しい。

 見上げれば想定通り最後の力を振り絞ったであろうかかと落としが飛んできた。


「ここだ!」


 俺は機械仕掛けの右手でかかと落としをしてきた左足を掴む。

 

「喰らえ! 爆裂炸手!」

「お忘れですか? 一番最初の攻撃を」


 ゾッとする笑顔で俺を見下ろすウラヌス。

 最初の攻撃――次元の裂け目による転移。

 今更手を離せない。


宙を漂う一羽の蝶(ラウムシフ)


 ウラヌスは終わりの言葉といったようにつぶやいた。

 俺の腕が次元の裂け目に飲み込まれている。スタッと軽やかに着地するウラヌス。ニヤニヤと俺の死を待っていた。


 ――――――終わりだ。


 俺はしゃがみこみ、クラウチングスタートの体勢をとる。

 俺の見える範囲に飲み込まれた右腕は見えない。俺の背後に出現しているのだろう。

 

 俺は、逃げない。 

 振り向くこともなく、ただ爆発するときを待つ。


 激しい閃光が後光のように部屋を照らした。

 これから面白いショーでも見るようなウラヌスの表情。


 お望み通り見せてやるよ。

 血染めの羽織ショーをな。


 閃光の後、爆発が起こる。その場にとどまり切れないほどの爆風と熱。

 避けるつもりはない。

 ()()()()()()()()()()()


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 爆風に合わせてウラヌス目掛けて飛びだす。

 通常の《爆裂炸手》とは違い、自らの体を考えずに飛ぶ。体の中心から爆風を受けたときのスピードは通常の10倍以上。

 防御など間に合うはずもない。


「な……!」

 

 完全に不意を突かれたウラヌス。二の句を継ぐことができないまま俺の頭が腹に突き刺さる。

 そのまま壁まで激突し、破壊した。城壁だったのか外の世界がよく見える。ウラヌスは遺言を残すこともないまま絶命しながら宙を舞っていった。暗雲立ち込める中飛んでいく姿は、まさに1匹の蝶のようだった。


「や……ったぜ」


 立つことすらままならず、しりもちをついた。

 勝った。

 真っ直ぐ貫き通した。


 とっさの機転が利いてよかった。

 最初の攻撃のときは避けようとしたから駄目だった。はなから喰らう前提で臨めばこれ以上にない攻撃のタイミングだった。

 

「俺が……この国を……」


 勝利の余韻に浸っていたが、視界が狭まっていく。

 せっかく魔獣を単独討伐したっていうのに。

 そりゃないぜ。




 暗闇が俺を襲う。

 なにもない空間。

 いや、わずかな明かりが見える。あれは――


「バルト」

 

 聞きなじみのある声。

 見間違うはずもない。

 俺を産み、育ててくれた人。

 見ていてくれたんだ。

 まったく、唇の端が塩辛い。感動の再開が台無しだ。

 一言だけ言葉を交わせるなら交わしたい。

 俺の……存在証明を。


 母ちゃん……。俺、頑張れたかなぁ。


「よく、頑張ったよ」



 ああ、それなら、よかっ――――――――――

 


 

 ――Next is another perspective

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