第三十二話 プラネットシリーズ
――ザワザワと周りがうるさい。何人かが俺を囲んで話しているようだ。
「…………裏切り者連れてくる必要なんかなかったと思うんだけどなー」
最近聞いたことがある声。燃える孤児院で子供を攫っていった――
「マーズッ!!!」
ガバリと体を起こす。
俺の周りにはマーズにジュピター、それに見たことない人型魔獣と思われる5人がいた。
玉座の間のような風景。キークロス城よりは暗い内装をしている。正面の椅子には先ほど見たサンが座っていた。
「起きたか、我が息子よ」
声を発するだけで威光を感じさせる。全身がビリビリと振動するようだ。
「今日は厄日だな。2度も捕らえられて玉座の間に連れてこられるなんて」
「そう言うな。あの玉座の間での立ち位置は反逆者だっただろうが、ここでは仲間として祝福しているのだ」
サンは立ち上がると1人ずつ指を差し始めた。
「ジュピターとマーズはもう出会っているから知っているだろう。下から順々に紹介していこう。1人ずつ名前を教えてやれ」
1人目、手を挙げたのは色白で前髪パッツンの真っ白なロングヘアー、真っ白のロングマントを着ている女性だった。
「7番目の子、ウラノスです。よろしくお願いします」
透明感のある目で見つめられて会釈される。
「6番目の子、サターンだ! 体躯の割に骨のありそうな奴じゃねぇか」
筋骨隆々、褐色の肌で上裸の男で腰に土色のスカーフを巻いている。
デカい声をあげて自己紹介をしてきた。
「ジュピターとマーズを飛ばして……次は私ですね。2番目の子、ヴィーナスです。心強い仲間が増えましたね」
そう言って仰々しく胸に手を当ててお辞儀をしたヴィーナス。全身黄色のロングマントに身を包んでいた。金髪をオールバックにしていて清潔感のある男だ。
「そしてこの方が……1番目の子、マーキュリーです」
ヴィーナスが手で示した先にいる男がマーキュリーか。
サラサラの暗い青髪、黒いロングマントで口元まで隠してある。
眠っているような半目だが、なぜ一言も発さないのか。
「この方は重要なとき以外は口を開きません。ご承知おきください」
俺との会話は重要なときに含まれていないわけか。
「って、3番目は誰だよ」
全員が挨拶を終えたところで不自然な点に気づく。
ネプチューンが8番目と言っていたことから、あと1人足りない。
俺の発言が気に障ったのか、マーズは骸骨のような顔を俺に近づけた。
「あー、察しが悪いなー。お前が3番目だよ、アース」
「な――――――に」
急に膝に力が入らなくなり転んでしまった。
俺が……魔獣?
人間ではない……だと。
自分の手の甲を見る。間違いなく勇者の刻印が刻まれている。
「それは純粋に魔力が高い人間に刻まれる刻印です。魔力が一定以上の人間、魔獣には必ず刻まれています」
ウラヌスはそう言って手の甲を見せた。
色白の手にはしっかりと勇者の刻印が刻まれていた。
「けど、俺の両親はどっちも人間だ。そんなこと信じられるかよ!」
俺は吠える。
俺の人生は……なんだったんだというのだ。
サンは俺の怒号など聞いていないかのように語り始めた。
「大昔、まだ人間、魔獣というくくりがないころ、魔力が高い種族が現れた。それが我の先祖にあたるわけだが、貴様はその血を脈々と受け継いでいき、今魔獣としてして形となったのが貴様だ。人間と比べて魔獣はスキル開花が2年遅い。貴様が2年間虐げられていたのはそのせいだろう。つまるところ血統的には我の先祖になってもおかしくないが、魔獣として力を得たのはマーキュリーから数えて3番目だから貴様は我が子供としている」
途中で人間を経由しているなんておかしな話だがな、とサンは仏頂面で続けた。
そんな……バカな……。
俺は勇者じゃなかった。
人類の敵……魔獣。しかも魔王の3番目の子供、アース。
「……今になって人間を襲うようになったのは……?」
俺は自分の声とは思えないか細い声で尋ねる。
「身の回りの人間を食い切っちまったから、お前らの王国まで出向くことになったんだよ。俺的にはぶっ殺したいんだが、俺たちが生き残るためにも永久的にお前らには繁殖し続けてもらわなければならねぇ。そのためにさらうことにしたんだよ」
サターンはぶっきらぼうに返した。
そうだ。
ここ最近俺は人を殺す対象としてしか見ていなかった。その先に待つのは――――――
孤児院の映像を思い出してゲロをまき散らす。
「まだ慣れぬのも仕方があるまい。だが貴様はもうここで生きていくしかないのだ。王国に戻れば死ぬか、全員殺しつくすだけだ。それは我が許さんがな」
俺は額を床につける。
俺は……魔獣。
頭の中の声も、サンの声だった。
そして俺はその声に賛同した。
人間は浅ましい生き物だ。
そんな存在、捕食対象として見てなにが悪い。
そう、だ。俺は、嫌いだったんだ。追放し、迫害し、差別する愚かな人間という存在が。
俺の意思なのか、血のせいなのか分からない。
けれどもこれではっきりした。
――――――――――人類は、敵だ。




