表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/61

第三十六話 人

「ラキ……ア。心を……取り戻したのか」


 ラキアは小さな体で全身を使って城門を押し開けていた。

 肩を上下に動かして呼吸を荒くして入ってきた。


「カイトさん……」


 吸い込まれそうなほどきれいな瞳で俺を見つめている。

 黒く染まった俺を浄化するような明るさで眩しすぎる。直視すれば焼かれて死んでしまいそうだ。


「なになに、また兄弟のお友達?」


 俺の背中からひょっこりと顔出すジュピター。あくまでも俺は魔獣サイドだと見せつけるように。

 そんな俺をラキアは一瞬たりとも目をそらさずに見続けていた。


「私は……カイトさんが勇者パーティとしてうまくいかなかったときから、カイトさんの気持ちにはなんとなく気づいていました。だから孤児院が襲われたとき怒ってくれて嬉しかったし、今魔獣とともにいる姿にも違和感はありません。どちらも併せ持ってカイトさんですから。それが……人間というものですから」


 ラキアはゆっくりと紡いでいくように話した。

 

 そうか。

 誰しも嫌いなものの1つや2つあるだろう。きっとラキアにだってあるはずだ。それでも折り合いをつけて生活している。決して筋が通っていないわけじゃない。人は1人では生きていけない。だからこそ助け合って生きていくために、嫌いな物や出来事があったって、嫌いな人間がいたって協力し合い生きていくのだ。


 それが人間だ。

 

 この戦い、単なる食物連鎖、捕食者同士の戦いなんかじゃない。

 正義はないかもしれないが、悪は存在する。

 自らの利益だけを求めて生きていく生物など、悪の中の悪だ。


「残念だったな。兄弟は人間じゃない。魔獣なんだよ。人間のきれいごとは通用しないの。邪魔するなら殺すぜ」


 ジュピターは俺の肩から手を離しラキアのもとへと近づいていく。

 俺は後ろからジュピターの左腕を掴んだ。


「どうした? 兄弟」


 前に行こうとする動きを止められて若干の怒りがあるのか、眉間にしわを寄せて振り返った。


 ありがとう、ラキア。

 おまえのおかげで、俺は俺を取り戻せた。

 いつもいつも助けられっぱなしだったな。


 今ここに誓う。

 俺は王国を、人々を、ラキアを守る。

 そして――――――――――――――――


「俺は………………人間だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 力任せに左の拳でジュピターの顔面にストレートを放った。

 不意を突かれたのか、直撃して宙を舞いそのまま落下した。


「ジュピター!」


 サターンは今気づいたのか、ジュピターのもとへと駆け寄った。

 

「騒ぐなよサターン。大したダメージじゃねぇ。それよりも……一体どういうことだ? 兄弟」


 以前見たときよりもさらに膨大な魔力を放出しながら睨みつけるジュピター。プラネットシリーズ特有のネバネバとしたアメーバ状の魔力。眼をそむけたくなるほど気持ちが悪い。

 

 俺はラキアの前に立ち、ジュピターとサターンを前にして言った。


「俺は人間で勇者だ。魔獣は殲滅(せんめつ)する」

「なに言ってんの兄弟。お前は魔獣なんだよ。人間の肉を食らわなければ生きていけない」

「確かに俺の中には魔獣の血が混ざっているだろう。けど意識の問題だ。もともと俺は人間として生活していたんだからな。破壊や殺戮ですべてを解決しようなんて間違っている」


 俺の発言に面食らったのか、しばし動きを止めたジュピター。

 やがて髪の毛を整えながらため息をついた。


「はー、お前程度の魔力量で、しかも2人相手に勝てると思っているのかよ」

「俺の魔力総量を見てもいない癖してよくもそこまで大口を叩けるものだな。まあいいさ。てめぇら全員孤児院の子供の仇だ。まとめて存在ごと消滅させてやる」


 俺は魔力を練り上げて放出を始める。

 サターンとジュピターはともに臨戦態勢をとっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ