第二十一話 バルトの実力
オリビアに連れて行かれた場所は、人間が300人は収容できそうな巨大な部屋だった。床や天井、壁は石で造られており、とりあえずは頑丈そうだ。
「さて、それではまあ、気が済むまでやってくれ」
オリビアは気乗りしていない様子で合図を出す。
「カイトさん……私もカイトさんと同じ気持ちです。みんなを守るべき勇者が王国に牙を剥くなんて考えられません。もしついてきてもらうにしても、このままは嫌です」
ラキアは俺の腕を掴んで懇願していた。
「分かってる。あの手の輩は1度ぶっ飛ばさなきゃ分かんないからな」
俺はラキアの頭をさすった。本当は勇者同士でも争ってほしくないだろうが、今は我慢してほしい。
「じゃあ始めよう……」
俺がバルトの方を向いて話始めた瞬間、不意をつくように眼前に迫っていた。
「何女と喋ってんだよ! バカが!」
右ストレートが飛んでくる。俺は左に避けて掌をかざす。
「バカはお前だ。重力操作・流転」
重力場を精製するが、一度技を見せたからか瞬時にバックステップをして避ける。
「重力操作・炎上転」
すかさず追撃の火球を放つ。バルトは飛び上がり、右腕の囚人服の袖をまくった。
「奇妙な技を持っているが……オレにはおよばねぇな!」
袖をまくり露わになった腕がみるみる内に機械仕掛けの腕へと変貌していく。
飛び上がった勢いで俺に向かってきた。
「喰らえ! 爆裂炸手!」
バルトの言葉と共に、機械仕掛けの腕が突如爆発する――!
俺は《重力操作・上転》で上空へと逃げた。
爆発する腕か。確かに範囲も広いし威力もある。反逆の意思を感じるスキルだ。
しかし甘い。そのレベルでは俺には届かない――
「空飛んで得意になってんじゃねーぞ!」
バルトは腕を爆発させて人間の跳躍力を超えたジャンプをみせた。そのままの勢いで腕を掴まれる。
まずい、この至近距離の爆発は――
「ぶっ飛べ! 爆裂炸手!」
カッと眩い光を発して目の前で腕が爆発する。轟音と共に身を焦がす程の熱量を感じ、吹き飛ばされる。
お互いが煙に包まれながら壁へと衝突する。
久々に傷を負った。決してバトルマニアというわけではないが、ジュピター戦から本気で戦いたいとは思っていた。
――――――殺す気でいけ。
脳内に声が響く。
魔力の放出量を上げる。部屋全体が俺の黒い魔力で満たされていく。
異様な雰囲気を察したのか、壁に打ち付けられながらも笑みをこぼすバルト。
自らもダメージを負うその欠陥スキル、粉々にしてやる。
「こっからが本番ってわけか。いいぜ! ならオレも見せてや……」
「重力操作・連上転」
バルトの言葉などに耳を貸さない。バルトのいる位置までまで一直線に《重力操作・上転》のフィールドを形成して、フワリと一足飛びでバルトに近付く。
拳を握り込みフルスイングで上から叩き付ける。同時に《重力操作・下転》を繰り出す。
「重力操作・下転骨!」
バルトは咄嗟に機械仕掛けの腕でガードの体勢をとるが関係ない。
腕の骨が砕け散る音と共にバルトを地面へと押し潰す。
石で造られた床にはクレーターができあがっており、バルトの生死が危ぶまれた。




