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第三十八話 撤退

 戦いを終えた俺は、ラキアのもとに気絶したオリビアとバルトを横たわらせる。


「ごめん、ラキア。2人を頼めるか? あともう少しだけ、頑張らなくちゃいけないんだ。話はそのあと必ずする」

「大丈夫ですよ、カイトさん。信じて待っていますから」


 今この場ですべてを説明してしまいたい気持ちに駆られる。だがまだ駄目だ。

 魔王が、玉座の間にいるのだから。

 後ろ髪を引かれる思いで玉座の間へと向かった。



 ◇


 

 扉を開けると、王様とサンは相対していた。

 見たところ王様に傷はない。まだ話の途中なのだろうか。


「随分と激しい音がしたから何事かと思ったが……そういうことか」


 低く、重い口調でサンは俺に向かって口を開いた。


「ああ、俺は、魔獣を殺す」

「カイト!」


 王様は困惑した表情をしていた。

 俺が味方なのか、敵なのか、計りかねているようだ。

 

「王様、あなたにもお話がありますが、ここはひとまずお逃げください。魔王は俺が食い止めます」

「まだ話し合いの途中だ。邪魔をするでない」

「てめぇらに話し合いの余地なんかないだろ」


 空気が、一変する。

 そこかしこの空間がカッと燃え始めた。

 水分が失われているのか、唇が裂けていく。血が顎を伝い床へと落ちていった。


「貴様には期待していたのだがな……残念だ」


 サンは魔力を放出し始めた。プラネットシリーズのようなネバネバとした魔力ではなく、重みを感じる圧倒的な質量の魔力。玉座の間がサンの魔力で埋め尽くされそうだ。


 俺も合わせて魔力を放出する。

 押し合いでは互角……か。


「ほう……ついに自分の魔力を得たか。確かにこれではジュピターやサターンでは勝ち目などなかったな。ますます殺すには惜しいが……貴様ら全員灰燼(かいじん)()すがいい」


 サンが掌をかざす。

 あのときはなすすべなかったが、今は違う。

 

「最大重力操作…………」


 俺がスキルを発動する瞬間、見慣れた次元の裂け目が出現した。

 サンの前にゾロゾロとマーキュリー、ヴィーナス、マーズが姿を現す。


「お邪魔してしまい申し訳ございません、サン様。しかしここでスキルを全開放されては食料がすべて焼け死んでしまいます。ここは矛を収めていただけないでしょうか」


 ヴィーナスが片膝をついてサンに話す。

 一見すると後ろを向いており無防備に見えるが、飛び出せない。マーキュリーとマーズが睨みを利かせているのもあるが、ヴィーナスの底知れない魔力が最大の理由だ。


「ふむ……ヴィーナス、貴様の言うとおりだな。人間どもが死滅しては我々の命にかかわるところだ。だが……ここまできて力の開放を抑えることは難しいな。……ウラヌス」


 サンの呼びかけとともに次元の裂け目が再度現れる。

 吸い込まれるようにしてサンは次元の裂け目に入っていく。


「交渉は決裂だな。いつ襲われるとも分からぬ日々を過ごすといい」


 消えざまにサンは言い残して消えていった。続けてマーキュリー、ヴィーナス、マーズが入っていく。

 次元の裂け目の中は無敵状態だ。次俺の前に姿を現したら……必ず仕留める。

 

 魔獣たちは姿を消し、王様と2人きりとなった。

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