第二十五話 人型魔獣ネプチューン 前編
自己紹介を終えて流星のごとく突っ込んでくるネプチューン。
魔力の渦に飲み込まれて俺以外の仲間が全員吹き飛ばされていった。
「重力操作・上転」
俺は仲間を守るように重力場を発生させて暴風とネプチューンの蹴りを防ぐ。
重力場の効果に気づいたのか、ネプチューンは方向転換し地面に着地する。地面は大破して大穴と化していた。
「お前がカイト君、か。ジュピターから聞いてたとおりあたしたち同じくらいの魔力とスキルを持っているな」
ネプチューンは首をコキコキと鳴らす。長い青藍のポニーテールが揺れている。
俺は掌をネプチューンにかざす。
ジュピターと同じ魔王の子供。同等の力を持っていると思っていいだろう。
ラキアやオリビア、バルトは吹き飛ばされて今は位置が遠い。
――ちょうどいい。
俺も力を出せる。
「重力操作・強下転!」
超広範囲の重力場。ジュピターに放ったときとはわけが違う。
一度領域に入ってしまえばもう脱出することはできない。
「グッ……! ジュピターからは生かせと言われているが……こんな危険因子は父さんのためにも殺さなきゃだめだろ!」
重力下に置かれながら、ネプチューンは両手の掌を合わせる。
途端、体が透明になっていく。
「水面に映る苦悶の表情」
ネプチューンが声を発すると同時にトプンと地面に溶け込んでいった。
一瞬にして静かな空間が訪れる――
「ガッ!」
背後から首を掴まれている……?
ひんやりとした感触が如実に死を感じさせる。
「重力操作・下転」
極小の範囲に重力場を精製する。振り向くことができないため見えないが、首を絞めていることからすぐそばにいることは明らかだ。
「ハッハー! 都合のいいスキルだぜ!」
またも地面に沈む音が聞こえる。
せき込みながら振り向くが、もう姿は見えない。
ネプチューンのスキルは自身の体を水にするスキルか……。地面に入られては《重力操作・下転》はおそらく効果がない。
狙うは《重力操作・上転》によるネプチューンの無効化、そして《重力操作・炎上転》で仕留める。
次姿を見せたときがネプチューンの終わりだ。
地面の下で蠢くネプチューンの音だけが聞こえる。
目を閉じる。音に惑わされるな。魔力の動きを追うんだ。当然ネプチューンは魔力を抑えているだろうが、俺が本気で集中すれば探知は余裕だ。
体から放出される魔力を地面に浸透させていく。俺の右に3m、2m。
来る――――――!
「重力操作・上転」
右に向き重力場を精製する。が――
出てきたのはただの水……?
「死ねぇ! 氷面に映る嘆きの表情!」
左から全身氷と化したネプチューンが姿を現した。
防御が間に合わない――
――――殺せ
また脳内に声が響く。
やめろ……やめろ……! なんなんだこの声は!
氷柱のように尖った拳が迫る。
もう逃げられ――――――
「だあぁぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁぁ! 爆裂炸手!」
ロケットのように飛んできたバルトがネプチューンを吹っ飛ばした。
「バルト……!」
「勝手におっぱじめてんじゃねーよ。俺たちを待て!」
バルトの後ろにはオリビアとラキアがいた。
「私の力では不足しているうえにお株を奪うスキルの持ち主が相手だが……サポートは全力でやらせてもらう」
「私も……必ず皆さんを守ります!」
そうだ。俺には仲間がいる。脳内の声なんかに惑わされるなんてありえない。
両手で頬を叩く。気合は十分だ。
「よし、必ずネプチューンを倒すぞ!」
吹き飛ばされたネプチューンはユラリと立ち上がり近づいてくる。
全員の意思をまとめて、再び激突する――!




