第四十話 魔王城へ
「魔王はあの方角にいる」
俺は1人呟いた。
北区とは真逆の方向。南区の最奥。
遅れて王様やラキア、オリビアにバルトが出てきた。
皆一様に燃え上がる炎に驚いている。
「なんだありゃあ? こっちまで熱くなるぞ」
バルトが額に滲みだした汗を腕で拭いながら話す。
「サンの魔力だ。誘っているんだろうよ……こっちにこいってな」
俺は南区に向けて歩き出す。ラキアたちも分かっているのか、なにも言うことはなく俺の後ろについてきた。
「カイト」
王様から呼び止められる。俺は振り向いて、王様を安心させるように笑顔で言った。
「安心してください。私が次に戻ってきたときは、この王国は安寧を得ることでしょう」
もう思い残すことはない。
必ずサンを倒してこの国を平和にしてみせる。
◇
見渡す限り砂に岩と、見通しがきく南区。
時折突風が吹き荒れて砂埃に見舞われた。
そして元々熱い土地にもかかわらず、サンの魔力の影響で先に進めば進むほど温度が上昇していく。
「オリビア、なんとかならねぇのか」
バルトは手で顔をあおぎながらオリビアに話しかける。
オリビアは銀の甲冑を着こんで一番暑いだろうに、背筋をまっすぐにして歩いていた。
「私のスキルは冷房じゃないんだぞ」
「って言ってもよう……これじゃあ魔王の元に辿りつくころには干からびちまうぞ」
「やれやれ……」
オリビアは手から氷の結晶をいくつも作り出し、俺たちを取り囲むようにして飛び回った。
全身に冷気を感じる。
「これでいいか?」
「おお! これはいいぜ!」
バルトは活力を得たのか、ヨボヨボと老人のような歩き方から一変、俺の前をズンズンと早歩きを始めた。
魔王城がどこにあるかは分からないが、北区のことを考えると50地区くらいだと想定される。
長旅になりそうだ。何事もないとは思えないが……。
俺の予想が的中したのか、身の回りの空間が稲妻が走るような音をたてはじめた。
全員が足を止めて辺りを確認した。
「なんでしょう……?」
ラキアは俺に寄り添うようにして警戒している。
この感覚……先ほども感じた。
俺が思案していると、目の前に次元の裂け目が現れた。
中から魔獣が現れる気配ないが、高い女性の声が聞こえてきた。
「お待ちしておりました。今から魔王城にお連れいたします」
ウラヌスか。ご丁寧にショートカットさせてくれるとはな。
「これができるなら最初からしてくれればいいじゃないか」
俺の悪態にウラヌスはクスリと笑いながら返す。
「サン様からのご命令です。怖気づかずに魔王城にくる意思を見せたときは連れてこいとのことでした。魔王城で存分に雌雄を決しようと」
舐められたものだな。俺たち勇者が魔王を倒しに赴かないとでも思ったのか。
ウラヌスの発言に鼻息を荒くして怒りをみせたのはバルトだった。
「ふざけた野郎どもだぜ……てめぇらのケツに腕突っ込んで体内から爆発させてやるから覚悟しておけよ……!」
「……私は下品な人は好みではありません。早く魔王城にお越しください。全員殺して私たちの食料にさせていただきます」
「てんめぇ!」
バルトは1人次元の裂け目に突っ込んで行ってしまった。
「バルト!」
もう声は届くことはなく、ウラヌスの声も聞こえなくなった。
「カイト君……」
「分かってる。どんな罠が待ち受けていようと、ここで手をこまねくことはできない。行くぞ!」
ラキアとオリビアとともに、次元の裂け目に突入した。
なにもない無の空間。
自分がどこにいるかも定まらぬまま、やがて光が差し込んでくる。
視界が開けると、俺の周りには誰もいなかった。
「ラキア! オリビア! バルト!」
呼びかけるが反応はない。
分断されたのか……?
自らの場所を確認する。石畳で造られた広いホールのような場所か。壁につけられた無数の燈台で明かりが灯されている。
奥には、一言だけ言葉を交わした男が無表情のまま立っていた。
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