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第三十七話 命の重み

「重力操作・強下転」


 ジュピターとサターンを囲むようにして重力場を精製する。

 城の床が軋む中、ジュピターとサターンは耐えていた。


「カイト君、それはもう見たんだよ。その程度じゃ俺は()れないよ。サターンもね」


 見やるとサターンはすでに突撃の構えをしていた。

 この重力下においてもスピードを落とさずに突進してくる。


「確かに、てめぇらの魔力総量は()()()()()()()()()()何倍も上だろう。だがな、俺はもう魔王の声には騙されない。俺は答えを出した。今、俺の魔力構築は成ったんだよ」


 迷いがあり他人任せにしていたこれまでとは違う。

 俺は俺の魔力の扱いを今手にした。

 俺は《重力操作・強下転》を解除する。

 本当の俺のスキル――!


「重力操作・虚空(こくう)下転」


 時空が歪むほどの重力。

 重低音が城内に響き渡る。

 突進していたサターンが縛られたように動きを止めた。


「ゴガッ……! な……なんだこれは……!」

 

 サターンの体に纏っていた岩石がみるみるうちに破壊されていく。

 パチリとピースがはまったように手になじむ。

 同じようなスキルでも魔力放出の仕方が変わるだけでこうも威力が変わるとは。


「なんだこの魔力量は……ヴィーナス並じゃないか……。カイト君、一体なにをしたんだ?」

「迷いを捨てただけだ。今までの俺にはリミッターがかかっていた。もう遮るものはなにもない」


 俺はジュピターに向けて掌をかざす。

 ジュピターは俺のスキルの威力を見て危険と判断したのか、床に手をつけてスキルを発動した。


綺麗な花には(フラ)絶望がつき纏う(ンツェ)


 城の床が裂けていき緑色のツタが数えきれないほど伸びあがってきた。1本1本が独立して動いていて気色悪い。


「俺のスキルは魔草を生み出す。なにが生まれるかは分からないが、相手が強ければ強いほど強力な魔草が生まれる。ほら、カイト君の魔力を吸って魔草が元気そうだ!」


 溶解液でも出しているのか、ツタから垂れていく液体は、城の床を一瞬にして溶かしつくしている。ジュルジュルと今にもとびかかってきそうな動きを見せていた。

 

 なるほど。言うだけのことはある。ランダム性が高いスキルではあるものの、格上相手とも同等以上の戦いができるスキルだ。

 けど――――――――格が違いすぎる。


「重力操作・虚空炎上転」


 かざした掌から、青白い炎を繰り出す。炎は龍をかたどり上下左右に飛び回りなにもかもを燃やし尽くす。生み出されたツタは一瞬にして灰となりその姿を消していった。


「な……クソッ! 綺麗な花には(フラ)絶望がつき纏う(ンツェ)!」


 今度は人でも食べそうな大きな口のような花弁を持った花が所狭しと生み出される。が、まるで関係ない。最初から存在などしていなかったかのように黒ずみになった。


「バカな……。サターン!」


 劣勢になったジュピターはサターンを呼ぶ。しかしサターンは圧倒的な重力で動きを制限されていて口を開くことすらままならないだろう。

 俺がその気になれば一瞬で床と同化する。


「無駄だ。ぺしゃんこにならないだけでもありがたいと思え」

「クッ……!」


 歯ぎしりの音がここまで聞こえてくる。

 そろそろお終いとしようか。


「反省の言葉はないか?」

「んだと……? あるわけねぇだろ!」


 俺の問いかけにジュピターは青筋を立てて反応する。

 

「そうか」


 俺はジュピターとサターンに向けて重力場を精製した。


「命の重さを知りながら死ね。――――――――――最大重力操作・虚空下転」


 極限の重力場によって次元は歪み、空間は断絶され、ジュピターとサターンがいる位置は、もはやこの世界とは別次元となった。

 伸び、縮み、捻じれ、狂い。

 彼らの体は異形な姿へと変形する。

 

「gはよいhfなよあふfはいhごうhscがおうhyふぃえhfはおだおほ!!!!!」


 なにを言っているかも聞き取れない。

 まあ、耳を傾ける必要すらないか。


 指を鳴らして重力場を解除する。

 ジュピターとサターンの姿はなく、幾重ものクレーターとなった床でかろうじてここで戦闘が行われたことだけが分かる状況だった。

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