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第三十五話 邂逅

 城門を開けると、そこには見慣れた人間が玉座の間に辿りつかせないよう堂々と立っていた。


「オリビア……バルト……」


 俺は彼らの目を真っ直ぐ見ずに声をかけた。


「カイト……てめぇなにやってんだよ! 勇者として国を、人々を救えって言ったのはてめぇだろうが!」

「なーになにお知り合い?」


 わめき散らかすバルトにジュピターが反応する。俺と肩を組んで仲良しアピールをしていた。


「カイトッ……!」

「やめろバルト。理由はどうであれ、カイト君……いや、カイトはすでに王国の敵となったのだ。もうやることは一つしかないだろう」


 オリビアは極めて冷静に話し、腰からレイピアを抜いた。

 ピシッピシッと空気が凍っていく。


「サン様。どうやら戦闘は免れない様子です」


 ジュピターはオリビアとバルトの動きに注意を払いつつサンに告げる。

 サンは目を閉じ顎に手をあててしばし考えていたが、やがて目を見開くとゆっくりと口を開いた。


「――――殺せ」


 短く、感情のこもらない声でサンは言った。

 途端、地響きが起こり始める。

 俺の隣のサターンが満面の笑みで筋肉を震わせていた。


「サン様……ありがてぇぜ……! 俺はこのときを待っていたんだよ……!」


 今まで殺戮衝動を押し殺していたのか、唇から血が垂れていた。よほど我慢していたのだろう。

 

「我は王との交渉に向かう。邪魔をさせるなよ」

「承知いたしました。サン様」


 ジュピターが返事をすると同時にサンは悠々と歩いて正面の扉を目指す。

 そこに右腕を爆発させたバルトが飛んできた。


「ふざけてんじゃねーぞ!」


 目にもとまらぬ速さで突っ込むバルト。この2日間ほどで腕をあげたのか、さらに速度が上昇している。

 だが、バルトとサンの間に入るようにサターンが駆けた。


俯仰地に愧じず(コンティネント)


 スキルを発動すると、サターンの体はみるみるうちに岩石に覆われていった。

 バルトは構わず突撃し強烈な破壊音と煙が生じる。煙が晴れるとサンの姿はなくなっており、左肩をおさえたバルトがうめき声をあげながらサターンの足元で転がっていた。


「なんだ今のは? ハエが止まったのかと思ったぜ」


 ジュピターはバルトの頭を足で踏みつける。ゴリゴリと鈍い音がする。オリビアに目を向けるとレイピアに巨大な氷をまとわせていた。


「バルトから離れろ!」


 10mはあるであろう氷の剣がサターンに振り下ろされる。サターンは避けるそぶりすら見せずただ氷の剣を見上げていた。


 一刀両断――かと思いきや、氷の剣はジュピターの脳天に直撃するとひびが入りジグソーパズルのようにバラバラに砕け散っていった。


「な……に……!」


 オリビアが驚いているところにサターンは右肩を前にしてタックルする。ただの突撃でもサターンほどの魔力量と岩石を身にまとうスキルがあればその威力は計り知れない。


 わずかにレイピアでの防御は間に合ったものの、オリビアはなすすべなく壁まで飛んでいきめり込んだ。綺麗な銀の鎧と髪が血で染まっていく。


「なんだ、俺らの出番はなさそうだな兄弟」


 ジュピターは戦闘中のサターンを見ながら俺に問いかけた。

 

 俺は……何を考えながらこの戦いを見ている?

 かつての仲間がボロボロになる姿を見て、何を思っている?


 俺は人間が……嫌いだ。けどやっぱり殺戮(さつりく)はもっと嫌いだ。

 たしかに人間は卑劣で愚かで浅ましい生き物だ。それでも成長していく生き物だ。短絡的に誰かを殺害して生きていくことなんてしない。


 この戦いに正義なんてきっと存在しないのだろう。お互いが生きるために戦っているのだから。

 ならば俺がとるべき行動は――――――――


 俺は拳を胸にあてる。横にいたジュピターが怪訝(けげん)そうな顔つきをしていたが関係ない。

 足を一歩踏み出した。そのとき――


 城門が開かれた。

 ギィィィと頼りなさげな音を立てて。


 俺の視界に入ったのは、小さな女神だった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] やり返すというよりは必ず答えを導き出すエンディングを目指す主人公というのはいいとして…… でもその過程での要所で選んだ選択への責任感がないのはいったいどういう事ですか? 王座の間にお…
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